キラキラした世界
ナナ視点
真っ赤なにんじん色の空が消えて、まだ仕事の色の残る大人たちも段々減った頃。
ナナは、任務のために、エリーの横に立つ。
「ねえ、エリーお姉ちゃん。ラオスおじちゃんとはどうやって出会ったの?」
エリーは、鍋を少しかき混ぜる。
そして、小さな器に鍋のお汁を少しだけ注いで、ナナに渡す。
「そうねぇ。あれは満月の夜、だったわ」
満月の夜、出会う2人。ちょっとドキドキする。
でも、その前に、味見隊長としての任務、こなさなきゃ。
エリーお姉ちゃんの作ってくれるスープは、苦手な野菜が入っていても食べられるくらい美味しい。
「あの方は任務で、不審者を取り締まってたの」
ナナは、親指をグッと立てたあと、エリーに器を渡す。
ナナは思う。
ここで、エリーお姉ちゃんが襲われたとこを、かっこよくとか、それとも?
お鍋の周りの空気が少し変わる。
パチパチと薪のハゼる音。
「で、どうなったの?」
ナナより少し年上のお姉ちゃんが聞く。
「その時は、名前を聞いただけよ」
エリーお姉ちゃんのかき混ぜるお玉の隅にハート型のにんじん発見。
今日は、当たりを引けるといいな。
「次に会ったのは、街で調査をしている時、だったかしら?
その時は、お礼を頂いたわ」
街で起きる事件。それを解決する2人。
お礼を口実に、プレゼントを渡すラオスおじちゃん。
誰かのゴクリと喉を鳴らす音がする。
鍋のグツグツと煮える音。
遠くで、ラオスおじちゃんが、他の子たちに何がを教えている声がする。
その合間に響くおっちゃんの声。
「とても、助かったわ。だから、マントのほつれを直してあげたの」
ナナは、頭についたワッペンを触る。
ナナのワッペンには、スプーンが付いている。
味見隊長の証だ。
「ねえねえ、じゃあ、結婚する時、なんて言われたの?」
今度は、別のお姉ちゃんが目を輝かせて聞いている。
「君と一緒に未来を探しに行こう、だったかしら?」
湧き上がる歓声。
誰かが、ラオスおじちゃん呼んでくると走って行く音がする。
「ご飯出来たわよ」
エリーお姉ちゃんは、いつものふんわりとした笑みで、器を渡してくれた。
ガヤガヤという音。
誰かお代わりはーという声。
お鍋の香りが村を包む頃。
普段は遠慮して、ラオスおじちゃんの周りに居ない村のお姉ちゃん達が、2人を囲んでいる。
途切れ途切れに、
「それは、だな」
「任務だ」
「機密事項に触れる」
という声と、その度に歓声が沸き上がってる。
「ねえ、何があったの?」
ラオスおじちゃんに何かを教わってたユウが器を持って、何時もにはないかたまりを見ている。
ナナは、器の中にあるハート型のにんじんを慌てて口に入れて、飲み込む。
で、さっきの話をする。
「ああ、プロポーズの話なんだ」
『プロポーズ』
ナナの頭の中で、前にラオスおじちゃんの剣を渡すシーンと、
ラオスおじちゃんの持ってきてくれた本の光景が重なる。
キラキラしてて、良い!
ナナは、お代わりを貰うために立ち上がる。
「プロポーズの話、終わった?」
エリーお姉ちゃんに、空の器を渡す。
エリーお姉ちゃんは、にっこりして、ナナの器にスープをよそってくれる。
今度は、ハート型のカブが入ってる。
「あつっ」
ラオスおじちゃんは、口の中を火傷したらしい。
口々に、ちゃんと確認せんから、とか、だいじょーぶかー。というおじいちゃんの声がしてる。
「あら、少し熱かったかしら?」
いつの間にか、エリーお姉ちゃんは、ラオスおじちゃんの器をもってふうふうしている。
「これなら、いけると思います。どうぞ」
素直に、エリーお姉ちゃんに飲ませて貰っているラオスおじちゃん。
やっぱりラブラブだね。
ナナは、器の中身が溢れないようにスキップをしながら、ユウに報告に戻った。




