番外編①月夜の決意
ラオス視点
ラオス×エリー出会い編です
~市場巡回班詰所にて~
「結局、捕まりませんでしたね」
部下の視察に訪れたラオス。
後ろで、この前の部下が、そわそわしながら、窓から花屋の方を見ている。
ふむ。
「このあたりにも出たと聞いている。
一度、見直しも兼ねて、現場を確認するか?」
部下が後ろで、ガッツポーズをしている。
後で、注意せねば。
市場の熱気。
行き交う人が、景気よく叫ぶ声が聞こえる。
「調査、ですよね。僕、そこの花屋に行ってきます」
勢いよく走りだす部下。
「ふむ、あれ…は?」
目の前の肉屋で見覚えのある姿。
「あら。ラオス…様?」
向こうも自分の姿に気づいたようだ。
エメラルドグリーンの瞳がほんの少し弧を描く。
「いや、あー。このあたりで、女性に人気の商品を調査中だ」
不審がらせてはいけない。
怖がらせてもいけない。
咄嗟の判断で、出たのは目の前で花を買う部下の姿だった。
「そう、ですか」
少し、考え込む女性。
「でしたら、このお肉でしたら、この料理が喜ばれます。
それに、この料理ですと…」
次々に解説してくれる女性。
咄嗟に、肉屋に目線で訴える。
肉屋が、コクコクと頷くと、お勧めの肉を包む。
「あー、では。先ほどのお礼にこれを」
肉を差し出す、ラオス。
「まあ、ありがとうございます。助かりますわ」
柔らかい笑顔を浮かべたまま、立ち去る女性。
その時、ちょうど部下が戻ってくる。
「団長、何かありましたか?」
こほんと咳払い一つ。
「そっちは、何かわかったか?」
部下の視線が少し彷徨う。
「それらしき人物の目撃情報がありません。むしろ、不自然な…」
ふむ。
「それは、確かに不自然だな。もう少し待って何もなければよいが…」
部下を促し、王宮に戻った。
~その夜~
“例の”茂みで、着替えをするラオス。
その時、
カサリ。
音に、とっさに逃げようかと悩むが。
少し離れた場所に置いた服の存在を思い出す。
「あら?」
姿を現したのは、昼間に会った女性。
「ちょうど良かったです」
ニコッと微笑む女性。
手には、裁縫道具が握られていた。
「そのマント、ほつれてます。
よろしければ、縫いましょうか?」
自分の姿と、女性を見比べる。
「怖く、ないのか?」
小首を傾げる女性。
「だって、守ってくださるんでしょう?」
マントの代わりに渡された毛布に包まり、月を見上げるラオス。
言葉が浮かんでは、消え。
言いかけては、消え。
「できました」
静かな声に、はっと意識を呼び戻す。
「あ、ああ。ありがとう」
手渡されたマントを羽織る。
「では」
そのまま、何も言わずに立ち去ろうとする女性。
「すまないが…」
咄嗟に声を掛けるラオス。
「また、頼めるだろうか?」
後姿の女性が、肯定したのを確かめた後、ラオスは夜の街に繰り出した。




