第八話 コショクは心身の健康に悪い。
ユグドラ大森林の三分の二を踏破した。最近は話し相手もいるので足取りが軽い。銀時とはとりとめのない話をしている。どうでもいい日常のこと。銀時には俺の経緯などを一通り話した。銀時は人魔大戦で魔素の流れが乱れたことによって世界の歪みができたのではと考察していた。
というか…魔素だと!?この世界に魔法が!ってよく考えたら、見たことあったな。色んな場面で。でも、魔法だ!浪漫だ!
「銀時、俺は魔法を使えるのか?」
「なんだ、サント。魔法を使いたいのか?戦うのか?」
「そういうわけじゃないけど…」
「まぁ、良い。魔法は適正が無ければ使えないし。現実と自分の精神世界をつなげる門が使えなければ魔法は使えぬ。」
「その適性ってわかるの?」
「それを吾輩が見なければならぬか…?知りたいなら調べるだけはしてやる。」
さて、俺にはどんな適正が…。やっぱり、火…?いや、水…?それとも風…?
「そこにうつ伏せになれ。」
銀時に言われるがままうつ伏せになる。銀時は俺の背中に乗った。すると、俺の背中をフミフミし始めた。何だこれ…気持ち良い…。これが俗に言うパンこね職人。三分くらいフミフミされた。
「わかったぞ。サントの適性は影だ。」
か、影…。王道異世界ファンタジーからカテゴリーエラーしてないか…?
「その…影魔法はどんな事ができるの?」
「簡単な話、影に潜れるんだよ。」
「影に潜れる!?」
「そんな便利なものではないぞ。影の中に光も酸素もない。言ってしまえば何もない。それをどうこうできる者は吾輩は知らん。」
思っていたのと違う…。
「あと、最上位の影魔法に『陽炎』という魔法があったな。これは二百年前の勇者が魔王軍を一人で殲滅した時に用いた魔法だ。まぁ、やつが特殊だったのだろう。影魔法は基本、攻撃できないからな。」
二百年前…?さすが神だな。長生きしている。それよりも…
「魔王軍との戦争はそんな前からしているのか?」
「もちろんだ。二千年前から起こっておる。その度、休戦などを繰り返して現代まで続いている。一番長い戦争の期間は五百年間。それを一時、終戦に持ち込んだのが、さっき言った陽炎の勇者だ。この戦争は史上最悪の戦争として白夜戦争とも呼ばれている。日が落ちてもずっと戦っていたからな。」
「そっか…。」
「そろそろ、日も落ちる。飯だ。ガグルの干し肉をよこせ。」
「わかったよ。」
こんな話をしてからどこからその食欲が湧いてくるのやら。




