報告書…?
ラオス視点
短編調査を行う世界の再編です。
夕暮れになると、馬はもう、ロバと一緒にいた。
何も言われずに風呂に案内され、ほかほかした身体のまま、机の前に報告書を広げる。
腕を組み、目を瞑り、今日の村の様子全てを反芻する。
「この村の指揮系統は…詳しい話は聞けなかった」
引き続き調査が必要。
さらさらと用紙に書きつける。
「村に医師が居ないのは問題だな。ご老体も多い村だ。手配が必要」
一瞬、筆が止まる。だがすぐに淀みなく筆が進む。口元にはうっすらと笑みさえ浮かぶ。
「口は悪いが、腕は確かだ。この村にも馴染みやすかろう」
その勢いに任せ、褒章の手配、関係者への調整、と次々と書類をしたためていく。
やがて、それも終わり、軽く眉間をほぐす。
ふと、脳裏に気になる話があったことを思い出す。
―村を出た人間は、必ず飯を作るのが美味い連れ合いを連れて戻る。
ふぅ。と息が漏れる。
「……興味深い傾向だな。
だが、それは因果ではなく、結果だろう」
―生活が成立する?
―帰ってこられる理由がある?
―継続できる場所がある?
「……確認が必要だ」
軽く首を振ると、ラオスは布団の中に潜り込んだ。
翌朝、ラオスが目を覚ますと、入り口にメモが挟まれている。
ラオスが、そっと紙を開く。
そこには、忘れかけていた、右肩上がりのやや乱暴な文字。
「この村は異常なし。だから二度と来るな」
思わず、窓から外を見るラオス。
ガラガラというリアカーの音に乗って、遠くからは、
「うおーい」
という声。
「待ってろって。トイレはあっちだ。ああ、もう脱ぐなって」
ご老体は、無事トイレに連れて行っていただけたようだ。
鼻をくすぐるバターの香り。
香ばしいパンの焼ける音。
今日の夜は、美味いスープが待っている。




