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境界  作者: はらぺこ姫
第1章
8/16

調査開始

ラオス視点

短編調査を行う世界の再編です。


ピーヒョロロー


木漏れ日の隙間から澄んだ高い声が響く。


ラオスは、パチリと目を開ける。


「村の方向は、あっちか」


ポケットから取り出した乾パンを、湯で流し込む。


昨日作った湯はもう冷めていた。


それが終わると身体をほぐすのを兼ねて、昨夜の痕跡を足で消す。


視線の先には、薄く煙が立ち上っていた。


そこから先の森を抜けた、少し開けた場所に、その村はあった。


少し無理をさせた馬をねぎらいながら、ラオスは降り立つ。


ラオスの想定とは、真逆ののどかな風が頬を通り過ぎる。


「今のところ、問題はなさそうだが…ん?」


何やらよくわからない格好の塊達。


「なあなあ、これ、馬って言うんだろ?俺知ってる」

「うちにも居るよー」

「馬鹿、あれはロバっていうんだぞ」


とりあえず、その塊を壊してはいけないことだけは理解出来たので、やや興奮気味の馬をなだめる。


「私は、王国騎士団長の、ラオス=シェルガードともうす。村長殿に取り次ぎを願いたい」


ざわつく塊。


「こ、こうか?」

「ほら、よく見て、こうよ」


王国式の騎士礼を真似し始める塊。


「違う、ここはこうして、あ、君は背筋を伸ばして」


バラバラなりにまとまりつつある塊達。


今だ!


ラオスは咳払いをして、皆の注目を集める。


「ところで、だ…?」


目の前には、整然と並んだ草の隊列のみ。


さわさわと、草が順にお辞儀を返している。


…錯覚か?いや、


「俺、みんなに自慢して来る!」

「いや、私の方がカッコいいから、私が行く!」


遠ざかるその声に被せて、


「おーい、お前ら。昼飯出来たぞ」


村人がこちらに近づくのが見えた。


先程と同様に、名乗りをあげようとするラオス。


「あー。すまん、1人追加できるかー」


目の前にいたはずの塊も消えた。


ラオスが、村に入るべきか戸惑っていると。


「おーい」


先ほど消えた塊と同じ声。


振り向くと、人懐っこい顔をした村人が手を上げている。


「鍋の時間に、間に合って良かったなあ」


ぽんぽんとラオスの肩を叩きながら、ホカホカと湯気を立てた器を差し出される。


「……」


断る理由を探す前に、手が伸びる。


湯気の揺れに吸い寄せられるように、一口。


「……」


味は、わかる。素朴な味だ。


美味い、という判断より先に、ゴクリと、喉が動く。


流れるように、村人は、ラオスを村の中央に連れて行った。


カチャカチャと食器が立てる音と、


「野菜ばっかり入れるなー」


という声。


ラオスの手には空になった器。


「村長殿は?もしくは責任者を」


ラオスの問いかけに、お代わりいる?と器にそそぐやや高齢の女性。


「おにいさん、しっかり食べなきゃねえ。ちゃんと鍛えているんだろう?」


今度は、別の高齢の女性が果物を差し出す。


「いや、私は任務で…」


ラオスが断ろうとすると、さらに別の男の人から。


「任務ですか、ありがとうございます。助かるよ」


パンを渡された。


異常か、否か。


これは報告書にあげるべき案件か。


無意識にパンを齧る。


「材料は、一般的な小麦と思われるが…」


無意識に、口の中にある物の分析を始めたところで。


突然、村の外に繋いだはずの馬の嘶きと、リアカーを引くゴロゴロという音に合わせて、ズシャーっという土を削る音。


「じいちゃん、だからちゃんと座ってないと危ないだろって」

「昼飯に間に合わんかったら、お前のせいじゃからな」


ワイワイと言いながら、ご老体と食べ物を奪い合う男。


…何してんだ、お前は


探していたはずのものに対して、何の感情かわからないツッコミだけだった。


調査が必要だ。

だが、何を…?

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