魔法王家の秘密、私、知っちゃいました!?
私、小林!!魔法世界にやって来た私たちはヤムおじさんという男に出会いました。そこで語られたのは意外な事実で…
パン工場の地下室で、小林は鈴太郎他南米人三人からファンシーランドの危機の真実について話を聞いていた。
ファンシーランドは中南米の外れの海に浮かぶ淡路島3つ程の大きさの島である。不思議の国なのでいつから存在しているのかわからない。いつの頃からかこの国では人や妖精、動物たちが仲良く暮らしていたのだ。そしてファンシーランドは不思議な国なので地図上には存在していない。つまり国際的には存在しない国ボヤボヤしたなのだ。夢があって実にメルヘンである。
「しかし、その事情がファンシーランドに二つのビジネスを両立させた。
南米と北米の中間に位置するこの国は、密輸の中間地点として最適だったのだよ。」
南米人から語られた事はつまりこうだった。麻薬を米国に運びたい南米マフィアと武器をマフィアに運びたい米国兵器産業。
この二つの点は、ファンシーランドで結びついたのだった。南米の麻薬と米国の兵器を一旦ファンシーランドに持ち込み、双方の国に再び輸出する中間貿易である。
この方法は重要な密輸ルートの一つとして各国に莫大な利益をもたらした。そして、例え警察が取り締まろうとしても、出どころをつかめないので見つかることもなかった。
「しかし、全ての密輸利権を掌握していたのはファンシーランド王家だった。麻薬取引により国内に薬物が蔓延し、軍用地を得る為に多くの市民が土地を追われる横で王家のみが密輸の利益を享受していたのだ。」
こうして何十年も前から国民と王家の軋轢は広がって行った。それが今回、中東で起きた一連の革命に影響を受け、都市部の大学生の呼びかけを切欠にとうとうファンシーランドでも革命が起きたということだ。
「革命が勃発した時、市民はまず城に攻め込んだ。その勢いは凄まじく、女王様はあっという間に捕虜になってしまったのだよ。」
「じゃあ、ダークネス軍の目的は王家の利権を奪い取って我が物にする事?」
「鋭いねお嬢さん。ダークネス軍の上層部は一部の軍人富裕層なのだよ。そいつらが利権争いしてるのが現実だ。富裕層以外の市民は基本的に踊らされてるだけという訳だ。」
「じゃあ市街地に行ってみんなを説得すれば何とかなるんじゃないの?」
「無理だな。」
口を挟んだのは地下室の隅で酒を飲んでいたヤムおじさんだった。
「市街地は既に壊滅した。このワシの手によってな。」
「What」
「ワシはかつて生きたパンを作ろうとかいう妄想に取り憑かれて追放された男。市民の信用を得られる身分ではなかった。
つまり、革命が起きた時、真っ先に攻められるのはこのワシじゃ。ならばいっその事、攻められる前に攻めてしまえば…。
そしてワシは自前のガス兵器で街の皆を殺した。すくなくともあの街は空気が汚染されて人の住めない環境になったのだ。」
小林はヤムおじさんがなぜこうも罪の意識に苛まれている様な顔(-。-;をしていたのかを理解した。彼は十字架を背負っていたのだ。それも自らが産みだした狂気☆と破壊★に満ちた†††十字架†††である。
「最近はアンパンが語りかけてくる幻覚さえ見える…。ワシが産む筈だった生きたパンがワシを責める。うああ~~許してくださいマリア様ー!!」
ヤムおじさんは暴れながら部屋から出て行った。
「彼の壊れて行く様が私は好きなの☆」
愛宕さんは笑顔で言った。
こうしてパン工場の爛れた人間模様を目の当たりにした小林は一刻も早く反乱軍を鎮圧すべく、パン工場から一番近い南部地域の主要都市エルフタウンへと向かった。
黒人と南米人が会話をしていた。日本語で。
「エルフタウンは南部地域唯一の商業都市だ。首都から遠く反乱の勢いは比較的穏やかな地域だポン。」
「なら何故北を目指さないんだ?」
「エルフタウンの近くには軍の実験施設があるんだポン。その実験施設には最新の兵器が大量にあるポン。」
「補給をする訳か。」
パン工場から片道一昼夜、乱波の類であれば反日で市街地の正門にたどり着く距離である。道中は危険な岩場や落石の多い山岳地帯である。一同はヤムおじさんの用意した人数分の駕籠に乗っていた。
「私は駕籠に乗るの始めてだょ」
しかし、彼女の見通しは甘かった。この11の駕籠の内、約半数は地獄行きである事をまだ誰も知らない。