王都の次の流行
ユウ視点
帰りが当初の予定より大きな荷物になった商人のおじさんは、臨時でユウを雇ってくれて。
ギルドに顔を出し、完了の手続きを取る。
忘れずに買ったニールさんへのお土産も手に持ち。
「ただいまー」
意気揚々と詰所に顔を出す。
「で、今度は何やらかした」
ユウの顔を見るなり、ニールさんは紙を取り出していた。
「それより、お土産!ちゃんと忘れずに買ってきた!」
ユウが取り出したのは、露天で売っていたその土地の守り神のストラップ。
大きな細長い顔の男の人を模したものだ。
その土地独特の色彩。
ユウの村では見たこともない顔。
きっとニールさんは喜んでくれそうなものと、考え抜いた一品。
「いや、それ。あ、ありがとう」
ニールが、お土産を手に固まっている。
よっぽど嬉しかったに違いない。
そこに。
「ユウ、鳥に攫われたんだって!そこ詳しく!」
この前のクラーケンと似たセリフを吐きながら、団員が駆け込んできた。
「要するに、母鳥が雛の餌に丸焼きを狙った。
で、それを阻止しようと一緒について行った。
で、雛の餌を取るのを手伝って、貰ったお礼でトカゲが羽生えた。
うん、ギルド案件」
ニールさんが、箱にぽいっと書いた紙を入れる。
「へえ、羽というよりリボンみたいだね」
飛んでいる時とは違い、ちゃんと身体のサイズに合わせた羽を見ながら、周りを取り囲んでいた団員の一人がつぶやく。
ドラきちも、わかる?みたいに嬉しそうだ。
でも、触ろうとした団員は、何かの力で弾かれている。
「にしても。なんか向こうでは食べたのか?丸焼きは食べたようだけど」
ニールさんがペンを指先で回しながら聞く。
「あ、そうだ。これこれ」
王都に戻る道すがら、商人のおじさんと、あーでもないこーでもないと話し合い、とりあえず作った試作品の瓶を幾つか取り出す。
黒い液体は、何かの薬にも見える。
案の定、何人かの団員が眉をしかめた。
「商人のおじさんが言うには、これから王都で流行るものらしいです」
ユウがギルドからここに来るまでの道すがら、王都の市場で買ったものを取り出す。
「この丸パンに、切り込みを入れて。ステーキをカットしたやつを入れる。で、この調味料をかけて」
商人のおじさんに教わった通りの手順で、ユウは再現する。
「ニールさん、食べてみてください」
受け取ったニールが、おそるおそる一口。
咀嚼。
飲み込む。
次の一口に至る頃には、パンは消えていた。
「これ、夜食にいいな」
ニールのつぶやきに、近くで様子を見守っていた団員が、我も我もと群がり、自分で作り出す。
「サンドイッチも良いけど、これの方が腹に溜まるな」
その一言で、誰かが教えてくれた商人の元へ走っていった。




