酒が教えるもの
何を言うでもなく、
子供たちが一人減り、二人減り。
鍋はいつの間にか洗われ、
代わりに網が置かれる。
どこからともなく酒が現れ。
月に照らされ、
やや声を抑えた大人たちが、がやがやと話をしている。
ほんの少し特別なことがあった日の日常だ。
「あー。これ、わしの部屋にあったやつじゃないか?」
ペッカじいちゃんが瓶を見るなり言う。
「早く飲まんと、悪くなる。
旨いうちに飲むのが礼儀じゃ」
息子も負けていない。
遠慮なく瓶の蓋を抜く。
きのこと混じった、いい香りが辺りを漂う。
それを、遠慮なく、
ラオスとおっちゃんの器に注いだ。
「おー、これこれ」
おっちゃんは、嬉しそうに飲み干す。
ラオスは、少し香りをかぎ、首を傾げ。
「…ふむ?薬酒の一種か?」
と言いながら一口。
いつの間にか、
ドラキーのドラコも、同じように器を口元に運ぶ仕草をしている。
「で、だ?どうすんだ?」
村の誰かがいう。
「食いもんは、心配なさげだけどな?」
「風呂、入れんといかんか?」
「子供らが拾ってきたんだから、子供らにやらせりゃいいだろ」
話す人の動きに合わせて、
ドラコも首を傾げたり、うなずいたりする。
「…危険は感じないのか?」
ラオスの問いに。
皆何の話だ?という顔で見合わせる。
「だって、ラオスさんが何も言わないってことは、心配ないってことだろ?」
「おっちゃんだって、何も言わねぇしな」
何より、とラオスを指さして。
「懐かれてるもんなあ」
言いながら、腹を抱えて笑う。
ラオスとおっちゃんが、思わず顔を見合わせる。
「…そっくりじゃよ」
ペッカじいちゃんが、
懐から光るきのこを取り出す。
ラオスが止める間もなく、網に乗せる。
ジュー
香ばしい匂いが辺りを漂う。
ラオスは、浮かしかけた腰を、そっと戻した。
「…似てねえよ」
今度は、自分で酒を器に注ぎながら、おっちゃんが言う。
「似てないな…」
ラオスもぽつりとこぼす。
なぜか、大爆笑する村人たち。
「ほれ、焼けたぞい」
ペッカじいちゃんが、
焼けたきのこを二つに分け、ラオスとおっちゃんの皿に乗せる。
二人同時に口に入れようとして。
「「あづっ」」
さらに、大爆笑。
何がなんやらわからないまま、夜はお開きとなり。
ラオスは、報告書を広げる。
「さて、報告すべき事項は…」
付けられた項目は、すべて保留。
「これは、もう一人必要だな…それには」
さらさらと、何かを書きつける。
月明かりが雲に隠れ、
その表情は、うかがい知ることができない。




