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第七話 旅は道連れって言葉があるけど連れるのは人だけじゃない時がある。

ユグドラ大森林に着いた。復路の事も考えるとギリギリだ。ユグドラ大森林には巨人の大樹の群生地で人よりもはるかに高い木が生い茂る。


俺は森林の三分の一ほど進んだ辺りで日もくれ野宿の準備をする。火を焚き、湯を沸かす。水がグツグツと音を出す。ふと、俺の荷物を見ると黒猫が香箱座りをして寝ていた。艶のある黒い毛が美しい。本当に野良猫だろうか。俺はその猫を触ろうとする。


『不敬であるぞ。人間よ。』


「うわ!」


脳に直接、声が響いた。というよりも猫が喋った。しかし、触ろうとした勢いが残り結局頭を撫でてしまった。言っている割には気持ちよさそうに首をのばす。 


「あの…」


『なんだ?もう終わりか?』


いやいや…。不敬なのでは…?


『もう良い。少し食べ物を分けてくれぬか?人魔大戦の影響で森の実りがないのだ。』


図々しいな。まぁ、ガグルからの保存食はそれなりにあるからいいか。俺は干し肉を手でさいてあげた。その黒猫は匂いを嗅いでから肉を口に入れた。


「この肉はガグルの匂いがするな。」


こいつは…変なやつだ。匂いで誰か分かるなんて…


「また、無礼なことを考えておるな。猫の嗅覚を甘く見るなよ。」


いや…そういうことじゃないだけどな。


「まだ、腑に落ちぬか。察しの悪い。ガグルが双剣のマットゥーニを討ち取ったのはこの大森林の深海だぞ。ここに住む吾輩が知らないわけがないだろう。」


つまり、恩人にあたるのか…?


「吾輩もヤツに加護を与えようと思っていたのだが…戦神先を越されたな。」


この猫は何を…?てか、もう普通に話してるし。猫は毛づくろいを始めた。行動のマイペースさは猫なんだよな。


「人間よ、肉の礼をせねばな。この猫神、どーんと言ってみよ。」


猫神…?神様!?


「優柔不断だな。なにもでないとは。よかろう、吾輩が従魔なってやる。旅路の手伝いで礼を尽くすとしよう。」


勝手に…もう…。食料は充分以上にあるから問題はないかもな。


「おい、人間。最初の仕事だ。吾輩に名前をつけよ。」


「名前って…猫神じゃないの?」


「何を言っておる。猫神は肩書にすぎん。吾輩は猫である。名前はまだない、だ。」


夏目漱石!?この猫、異世界から来たのか…?


「あの…」


「さっさとつけんか!ときは金なりだぞ!」


「って言われても…。そう言えば、転生前に飼ってた猫の名前…あ!」


銀時(ギンジ)。」


「あ?」


「銀時。」


「は…?」


「だから、銀時だよ!お前の名前は!銀時だぁ~!!!」


銀時はなんだとという顔をしていたが無視である。無茶振りをしたほうが悪い。

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