愛のカタチ
ユウ視点
「いや、助けて欲しいんだけど」
と、首から下はまだ布に巻かれたお兄さん。
『早く渡してやれ』
とドラきち。
炎の代わりに置かれたお兄さんを挟んで、話し合いが始まった。
「お姉さん達の料理、美味しかったです」
まず、一番遠い場所からユウが話しかける。
「久しぶりだから、張り切っちゃった」
向こうも一番遠い場所から声がする。
「でも、食べさせる相手、居ない」
少し緑がかった肌の少女。
「俺が全部食うから」
何故かお兄さん。
「本当?じゃあこれ、全部食べて」
と、並べられたご馳走。
軽く10人前は並んでいる。
お兄さんが息を飲むのが見える。
「やっぱ、無理。流石に全部無理!」
ややひき気味のお兄さん。
緑がかった肌の少女は、にこにことお兄さんの口にご飯を押し込んでいる。
『なんかのう、番を探しておるようじゃ』
一番年上っぽい女性と話をしていた、ドラきち。
やがて、やや困惑したようにユウに告げた。
ユウの頭に、王都スパイス屋のおじさんの話が蘇る。
「そういやさ、ドラきち覚えてる?ほら、売り子の話」
ドラきちが首を傾げ、ユウが説明すると思い出したように口を開く。
『そういえば、店を出すのは良いが、売り子がおらん。
誰か知らんか言うとったのう。売り子と番は関係なかろう』
ドラきちの声は聞こえないものの、断片的な情報から察したお兄さん。
「えー、君たちの売ってくれる店なら、毎日でも通っちゃう」
その言葉に、やっと事情を理解したドラきちがため息を吐いた。
再び話し合った結果。
とりあえず、この集落の女性のうち何人かが様子見で先行することとなる。
「という訳で、ちょっぱやで仕事終わらせて来るから」
と、お兄さん。
「準備して待ってる」
とは、緑がかった肌の少女だ。
『一人、必要の無さそうなのがおるのう』
ドラきちのぼやきに、ユウは肩をすくめて答えた。
「それより、この布どうする?」
お兄さんを巻いていた布の塊。
なんか、勿体ない気もして聞いてみる。
「女性はおしゃれも必要だと思うの。だからあげる」
とは、緑がかった肌の少女。
『あやつの巻いてたのはいらん』
本気で嫌そうなドラきち。
「新しく巻く?」
ユウの体に布を巻く仕草をする、別の女の子。
ユウの顔が青ざめる。
『普通に寄越せば良い』
布が来るまでの間、ドラきちはユウに何事か告げた。
やがて、布が届けられ。
「じゃあ、いくよ」
ユウは思い切り布を空に放り投げる。
ピッ
それを合図に、ドラきちが炎を吐く。
炎と布がぶつかった先では、太陽の光を受けて、キラキラと解けていく。
解けた光は、淡い鱗の形を作ろうとしている。
『今じゃ』
その言葉に今度は、ドラきちを投げるユウ。
ドラきちの身体が、解けていく光の帯を通過する。
光の帯が強く光り、目を開けていられない。
そして、バサリ。
羽音。
『ふむ、これでトカゲに間違われることもあるまい』
皆の頭に響くほどの厳かな声に目を開ける。
そこには。
太陽の光を受けて、上空を様々な色に変化させるドラゴンの姿があった。
光の収束とともに、再び肩に乗るドラきち。
身体が不思議な輝きを持って、様々な色に変化している。
さっきまでの、黒とも茶ともつかない姿とは全く違っている。
「あのさ、さすがにこの姿でドラきちはないよ。こんなに綺麗なのに」
ユウの言葉に、ドラきちは少し考える。
『なら、ドラキナと。真名は教えてやれんが、このくらいなら問題ない』
その横で、お兄さんは腰を抜かしている。
それを介抱しようと、先ほどの布で巻き出す緑がかった肌の少女。
再び布でぐるぐる巻きになったお兄さん。
当然のように背に乗せる緑がかった肌の少女。
「もう準備は出来た」
他の女の人たちは、普通の荷物を背に乗せている。
「出発しましょう」
その声に、ユウはドラきちを見た後。
慌ててリュックを背に乗せた。
王都に向かう道すがら、
「ねえ、あの移動は大丈夫なの?」
布に巻かれ、荷物のように背に乗せられた姿。
時々、思い出したように布が動いている。
『まあ、愛があればなんとやらじゃろう。あやつの言葉じゃ』
ドラきちは既に興味を失ったように干し肉を齧った。




