隠し子?騒動
「この家に住んでいる者を呼べとの旦那様からの伝言です」
執事の顔からはなんの表情も伺えない。
団員達は顔を見合わせる。
「僕、ですか?」
この家に住んでると言えば、自分だよな。とユウが名乗りをあげる。
「まだ、大人になったばかりの者を一人で行かせるのは心配だ。
―自分が付いて行きます」
ニールさんが、ユウを背に庇いながら告げるも。
「いえ、お一人で、とのことです」
ユウは、ニールさんに頷くと、一人で馬車に乗り込んだ。
シェルガード本邸に着く。部屋の奥には、黄金色の髪の女性の姿が見えた。
ユウは、跪き、腕を重ね顔の前に置く。
これは、王族に謁見する際の平民のマナーだ。
「そこまで畏まる必要はないわ。で、この者が何と?」
女性の言葉に、隣にいた男性が、いや、そんなはずと呟いている。
「父上、この青年は、村で才能を見込み、“育てている”者です。
私の隠し子とか言われましても。
それに、おっしゃる女性も心当たりがありません」
ラオスおじさんの表情もいつもと違う。
「とりあえず、隣室のお客様は、ラオスとは関係無さそうよ。お帰り頂いて」
女性の言葉に、執事が退室して行く。
「では、私が面倒を見ている村の青年は、私が送りましょう」
ラオスおじさんが、ユウを部屋の外に連れ出してくれる。
馬車の中で。
「怖かったよう」
半べそのユウの頭を、ラオスが撫でる。
「すまん。私の愛人と名乗る存在は珍しくもないんだが。ただ。
今回は、父上がユウの存在を知ったらしくてな。それでこの騒ぎだ」
ラオスおじさんの言葉に、ユウは自分が泣いていたのも忘れて、顔をあげる。
「リリーちゃんが、お父さんのそんな姿許す訳無いじゃん。
それは絶対ない。僕が何か言えば良かった?」
ラオスおじさんは、首を振った。
「ユウの行動は正解だ。作法はコラディウスに教わったんだろう?」
ユウの髪の毛をわしゃわしゃ撫でるせいで、ユウが返事を出来ずにいると。
「この騒ぎで、赤マントはしばらく出ないだろう。
部下達にも伝えておく。しばらく一人になるけど大丈夫か?」
その言葉には、頷くしか無かった。
ラオスの帰っていく馬車をドラきちと見送る。
そして、本当に一人きりになる。
「静かだね」
そこかしこに、皆で騒いだ名残りが残っている。
靴下の片方だけ。
何かの飲みかけの瓶。
散らばったカード。
それらを一つづつ片付け、自分で作った肉パンを齧る。
一口。
首を傾げ。
また一口。
目の前のテーブルの上で食べているドラきちを見る。
「味がしない」
いつもと同じもののはずなのに。
『すまんのう。この姿では、抱きしめてやることも出来ぬ』
ドラきちが、ユウの頬を舐める。
ユウの頭の中に、自分より少し大きくなったドラきちの姿が浮かぶ。
「そうだね。大きくなってくれたら嬉しい」
人差し指の先で、そっとドラきちを撫でた。




