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森の言葉

作者: くー

1年ほど前に書いた童話(?)です。

 ある日、森の神様は考えた。みんな同じ言葉をしゃべれたら、もっと楽しくないかなと。

 ウサギは仲間と話すけど池の魚とは話さない。

ちょうちょも仲間としゃべるけど、てんとう虫には知らん顔。

みんな同じ森に住んでいるのに本当にばらばら、まるで違うところに住んでいるみたい。

 さみしくないのかな?

 森の神様はその夜、森で一番高い木で釣ったお星様を一つ土産に、言葉の神様に頼んだ。

 私に住む動物たちがみんな同じ言葉を話せるようにと。

 言葉の神様は星を手に取り少し悩んでこういった。

「三日間ならできますよ」

「ずっとではなく、三日間だけですか?」

「はい、私だけの力では三日間です。その間、よく考えてください。それ以上長く・・・そう、永遠にと思われるのなら、もう二つ星を持ってきてください。星の力を借りてみんなの言葉を同じにしましょう。しかし、戻したいと思われたら三日後に私のところにきてください。星をお返しいたしましょう」


 一日目。朝から森はにぎやかだった。

 小鳥とリスが一緒に歌い、狐の子と子ウサギがかけっこをしている。お腹をすかせたてんとう虫とちょうちょが仲良く花のみつで食事をしていた。ふくろうは眠い目をこすり北から来た渡り鳥の話を聞いている。

 森の神様は思った。みんな言葉が通じてうれしいんだ。言葉の神様のところへ行くため寝なかった森の神様はとても眠かった。でもがんばってよかったと、笑い声を子守唄に森の神様は眠りについた。

 二日目。森はいつもの朝だった。

 小鳥とリスが歌ってる。狐の子は巣穴で寝ているのか見かけないが、子ウサギが草を食べている。ちょうちょとトンボがけんかをしている。ふくろうはぐっすり眠り、渡り鳥は羽を休めている。それは前と変わらないこと。

 言葉が通じることにもう慣れたのかな、森の神様は釣竿にした高い木のお手入れをしながら首をかしげた。

 三日目。朝から森のどこかでだれかが泣いている。

 小鳥は空を飛びたいのに飛べないリスが小鳥に乗ろうと翼をつかんで邪魔をする。狐の子は今日も現れず、草を食む子ウサギがさみしそうだ。くもの巣に引っかかったちょうちょが家主のくもとけんかをしている。ふくろうはやっぱり寝ていて、渡り鳥は別れのあいさつもせずに出発した。

 森の神様はため息をついた。せっかくお話できるようになったのになんでこうなってしまうのだろう。

「神様、神様、お願いがあります」

 池の前の小さな広場に森中のさまざまな動物が集まっている。

「ウサギ町の町長です」

 茶色のウサギがぴょんとはねた。

「コガネムシの長です」

 コガネムシはてらりと甲をひからせた。

 自己紹介は続くつづく。本当に森に住むほぼすべての動物の長がそろっていた。

「狐の長老です」

 最後に出てきてあいさつをした銀色の狐が続けていった。

「森の神様、このたびはみなが話をする機会をつくっていただき、まことにありがとうございます。ほかの動物と話をするのはとても楽しいのですが、えー、少々不都合がありまして元にもどしていただきたいのです」

 狐の言葉に森の神様はびっくりしました。

「言葉が通じるのは楽しくないのですか?」

「とてもよい経験をさせていただきました。しかし、言葉がわかると、えー、食事がしにくいのです」

「食事が、ですか?」

 森の神様は食事をしないので、なんのことかわかりません。

「えー、生き物は生きつづけるために何かを食べなくてはならないのです。それが食事です」

 それはわかりますと狐の言葉に森の神様はうなずきました。

「言葉が同じですと、それはもう困るのです。えー、私たち狐は小さな動物や魚を食べて生きています」

 狐はちらりとウサギの町長さんを見ました。

「生きるためにウサギも狩ります。たとえば小さな子のために子ウサギを狩ろうとしたときに『助けて。私は昨日あなたのこどもと一緒に遊んだうさぎです』といわれてごらんなさい。それでも、私は生きるために食べなければなりません。えー、しかし、こどもたちは・・・」

 狐の言葉は段々小さくなって消えてしまいました。

 かわってウサギの町長が出てきました。

「私たちも同じです。『小さな子がお腹をすかせて待っているので、つかまってください』といわれてもつかまるわけにはいかないのです」

 後ろに控えるすべての動物がウサギの町長を見てうなずいた。

 森の神様は一生懸命生きる彼らが大好きで、ずっと見ていた。みんなの言葉が通じ、話し合えたら素敵だと思ったけど、傷つけてしまったね。

「森に住むものたち、よくわかりました。言葉の神様に元通りにしてもらいます」


 森の神様が行くと、言葉の神様は優しく笑って待っていました。

「星を返しましょうか?」

「はい」

 森の神様は言葉の神様から渡された星をそのまま空に返しました。

「言葉の神様はご存知だったのですか?」

「なにをでしょうか?」

 森の神様は言葉の神様に訊きたいことがたくさんありました。しかしどう言っていいのかわかりません。

「生き物とは、不思議ですね」

「ええ、とても不思議です」

 そういって二人の神様は顔を見合わせにっこりしました。


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