俺が異世界転生?有り得んわ!
異世界転生…
数ある携帯小説の中では王道中の王道だと俺、向坂慎吾は思っていた。
その多くの小説を読んで、主人公達の生き様を見てきた。
その中でも印象に残ったのは、味方に裏切られ復讐を誓うという物語だ。
自分は、当事者では無いが少なからずその裏切り者に怒りを覚えた。
まあ、作者さんに文句は無い。
とても面白い内容だったしな。
だから、自分がその当事者になろうとは思ってもいなかった。
--数ヶ月前
…何だろう、周りが騒がしい気がする。
何時もと違うベッドの感触。…そう、まるで岩のように硬い。
……岩?
そこで俺はガバっと起きる。
何時もと違う部屋…そう、アニメとかでよく見る勇者召喚の儀式場みたいな場所だった。
近くの巫女と思わしき女性が話しかけてきた。
「お目覚めになりましたか?私はハーレン国王女のミーシャと申します」
…王女、か。この流れなら国の為に~とか言いそうだ。
「単刀直入で申し訳ありませんが、私たちの国を魔王から救って欲しいのです」
やはりか。…定番中の定番、普通の厨二病なら喜ぶ展開だな。
「…分かりました。どういう状況かは分かりませんが、俺で良ければ手伝います」
「ありがとうございます!…ところで貴方様のお名前をお聞きしても宜しいですか?」
「ああ、申し遅れました。俺の名は向坂慎吾と言います」
俺が自己紹介を終えると、王女や護衛兵に連れられて国王の所まで案内された。
「おお、貴殿が勇者殿か。我はハーレン国の王、ミゲルと申す。この度は魔王討伐に参加して頂き、感謝する」
「いえ、お役に立てるよう頑張ります」
この後、魔王についてや地形などを教えてもらいその日は寝る事にした。
--翌日
「…ん、」
朝か…
この世界に来てまだ2日目だが、意外と良く寝れたな。
枕が変わると眠れないと昔の人は言っていたがそうでは無いらしい。
さて…、まだ早いがそろそろ運動するか。
恥ずかしい話、俺は厨二病だった事がある。
映画でみた「る○剣」に憧れ、あの映画で一度だけ出た技を練習した。
高校生にもなって恥ずかしいが、俺は真面目だった…。助けたい奴を助けられなかった俺は自分が憎く、その怒りを技習得に当てた。
そして今も…
「…ふ、ふ、」
素振りをしながら雑念を払う。
因みに振っているのは置き忘れたのか、壁に立て掛けてあった箒だ。
それを一心不乱に振るう。
すると、男に声を掛けられた。
「…ほう、なかなか筋が良いな」
その声に驚き、後ろを振り向くと鎧に身を包んだ一人の兵士だった。
年は俺の2つ上か…?
「ああ、これは失礼した。俺は近衛騎士団長のゲイルだ。君が勇者殿だな?」
「はい、向坂慎吾と申します。以後、お見知りおきを」
「はっはっは!そんなに他人行儀にならなくて良い。年も俺と変わらないようだしな」
意外とフランクな人だな…でも、相当強い
「シンゴは騎士かなんかだったのか?」
「いえ、ただの一般人でした。学校にかようだけの…。独学でこうなりました」
「ひ、一人でか…?」
「そうですが…?」
「凄いな…俺でも君と闘って勝つ自信は余り無いぞ…?」
「まあ、一心不乱に修行してましたから」
苦笑しながら頬を掻く
「君なら、魔王を倒せるかもな」
笑いながら頭を撫でられる。
俺と彼では俺が低いから仕方無いけど、撫でる必要あるかね…?
「おっと、仕事に戻らないとな。じゃ、またな」
「はい」
立ち去る彼にお辞儀をし、俺も部屋に戻る。
この部屋には風呂が有るので、汗を流す。
そう言えば魔法も有るんだよな、この世界…まあ、俺は使わないが
風呂から上がり、服に着替える
すると、戸を叩く音がしたので返事をし戸を開ける
「おはようございます、勇者様。朝早くに申し訳有りません。父上がお待ちですので来て頂けますか?」
王女にそう言われたので了承する
「分かりました。すぐ行きます」
そう言って身だしなみを軽く整え、王女について行く
国王の所に着くと、既に兵士や家臣の人達が集まり、国王が玉座に座っていた
「おお、勇者殿。朝早くに申し訳無い。今日は勇者殿と共に闘う者を紹介したくてな」
国王が言い終わると3人の男女が出てくる
「左から弓使い(アーチャー)のエレナ、魔法使い(ウィッチ)のユニ、そして…騎士のゲイルだ。この者達と共に、魔王を倒してほしい」
国王がそう言うと、3人が近づいて来る。
「弓使いのエレナと申します!一緒に頑張りましょう!」
…うん、元気な小学生?な印象だ。
てか、こんな子も戦場に出すのかよ…
「魔法使いのユニよ。よろしくね」
ザ・大人って感じの女の人だな
「騎士のゲイルだ。…と言っても、朝に会ったな」
「そうですね。えー、皆さんと魔王討伐に向かう向坂慎吾です。よろしくお願いします」
挨拶を終えると国王が話し始める
「装備は既に部屋に置いてある。準備が出来次第、魔王討伐に向かってもらいたい。それと不躾ではあるが、我が娘も連れて行ってほしいのだ。その目で世界を見て回り、今を学んでもらいたいと思っている」
何てこと言い出すんだこの人!?
大事な娘だろうに…(汗)
「勇者様、よろしくお願いしますね」
笑顔で挨拶してくる王女。だが、俺には嫌な予感しかしないのだが…
とりあえず、軽く挨拶して部屋に戻る
部屋には防具と長剣が置かれていた
それらを身に付け、集合場所に向かうと全員が揃っていた
--数時間後
国を挙げての見送りか…期待されてんなぁ、と考えながら魔界と呼ばれる魔王の治める国に向かう。
だが、これが俺の人生を狂わす物語の幕開けでもあった…