王都の迷子
ユウ視点
〜王都にて〜
「団長の、知り合いなんて羨ましいっす」
ラオスに、ギルドの手続きに詳しい者と引き合わせられたのは、年が少し上くらいの割とガタイのいいニールという兄ちゃんだった。
「僕は良くわからなくて」
ユウが首を傾げる。
ユウを街で人気の食堂に案内しながら、ニールが振り向く。
「でも、ユウくんの動き、間違いなくうちの団の捕縛術の基礎を踏んだ者の動きだよ」
考えてみれば、初めての人混みをほぼ誰にもぶつかることなく歩いている事にユウは気づく。
「そっか。そりゃ“前線”だもんな。子供の頃から厳しい訓練受けたんだろうなあ」
厳しい訓練?
ラオスおじさんは、そそっかしくて、割った薪が何処に飛んで行くかわからなくて。子供達で必死にキャッチした記憶とか。
ペッカじいちゃんの美味いもんセンサーに、誰よりも一番に反応して、涼しい顔して一番美味しいとこ持って行くから、皆で協力して、妨害したりとか。
そんな記憶しか浮かんでこない。
「うおっと」
ニールの、避けた場所から人が飛び出す。
目の端にキラリと光る刃物を見つけ、ユウの身体は無意識に動いていた。
「確保!」
ニールの大声に我に返る。
地面には、ユウに抑えられ、身動き出来ない男の姿があった。
~街の食堂にて~
「ごめんって。ちょっと、どこまで出来るか試したからってそこまで怒らなくても。ここ全部奢るから」
ブスっとした顔で、一言も喋らないユウに対して、ニールの調子は軽い。
「お勧めは、これと、これとか、あ。これもある」
メニューを指差して色々解説してくれるものの。
「絵を見ても、どんな味かわからない」
メニューを初めて見たことを説明するユウ。
「あー、田舎だもんな。食堂も初めてか。よし、片っ端から試そう」
すいませーん。とニールは、給仕の人を呼んだ。
「最近さー。鍋に入れるスープってのが流行ってんだよ」
と、目の前には、ミニサイズの鍋に煮えたスープ。
「目新しいもの、王都で食べられると聞いたのに」
ユウの前にあるのは、見た事のある料理ばかり。
「そっかー。確かに。でもさ、途中、海でなんか食べなかった?」
ニールの言葉に、目を瞬かせる。
…海って何?
会話が噛み合ってないことに気づいたニールが、給仕に何か頼む。
程なくしてやって来たのは、一枚の紙。
「一応聞くな。これを見たことは?」
首を振るユウ。
「これは、この国の地図。で、ユウの村の場所わかるか?」
しばらく見つめるもイマイチピンとこない。
「ここ。この地図の端っこ。で、今いる場所がここ。」
地図の北東の端と中央に赤丸が付く。
「で、本来ならこの山が邪魔で、この地図の端にある道を通る」
絵に描かれた線に沿って行くと、陸の端を通るのが判る。
「でも、違ったんだよな?」
頷くユウ。
「まさか、真っ直ぐ通ったってことは、いや団長なら、でも山飛び越えたとか、もう人じゃねえよ」
頭を抱えるニール。
「山はわからないけど、崖は飛び越えたよ」
ユウの言葉に、ニールの口がパカリと開いた。
「馬と一緒だから、多分違うな。うん、どっか別のルートのはずだ」
ニールは一人何やら納得したように頷くと、ユウの方を見る。
「じゃあ、食事を済ませたら、頼まれてた冒険者ギルドへ行こう」
ユウは考えるのを止めて、食事に集中することにした。




