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第九話  目標がある亀は兎をも超える。

森を抜け、また腐敗臭と屍の道を行く。銀時がいるから少しは気が楽だ。そこから1週間、バルム王国が見えてきた。ルー王国ほどの高さはないが壁で国土を覆っている。



壁に近づいた。近くで見ると壁には至る所に穴があいていた。人魔大戦の影響だろう。


「ここもまた、ひどいな…」


「そうか。人魔大戦にしてはマシな方だぞ。形が残らなくなるまで魔族の侵攻を受ける国がいくつもあったぞ。」


形が残り、故郷と呼べる所が残るだけマシなのか。でも、つらいことには変わりない。


壁に更に壁に近づくと焦げ臭さと血の匂いが鼻を埋める。どうやら、屍を一箇所にまとめて山積みにし、燃やしているようだ。


「復興のためにはまず死体の処理からだな。過去を断ち切るためにも必要なことだろう。」


銀時が冷たくも真っ当な事をいう。確かに、屍をそのままにしておくのは良くない。


だけど…


「なんか、言って良いのか分からないけど少なくない…?その屍の数…」


「何を言っておる。これだけ残ったのだ!バルム王国は『屍魔』ネクロ=リリエとの戦場だぞ!?」


ネクロ=リリエ…?聞いたことがない。


「まぁ、知らなくて当然か。魔王軍には魔王直属の従魔がおる。そやつはその一角だ。国が形を留めているのも奇跡であるぞ。」


とにかく強いやつだと分かった。人類の抵抗を称賛すべきなのだろう。


「おい、お前、旅の者か?」


中年のおっさんが話しかけてきた。まあ、答えないわけにもいかないし、素直に答えよう。


「そうです。」


「そうか、もう世の中は旅をできるほどに復興しているのか。オレらはこれから冬を迎えるというのに…。」


聞いたことがある。バルム王国は最北端の土地。冬は大雪が降ると。そして、復興が進んでない国。餓死してしまう者が大勢出てしまうだろう。


「で、なんだ?お前はオレ等を笑いに来たのか?屍の王に侵攻され、生き残ったのは数百人。そんなところに観光しに来る目的は何だ?オレは今仕事がないし、人の肉を食って命をつないでいるのに!!お前はなんでのんきに旅ができるんだよ!」


俺は胸ぐらを掴まれ、揺らされた。俺は何も言わない。何もしない。彼の苦悩の一部を受け止めるのが俺にできるただ一つのことだ。男は俺の荷物見た。旅には見合わない大きな荷物だ。


「お前…ハッハハ…。オレはつくづく…。すまんな。お前は何も悪くないのに。」



男は俺に頭を下げたと屍を火にかけに戻った。戦後の世界は何も変わらない。どこも一緒だ。


「何をしている。早く行くぞ。サント。」


「あ、うん。」


俺は人魔大戦など間違っていると心から思った。猶予は十四年。俺がこの世界を変えなければならない。



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