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境界  作者: はらぺこ姫
一章
3/6

子供が見た日常

ユウ視点

短編、美味しいご飯のある世界の再編です

朝、村の人たちは畑に行き、まだ少し冷たい土のにおいの中で、時折、モーという声や、クワックワッという音が聞こえてくる。



そんな中を、ユウはナナの手を引いて、村の入り口に向かっていた。


「今日のクエスト、楽しみだねー」


どこで拾ってきたのか分からない枝をピュンピュン振り回しながら、ナナは言う。


そう、今日は、ユウとナナが「護衛クエスト」を受ける日なのだ。


だから、絵本に出てくる勇者を真似て、頭にお鍋を被り、手にはお玉を持っている。


ちなみにナナは、魔法使いと言えば杖でしょと枝を自慢げに掲げている。


村の入り口には、昔は見張り台だったという古い家がある。


そこには、自称冒険者のおっちゃんが住んでいるからだ。


壁は少し歪んでいて、屋根の端っこには草が生えている。


その入り口をドンドンと叩く。


「おっちゃん、起きて!!」


なんで「おっちゃん」と呼ぶの?と大人に聞いても、


「おっちゃんだからじゃない?」


という答えしか返ってこない。


だから、たぶんそれが名前なんだと思う。


ただ、子どもたちが判るのは、おっちゃんが村の外から来た人で、村の子供たちに、冒険という遊びがはやり始めたキッカケになったということくらいである。


そうこうしてる間に、いつの間にか入り口のドアを開けたナナが、寝ているおっちゃんの布団をべしっと引っぺがす。


「あと、もう少し寝かせろよー」


おっちゃんが、もそもそと枕を抱えこもうとする前に、ユウがそれを取り上げた。


「もう、みんな待っているよ!早くして」


おっちゃんは、頭をかきながら、ぼやいた。


「朝、早くから起こされたんだから、二度寝くらいさせろ」


でも、おっちゃんがいないと冒険に行けないのだから、起こすのは当たり前。


それに、こんな時間まで寝ている大人は、ろくなことないって誰かが言っていた。


だから、起こすのである。


「行けばいいんだろ、行けば。用意するから待っていろ」


肩を押され、家の外に出ながら、ユウは早くしてよ!と念を押した。


表では、すでにがやがやと年寄りたちが集まりだしている。


「うぉーい、まっちょったぞ」


と、声が飛んできた。


最近すっかり足腰の悪くなっているリアカーに乗ったペッカじいちゃんだ。


ペッカじいちゃんが居るということは、今日のお弁当は当たりの日!


ほんの少し、胸がわくわくする。


美味しいお弁当に釣られたわけでは、決してない、はずだ。


ペッカじいちゃんと、もろもろの荷物を乗せたリアカーを引いているのは、おっちゃんだ。


薬草畑へ行く道をリアカーがゴトゴトと音を立てて進む。


車輪が少し跳ねるたびに、小石がころころと転がる。


その周りを、ほかの年寄りたちが、思い思いに話をしながら歩いていく。


いちばん後ろは、ユウとナナだった。


「ねえ、おっちゃんってさ」


目はしっかりと、友だちに自慢するためのお宝を探しながら。

内緒話みたいな小さな声で、ナナが言う。


「ほんとうに、冒険者だったのかな?」


ユウはリアカーを引くおっちゃんの背中を、見る。


―初めて会ったときの、山賊だか熊だか分からない姿。

―村の人たちに怒られて、泣きながら洗濯をしていた姿。

―そして、なぜか子どもたちの前では偉そうに説教する姿。


どれも、ユウの知っている「かっこいい冒険者」とは、ちょっと違う。


だから、本当は料理人か、大工さんだったんじゃないかなあ。


などと、ユウが考えている横で、


「あともうちょっと」


ナナは自分の持っている枝を使って、指先をべたべたにしながら必死で木の実を採っている。


その時、遠くのほうから、


「おーい、それは食べられんぞー。食べられる木の実はあっちじゃ」


ペッカじいちゃんの声に、ユウはそっちのほうに反射的に駆けていった。

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