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境界  作者: はらぺこ姫
一章
5/13

答えはやっぱり美味しいご飯

ユウ視点

短編 美味しいご飯のある世界の再編です

でも、とユウは今日を振り返る。


楽しくなかった、と言えば嘘になる。


「ご飯は美味しかったけど。これ、冒険じゃない」


そう、村を出る前に感じていたドキドキが無いのだ。


「ごはんが美味いということは、幸せということじゃ。」


ペッカじいちゃんが遠くを見ながら言う。


変わらず、ほほを流れる柔らかな風、足元には綺麗な花。


目の前には、全てのキラキラを詰め込んだような湖。そして…


「あ、ちょうちょ〜」


ナナののんびりとした声だけがやたら鮮明に響く。


「おいっ、ナナ!!そんなでかいちょうちょは、ってあいたあ」


ゴキリという音とともに、起き上がりかけたおっちゃんが再び倒れ込む。


「おっちゃん!ナナ?」


2人を見比べたのは一瞬。


「先に行くよっ」


近くにあったお鍋とお玉を抱えてユウは走り出す。


これ以上、ナナの背中が小さくならないように。


体感にして、10分、5分、いや、もっと短かったかも知れない。


もうこれ以上走れない、という先にナナはいた。


「ちょうちょ、どっか行っちゃった」


ナナも追いかけていたものを見失ったらしい。


「大人の言うことは聞けってあれほど」


ブツブツと腰をさすりながら、リアカーとおっちゃんも合流した。


「ねえ、あそこ…」


夢中になっていた時には気づかなかった洞窟が目の前に姿を表した。


それは、知っているような、知らないような、懐かしいような懐かしくないような。


でも、心の奥が温かくなる光。


「綺麗だねぇ」


まるで光と会話しているようなナナ。


ユウの頭の中は疑問符で一杯だ。


「おいっ。薬草が光ってる」


おっちゃんの声に足元を見ると、薬草がまるで呼応するかのように光出す。


それは、光の絨毯のように次々と光っていき、


「薬草畑が、光ってる」


いつのまにか、少し小高い丘の上に立っていたらしい。


麓にある薬草畑が光を受けて輝き始めている。


「年寄りどもが心配だ。帰るぞ」


おっちゃんに言われるまでもなく、帰り道へ戻ろうとした時、


ドーン


と、洞窟の奥から地響きのような音がした。


ユウ達を、暗闇に引きずり込む何か。


気持ち悪いような頭がグラグラするような。


湧き上がる、いやな感情。


「くそっ」


舌打ちが聞こえたかと思うと、目の前にはおっちゃんの大きな背中。


その時、温かい光がユウの隣にそっと寄り添う気配がした。


“大丈夫”なんの根拠もない自信がユウの中から溢れてくる。


ユウの自信に呼応するように光がゆれるたび、闇が消える。


ユウの記憶の中に大好きなご飯と、その時の幸せな気持ちが映像となって現れ、自信が肯定となり弾け、どんどん加速する。息継ぎする暇もないくらいに。


そして、静寂。


肩で息をするユウ。最後に、頭に響く問い。


「じゃあ、お前の欲しいものはなんだ?」


ユウの頭の中に残ったのは、大きなお鍋を囲み、湯気の中をみんなが笑っている姿。


だから、答えは


「美味しいご飯!」


お玉を掲げて堂々と言い切った。


「おま、なんだよそれ」


おっちゃんが脱力したように言う。


「美味しいよね、ご飯」

「腹減ったのぅ」


ナナの能天気な声に、ペッカじいちゃんの声が重なる。


光は優しく瞬いている。


その後、ちゃんと年寄り組と合流した帰り道。


リヤカーの上でペッカおじいちゃんが、光る草を眺めていたかと思うと。


パクリと誰も止める間もなく口に入れる。


すると、いきなり拳を突き上げ、


「ぺかー」


立ち上がった!!


「こら、じいさん、危ないって」


慌てるおっちゃん。


「この(光る)草は足腰によさそうじゃな」


リアカーを飛び降りようとするペッカじいちゃんと、それを止めようとするおっちゃん。


リアカーはギシギシ揺れている。


それを見て笑うほかの年寄りたち。


ナナが、そっと横にきて、後ろで手を組みながら並んで歩く。


「今日の鍋はなんだろうね?」


ユウのお腹がぐうと返事を返す。


“帰ったら、美味しいご飯が待っている。それだけでいい”


早く村に帰ろう。素直にそう思えた。

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