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邪竜様の生贄花嫁~巻き込み事故で異世界召喚された私が最愛の番と呼ばれるまで~  作者: 天希莉緒
第一章

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3.邪竜登場、口が悪い

「私に死ねってこと!? いくらなんでも理不尽……!」


「何を言う。聖女を害そうとしたお前が、邪竜に喰われることで我がアスダールの役に立つのだ。罪人の分際で身に余る名誉というもの。感謝するのだな」


 ラスティン国王が冷たく言い放つ。


「連れていけ。花嫁としての準備が整い次第、死の森へ送りこめ」


「だからそれ花嫁って言わない! 待って、待ってくださいってば!」


 喚いてみたけど、私の話を聞いてくれる人は、もう誰もいなかった。

 ……いつも、こうだ。私の話なんて、誰も耳を貸してくれない。


 連れ出される私を、五月女さんは黙って見ているだけだった。

 ラスティン国王に寄り添い、嘲るような薄ら笑いさえ浮かべて。



  ♦ ♦ ♦ ♦ ♦



 そこからの流れは実にスピーディーだった。

 いかにも花嫁風の白いドレスに着替えさせられた私は、手足を拘束され、扉に鍵のついた馬車に放り込まれた。

 水くらいしか与えてもらえず、馬車に揺られること数日。

 満足に体を動かすこともできない状況の中で、私はひたすら今までの人生を反芻していた。


(ああ、ろくな人生じゃなかった……)


 家族とは縁が薄いし、就職したらブラック企業だったし。

 最後は異世界で竜の生贄って。いや、何度考えても最後がわけわからなすぎ……。


 私を乗せて、馬車は人気のない景色を進んでいく。

 誰からも話しかけられない。荷物と同じだ。

 私のことを誰も人間扱いしていない。花嫁なんて、方便にもほどがある。


 やがて馬車から降ろされたら、薄暗い山の中だった。

 男たちが担ぐ輿に乗せられ、さらに奥深くへと運ばれる。



(ここが、死の森……)

 

 森といっても、見渡すかぎり緑はない。

 木々は立ち枯れ、白骨のような枝を曇天に向かって突き出している。

 草は萎れて変色し、乾いた空気の中で項垂れていた。

 生き物の気配が感じられない。花なんて、一輪も見当たらない。まさに『死の森』という言葉がぴったりだ。


 そんなおどろおどろしい空間に、広いステージみたいな石の台座があった。

 円形のステージの中央には、太い石柱が据えられている。

 床面のところどころに走る溝。……いや、あれは人工的に造られた溝じゃない。石の台座に深い傷が入っているのだ。


(まさかアレ、(ドラゴン)の爪あと!?)


 だとしたら、すごい大きさ。恐竜サイズだ。


「恨むなよ、花嫁様」

「お前の命で邪竜様を鎮めてくれ……!」


 念仏を唱えるかのごとく言いながら、男たちが私の体を石柱に縛りつける。

 ただでさえ薄暗い森の陽射しが、急に翳った。


(……!?)


 何か、いる。

 上空に、とても巨大な何かが。

 ゴウッと風が唸り、私以外の人間の体は空き缶が転がるみたいに地面の上を滑っていった。


「うわあっ」

「お、お許しを、邪竜様!!」


 男たちが泣きわめきながら走りだす。


「待って、置いていかないで!」


 石柱に縛られ動けない私の叫びは、耳をつんざく大音響に掻き消された。恐竜映画で肉食恐竜が鳴くときの、あの音だ。

 ほうほうのていで逃げていく男たち。

 強い風が吹き荒れ、周囲の木々が折れそうなくらいに激しく揺れる。


 雷鳴のような音が轟いた。

 地面が揺らぐほどの重たい衝撃とともに、巨大な生物が石のステージの上に降り立った。

 石のステージの上で、私は、初めて遭遇する巨大生物と相対していた。


 こちらを見下ろす、暗い光を宿した宝石のような紫色の瞳。

 鉤爪のついた大きく太い足。

 黒と金の混じる(たてがみ)

 黒曜石を思わせる鱗に覆われた躰。その背中からは、視界を覆うほどの巨大な翼が伸びている。

 

(これが、邪竜……)


 悲鳴をあげようにも、声も出てこない。

 黒いドラゴンのほうも、鳴き声を発するでもなく、じっと私を凝視しているようだ。

 

 ドラゴンが大きな頭を上げた。天に向かって息を吐く。

 ゴウッと風が鳴り、木立がまた大きく揺れた。


(ああ、せめて苦しまずに死にたい……)


 恐怖で気絶しそうだ。

 そのとき、頭の中に直接、誰かの声が流れ込んできた。


「お前、あれか。俺の餌として連れてこられたのか」


「……へ?」

 

 いま、誰に話しかけられたの?


「お前に言ってんだよ、人間の女。びびって口もきけねえか」


 見上げれば、ギラギラ輝く大きな二つの瞳とマトモに視線がかち合ってしまう。

 やっぱり……目の前にいる邪竜の声だ!

 あれ? ドラゴンって言葉が通じるんだろうか。

 だったらちょっと交渉してみようかな、なんて思った私は、既に恐怖で壊れてたんだろう。


「あ、あの……私、邪竜様の花嫁ってことなので」


「花嫁?」


「あっ、なんでもないです! 生贄でいいです! あの、あの、で、できるだけ痛みがすくない食べ方をしていただけますでしょうか? ど、どうか、ご検討くださいませっ」


 クレーム処理みたいな口調で噛みまくりながら言う。

 黒い(ドラゴン)が、妙に人間くさい仕草で首を左右に振った。


「食わねえよ、ヒトの肉なんか。勘弁しろよ、何回目だよ。あー、めんどくせえ」


「めんどくせえ……?」


 邪竜様、人間を食べないの?

 聞いてた話と違いますよ?

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