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邪竜様の生贄花嫁~巻き込み事故で異世界召喚された私が最愛の番と呼ばれるまで~  作者: 天希莉緒
第一章

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1.巻き込まれて異世界

 なに? 

 目の前に広がる、この異様な光景は。

 

「せ……成功だ! 召喚が成功した!」

「聖女様の降臨だ!!」

「これで我々は助かるぞ!!」


 沸きあがる歓声。

 冷たい大理石の床に茫然とへたりこんでいる私の周囲を、遠巻きに大勢の人が取り囲んでいる。


 しかもみなさん、なんだか変な格好してますけど。

 白いトーガみたいな服に長い杖を持ったおじさん。

 騎士みたいな格好の男性たち……え、コスプレ? しかも金髪多め、ていうか外国人ばかり。


「召喚? 聖女? なんのイベント……いや、これ現実?」


 呟く私のすぐ隣で、


「痛ぁーい! どこよ、ここ!?」


 キレぎみの喚き声がした。

 くすみピンクの膝丈ワンピースを着た若い女性が、腰を摩りながら盛大に顔をしかめている。

 同じ会社の後輩・五月女さおとめみりあさんだった。


 さっきまで私は東京の本社ビルのエレべーターホールにいて、この五歳年下の後輩と話してたはず。話してたっていうか、若干揉めてはいたんだけど、それはもう、どうでもいい。


 なぜ私は今、見たこともない場所で尻餅をついてるんでしょう?

 薄暗い神殿みたいな空間。ドーム型の高い天井。

 床には不思議な模様の円陣が描かれ、その中央に私と五月女さんが座り込む格好だ。

 まったく状況が把握できない。


 ギャラリーの中から白く長い髭をたくわえた老人が進み出た。

 私と五月女さんの前まで来ると、恭しく膝を折る。


「アスダール王国へようこそ、聖女様」


 明らかに西洋人の顔立ちのお爺さんの言葉、日本語じゃないのに理解できるのが不思議だ。

 けど、問題はそこじゃない。


「は? 何言ってんの、おっさん」


 ゆるふわな可愛い外見にそぐわない喧嘩腰で、五月女さんが問うた。

 面食らったように眉を上げ、髭の老人はますます頭を低くする。


「驚かれるのも無理はございません。聖女様には天を渡り、はるばる我々のもとへ来ていただいたのですから。私は神官長ヘルムート。聖女様、召喚の儀にお応えいただき、誠に有難うございます」


「召喚の儀?」


「さようでございます。我々をお救いください、聖女様。アスダールはもう長いこと、邪悪な竜の呪いの下で苦しんでおります。かの者に対抗できるのは、天よりまいられし聖女様の祈りだけなのです」


 邪悪な竜? 呪い? 

 アスダール王国って聞いたこともない国だし、召喚の儀、って?

 円陣の外の人々の不自然な笑顔に、ぞっと鳥肌が立った。

 みんな、何を期待しているの……?

 

「ばっかばかしい、帰る! みりあのバッグ汚れちゃったから、あとで弁償してもらうからね!」 


 五月女さんが自分のブランドバッグを掴んで勢いよく立ち上がった。

 彼女の一人称は「みりあ」、自分の名前だ。


「五月女さん、今そういう場合じゃなさそう……」  


「あー! イヤリングも片方ないじゃない! どうしてくれるのよ、あれ高かったのにー!」


「そんなもの、これからいくらでも与えてやる。そなたが真の聖女であれば、な」


 そんな言葉とともに、若い男性が神官長の前に出た。

 二十代後半くらいかな? 背の高い、金色の髪の美青年だ。

 いかにも王子様な感じの軍服風デザインの衣装に、白いマント。服のあちこちに豪華な装飾が光る。


「余はアスダール国王ラスティンだ。そなたたち、まずは話を聞け」


 王子様どころか王様だった!


 さて。若き国王ラスティンと、老神官ヘルムートは、私と五月女さんに向けてとくとくと説明した。

 彼らの話を意訳すると、ここはどうやら『異世界』らしい。

 世の中を動かしてるのは、科学じゃなく魔法で。

 きわめつけに、人間を食糧とするモンスター、(ドラゴン)が存在してるっていうんだから。


ドラゴン⁉」


「そうだ。我らアスダール王国の人間は二百年の長きにわたり、邪悪な竜の呪いに苦しめられている」


 邪悪な竜、略して邪竜は、国の外れに位置する広大な荒地――通称「死の森」に棲んでいる。

 神官たちが魔法で結界を張り、森に閉じ込めてはいるものの、邪竜は呪いの瘴気を吐きつづけているため、アスダール王国の人々は、たいへん困っているのだそうだ。


 人々を守るべく、王室は邪竜に貢物を捧げ続け、呪いの拡大を防いできた。

 だけど、ここにきて一念発起、国じゅうの魔術者を集めて「聖女」を呼び寄せる術を行なった。

 何百年も前の話だけど、異世界から召喚した聖女に祈りを捧げてもらったら、邪竜が嘘みたいにおとなしくなったらしい。

 そのうえ国も栄えて良いことづくめだったので、当時の国王は聖女を妃に迎えて大切にしたけれど、彼女の死後は、またドラゴンが姿を現し、討伐もできないまま現在に至る。

 聖女の奇跡よ再び、ということで召喚されたのが――私と五月女さんだった、らしいんだけど。

 

 ラスティン国王が、神官長を見遣って言った。


「しかしヘルムート、聖女は一人ときまっているのではないか?」


 私と五月女さん、二人のうち一人は巻き込み事故に遭っちゃったってこと?

 いや、そもそも私たちのどちらかが聖女って――そんなことある? 私たちは二人とも、東京で働く普通の会社員なんだけど。


「さようでございます、国王陛下。魔法陣の中に聖女様が二人同時に現れたなど聞いたことがございませぬ。おお、そういえば聖女様なら、お体のいずこかに御印みしるしがあるという説もございます。失礼ながら、あらためさせていただいてはいかがでしょう」


 ヘルムートさん、「あらためさせていただく」とかサラッと言ってるけど、体を見せろってこと? 

 嫌だ、そんなの。だいたい御印ってなに? 

 そんなものないよ、少なくとも私には。


「ジャスティン、そなたはどう思う? 我が弟ながら、そなたの博識は神官たちにも引けをとらぬ。意見を述べよ」


 国王に話しかけられ、近くにいた若い男性――どうやら国王の弟のようだ――が遠慮がちに口をひらいた。


「おそれながら申し上げます。聖女様の御印は最初からあるとは限りません。まずはお二人とも宮殿にてお休みいただき、のちに適性試験を……」


 彼らの会話を遮って、私の隣にいた五月女さんが右手を挙げた。


「あの! みりあが聖女だと思います!」


 五月女さんの横顔は、自信に満ち溢れていた。


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