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雨降りの七夕

作者: ステラ

今朝から雨降り。


今日は七月七日、七夕。

七夕に再会を果たした二人は。



サァー…

まただ。またもや雨に見舞われるとは。さすが雨女わたし。織姫びしょ濡れじゃないか。


彦星は濁流の天の川を前にして、呆然としているのではないか。


私とあなたの間にも、雨降りの天の川。

容易に越えられな……ピピピピ


「はっ⁈もうこんな時間!」

遅刻遅刻!起き抜け一人ドタバタと準備を始める。



☆ ☆


七夕の再開から一年。

特に大きな変化もなく。私は相変わらず地方で暮らしてる。


彼は変わらず忙しくしている。

テレビでたまに顔色を窺っては「今日も元気だね!よし!…といっても収録か」と思いつつも、話をする彼が見えるのが嬉しくて、じぃーっと観ては思わずテレビに手を伸ばす日々。

「…冷たいね。当たり前か」


「観たよ。元気そうだね?いつの収録かな?」とこちらの都合でメールを送る。

毎日のメールは…私の方が欠かすこと多し。だって眠たいんだもん…。



☆ ☆ ☆


お疲れさまでしたーっ。


「今日は生放送だったからかな?やけに嬉しそうに話してたね」と、後ろからポンッと相方に後頭部を叩かれる。


「…ん。だって動いてる生の俺を観てもらえるからさ」


元気だよ。そっちはどうだい?


「あー。今週末から雨かぁ…」と、テレビ局の廊下の大きな窓から曇り空を見て相方がボヤいていた。


一年か…あの時確かにかけた橋は、まだかかったままだろうか。




☆ ☆ ☆ ☆


今週末から雨予報。しかも台風も近づいているとな…。


あー。雨降りの飛行機は揺れるから嫌なのよね。

せっかくの連休なのに、雨女を発揮しちゃうところが私らしいわ。


〜♪

あら?珍しい時間にメール。

『今日さ。生放送だから』


短っ!

これだけなのー?

まぁ…知ってるけどもさ。

その時間に合わせて、ちゃぁんと休憩とってますよ。


『うん。観てるね。元気でがんばって』ピッ。と返信を打ち終えて見上げると、まだまだ晴れ空が窓から覗いている。


雲は流れていく。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆


メールは夜に鳴ることが多い。朝早い仕事の私と、不定期な彼は時間帯のすれ違いがあるから。タイムリーに会話(メールの往来を含め)を交わすことは週末くらい。しかも彼の仕事が終わってからがほとんど。

寂しくないと言えば嘘になるけど、それくらいがお互い丁度良いらしい。と暗黙の了解。


『さて!今週のお客様は、新進気鋭の二人組にお越しいただきましたーっ!どうぞ!』


MCの芸人さんが紹介すると、中肉中背の背の高い男性と、繊細な身体つきのやや背の低めの男性二人組がひょこっと現れた。


「お。顔色いいじゃん。少し痩せたかな?隣の相方が肥えたのかっ!あはは」

一人休憩室…という名の愛車のカーナビでテレビを観ながら、ブツブツと独り言を言う。生放送の時は必ず一人で観る。それが私の決まり事。


それはかけた橋からメッセージが伝わるから。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


『今回の作風は今までと違ってますよね?何か心境の変化とかありましたか!』


『そうですねぇ。特にはないですが、相方がヤル気を出したからではないですかね?』


『…ん?え?あ、俺?ヤル気は出したつもりはないですが、生存確認のためにもテレビに出ないといけないなぁと思いまして。そしたら必然的にいろいろ…』と彼はにっこり笑って言っている。


生存確認…?


『ほほぉ〜。生存確認しなくちゃいけないくらい誰かにアピールしたい?』


『そうです。俺はココにいるぞーって。あはは。ずっと流されてやってきましたから、ここら辺で自分で流れをつくってやろうかと思って!』


『ずっと流されてきたんかいっ!そりゃ楽してきたなぁ!』と相方やMCに突っ込まれつつ。


流れをつくる?

いつもは流されて良しとしてきたんじゃないの?



☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「あー。そっか飛行機早い便にしてたんだっ!だから朝早く着くから、お家で待っててよ」


『なんでそんなに早い便にしたの?ゆっくりしてくればいいのにね』


…そっちのが安いんだもん。


「早く会えるし。たくさん時間作れるし。ねっ?お家でゆっくりしてて!」


『ん。わかった。気をつけて来てね』




「…ん?!えぇぇっ…」


「お疲れさま。いらっしゃい。飛行機揺れたかなぁ?と思って、早めに慰めにきたよ♪」


こらこらこらこら!

こんな人が大勢いる所(空港)に来ちゃダメなんじゃないの?


と、声に出さずにアピールする私と通じ合えたのか…彼が。

「大丈夫。俺、気配消すの上手いの」と、にっこり笑って言った。


外は大雨だからさー。うちに来るまでに、流されちゃうんじゃないかと思って。だそうな…。やれやれ。


電車乗り継いで、あとはタクシーなら大丈夫なんじゃないの?とは言わず…。

だって、久々の再会の時間が早まって嬉しかったから。


「ね?俺の生存確認してくれてた?」と手を繋いで歩きながら、私を覗き込み確認してきた。


「なんで流れをつくろうと思ったの?流されるままで良しとしてきたんじゃなかったの?」


「…ん?あぁ。あれね。橋を渡るのもいいけど、流れを変えたら楽に速く君の元へ辿り着けるなぁと思って」


ん?結局は楽したいんじゃないの…。

まったく!元は変わってないわけね!

ふふふ。


「…だからさ。君がこっちへ流れてきてもいいんだよ?」


え?


「やっぱり体温感じる距離にいたいんだ。今の織姫は少しくらい行動派でもいいと思うよ?」


…うん。


「雨が強くなってきたね。俺が掴まえててあげるから流されないよー。よかった迎えにきてーー」と窓の外を眺めながら笑うあなたの横顔を見てた…。




雨が降って流れが速くなれば、それだけあなたに辿り着く時間が速くなるのね。


雨に濡れて冷えても、あなたの手のぬくもりを感じられる。


だったら雨降りでも大丈夫…。





雨降りの七夕。


完。

連載にまで至らず。

でもきっといつか…

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