番外編①月夜の出会い
ラオス編
ラオス×エリーの出会い編です。
~執務室で~
ペンを走らせていたラオス。
ふと、その手が止まる。
「この前、書類落としちゃって」
廊下から部下の声。
「で?」
相槌を打つ声。
「その時に、書類を拾ってくれた子、可愛かったなあ」
ふむ。問題はなさそうだ。
引き続き、ペンを走らせる。
「で、お礼にちょっとしたもの渡して」
ペンの動きに集中させる。
「で、食事にでも誘ったのか?」
続きを促す声。
「いや、遠慮されちゃったよ」
それは、残念だったね。という慰めの声がやけに響いた。
~次の日、廊下にて~
「あ、すいません。この前の」
後ろから女性の声。
振り向くと、後ろを歩いていた、部下の一人が頭を下げている。
どうやら、知己のようだ。
「あの時は、どうしても外せない用事があって」
先に一人で行くのもどうなのか。
ラオスが思案していると。
「いえいえ、大丈夫です。お礼が言いたかっただけなので。
先、急ぐので失礼しますね」
部下の声に、再び歩みを進めた。
~再び執務室にて~
「次、どうやって声かけたらいいんだ?」
どうやら、タイミング悪くお互い声をかけるもののすれ違っているらしい。
「ふむ」
確かあの女性は、文官付きの…。
このままでは、確かにすれ違うな。
机の引き出しから、スケジュール表を取り出す。
調整が、必要だな。
でも、理由が必要だ。
何かないものか…。
視界の端に、赤い布が見える。
なるほど。
机の奥を探る。
過去にコーディから貰って、何に使うんだ?と思っていた仮面。
さて。
自分の恰好。
このままでは、すぐに犯人が割れるな。
よし。
部下の訓練も兼ねて、やるか。
~夕方~
騒然とする現場。
「犯人は、赤いマントを羽織っていた模様」
次。
「どうやら、仮面で顔は分かりませんでした」
次。
「動きが素早く、追いつけませんでした」
よし。
条件はそろった。
「では、ここで、不審者捕獲作戦を決行する」
こほん。と咳払いを一つ。
「ここには、うら若き女性も多数存在する。
おそらく今回の事件で、相当不安になっているはずだ」
部下たちがざわつく。
「で、1班は引き続き調査続行。続報を求む」
敬礼をして去る部下たち。
「次に2班、王宮内に不審なものがないか確認」
続いて、2班も消える。
「3班。寮生活の女性の警護を頼む」
3班もざわめきながら消える。
「残る4班は、家路に帰る女性たちを手分けして送るように。
間違えるな。これは、遊びではない。浮ついた気持ちでいると」
ゴクリ。部下たちの喉がなる。
「そこは、我々の腕の見せ所だ。安心できる環境を用意するように」
一人の部下が、仲間たちに一声かけた後、慌てたように走り去る。
さて、準備するか。
部下たちへの指揮をメモに落とす作業を終えたあと、
最後に、
『私も現場に出る』
と残し、さっそうと外に出る。
途中の茂みの中で、先ほどの“目立たない”格好に着替え。
―何故か、相手の女性に悲鳴を上げられたが。
部下が、無事女性を家に送り届けたのを見届けた後。
再び着替える。
ちょうど、そこに
ガサリ。
と音がする。
目の前には、月明かりに照らされた女性の姿。
ほんの少し、驚いたようにエメラルドグリーンの瞳が見開かれている。
「あ、失礼した。私は、ラオス=シェルガードと申す。
このあたりで不審な人物を見かけたとの情報があった。
心当たりはないだろうか?」
かるく首を振る女性。
「では、家まで送りましょうか?」
その申し出にも首をふる女性。
そっと指さす先には、小さな小屋があった。
「もしかして、そちらにお住まいか?」
今度は、肯定の意。
「では、戻るまで、この場で見送るのはどうだろう?」
女性が、小屋に入るのを見届け。
「調査、せねばならん」
小さな声は、誰にも聞かれることはなかった。




