冒険の始まりは
ユウ視点
語り継がれる絵本と同じ時間軸です
「これで、荷物全部だよな」
荷物を全て出し、並べて。
再びまたリュックの中に仕舞うユウに、ナナは呆れた声を出す。
「お兄様、それ、何度目ですの?」
普段とは違う言葉使いに、ユウの手が止まった。
「どうした?なんか、変な木の実でも」
ユウの真面目な顔に、ナナの顔が真っ赤になる。
「リリーちゃんの真似よ!
失礼ね。ちょっと真似しただけで」
ユウは、手元に残った鍋を見る。
そして、頭に被ってみる。
あの頃は、少し大きく感じた鍋。
それが、頭に入らない。
「お兄ちゃん、それ、まさか被って行かないよね?」
ナナの声は、割と本気に聞こえる。
「まさか、そんな…ないない」
慌てて、鍋を背後に隠した。
後で、どうやって持っていこうと悩みながら眠りについた。
そして、出発の朝。
ラオスの馬の背に捕まるユウ。
村のほとんどの人たちが見送りにきてくれている。
鍋は、結局リュックの後ろで鎮座している。
「ちゃんと、食事は一人で食べる。
勝手に人には何かを渡さない。それからー」
昔、村の外に住んでいたお父さんが、くどいほど注意をする。
「わかってるって。じゃ。行ってくる」
ラオスの操る馬は、最初はゆっくりと。
村が見えなくなった辺りで、馬のスピードが徐々に上がる。
やがて、一つの崖を飛び越えた辺りで、ユウは叫んだ。
「早い、早いって」
ラオスの持つ馬の手綱が魔法によって光っている。
「ああ、すまんすまん。つい、いつものように」
ラオスが手元を見、馬を止める。
そのまま、馬から一度降り、水袋を渡される。
「エリーさんにも、同じように?」
何度か、一緒の馬に乗って来た記憶から聞くと。
「…1日半くらいかかるな。普通の道を通れば」
ほんの少し、目を逸らすラオス。
「普通じゃないことだけはわかった」
ユウが鍋を取り出そうとするのを見たラオス。
「このまま飛ばせば、昼前には王都につくが」
ラオスの言葉に、ユウは慌てて鍋を背負い直した。




