番外編②姫の未来
ラオス視点
ラオス×エリーの結婚後の話です。
「手紙の件、了承した」
王家の執務室。
本来なら、何度も手続きが必要なそれも、母上の手紙というだけで、すり抜けていく。
ほぼ待つ事なく、王へその手紙がわたる。
「ところで、ラオス。
お前は、王家の悲願について、何処まで知っておる?」
ラオスは、慎重に言葉を紡ぐ。
「黄金の髪、エメラルドグリーンの瞳。
境界の女神の色。
一般には、金色の髪、緑の瞳とだけ伝えられていますが」
王は頷く。
「それが、女神の代弁者たる証とすれば?」
ラオスが息を呑む。
「本来、境界の問いに答えし者は、洞窟に入らねば得られぬもの。
しかし、光ったと言ったな」
ラオスの頷きに、王は続ける。
「それは、力ある者が産まれる予兆と言われておる。
うちの王宮の占い師どもは、うちの孫の誕生を当て嵌めたようじゃが」
チラリと王は、ラオスを見る。
「わが妹は、お前たちの次代に期待をかけたようじゃ。
…ゆえに、あの者にもいらん心配をさせてもうた。
ラオス…恨むでないぞ。あの者は知らなかったのじゃから」
ラオスは再び、深く頭を下げる。
「わしからも頼む」
その言葉を最後に、ラオスは王宮を辞した。
~辺境の村~
全ての手続きを終えて戻ったラオスが見たものは、鍋を前に座るエリーと、周りを囲む子供たち。
「エリー先生、この味どう?」
と、一人の子供が小さな器を差し出す。
「エリー先生。野菜の大きさこのくらい?」
と別の子が聞けば。
「エリー先生、混ぜ方合ってる?」
鍋の前が小さな教室と化している。
エリーも、そうねえ。これは、など子供たちと楽しそうな雰囲気。
ふと、エリーが顔を上げ、ラオスと視線が合う。
「おかえりなさい」
子供たちも、おかえりなさーいと追従する。
「あ、ああ。ただいま」
何故か、子供たちが、エリーの隣に椅子を用意し始める。
当然のように隣に座らせられるラオス。
「でさ、ラオスおじちゃん。教えてもらいたいことあるんだ」
と子供の一人が言い始め。
「ラオス先生、剣教えて―」
と子供が言い始めると、おっちゃんの声が遠くから聞こえる。
「子供らに危ないことさせるなー」
少し、ラオスは考える。
「闘いは、教えてやれんが…」
ちらりとおっちゃんの方を見るラオス。
「あー。判ったよ。皆、せっかくの主役が帰ったんだ。祭りだ、祭り」
おっちゃんの声に、皆が動き出した。
そして夜。
月明かりが照らす中、急遽中央に作られたステージに浮かび上がる二人の姿。
「誰?あの人。ラオスさんは分かるけど」
「え?あれ、もしかして」
「おっちゃんだ。おっちゃんだよ。でも、あんな服」
王国に伝わる儀礼服の姿に、誰もが騒然となる。
「これ、やっぱり着なくちゃダメか?窮屈で」
「シェルガード家に伝わる特別な演舞を披露するんだ。
そのぐらい我慢しろ」
小声で、少しもめた後。
「あー、演武たるもの、本来は集団で行うものであるが…」
演説を始めようとするラオスを、慌てて止めるおっちゃん。
いつものおっちゃんの様子に、場の張りつめた空気が少し緩む。
「よーするに、特別な祝いの席で披露される踊りってことだ。
一生に一度みられるかどうかというほどの貴重なもんだ。よーくみとけ」
本来であれば、シェルガード家が女神に奉納されるべき演舞。
女神へ、祈り、誓い。そして―物語が紡がれる。
ラオスの剣が、ほのかに光を帯びる。
受けるおっちゃんの手からもほのかな光が。
「あ、光」
村人たちの周りも、蛍のような光が舞い始める。
「きれいじゃのう。食えんのがもったいないのう」
とペッカじいちゃんが言い。
「本当の祈りが通じた証拠じゃ」
コラジイも満足げに頷く。
「キラキラ~」
ナナは、ドラコの羽を取り、くるくると踊り始める。
「うん、大丈夫」
ユウは隣の光に力強く答えている。
そして、光はエリーの近くにも―。
その時、エリーが光と何かを話す姿がラオスの視界の端に映る。
その後、舞台の光が強くなって。
「何、あれ?」
誰かが指さしたのは空。
空には、オーロラのような光の帯が色を変えながら揺れている。
それは、やがて王都の方まで伸び。
ゆっくりと消える。
その光景を、踊っていたはずのナナでさえ口を開けて見ている。
「エリー大丈夫かっ」
少し、エリーの身体が傾いたのを見つけ、ラオスが舞台から飛ぶ。
「ええ、大丈夫です。問いに答えただけですから」
エリーの思ったよりしっかりした声に、ラオスはほっと息を付く。
「…未来を守ると約束しました。
ふふっ。不思議ですね。未来に託した過去の自分。
なのに、今は未来を守るって」
エリーの言葉に、ラオスも自分が笑っているのが判る。
「ならば、一緒に未来を守ろう」
後ろで、なにやら騒いでいる人たちがいるのも気にせず、二人は一緒に月を見上げていた。




