第三十二話 ネコネコワンダーランド
この痛みはいつまで続くのか。
てか、深淵主とやらはずっと俺の相手をしていて良いのか?
革命派、国王派、俺の相手を同時にしていることになるな。
「ハッ…ハッハ…、お、おまえか何人いるのだよ?」
深淵主は首を傾げた。
「何をいまさら。ボクは深淵主なんだ。悪魔なんだよ。魂さえあればどんな体にでも受肉できるよ?」
素直に答えてくれた。つまり、深淵主は三人以上存在している。
「じゃ、続けるよ。荷物はどこ?」
荷物はもう計画に必要ないと言っておきながら、荷物はどこかと問い続ける。俺への嫌がらせだな。さすが、悪魔だ。
そして、俺は意識を失った。激痛と共に…
ーーあなたには才能がある。きっと『剣聖』にだって…
ーー期待外れだ。お前に手を焼いた私が間違っていた。
ーー魔族…魔族…。殺される…嫌だ…死にたくない…
これもまたあの記憶なのか。情景で見えてたものが、言葉を切り取って部分的にしか見えなくなってきた。
そして、『魔王の導』が痛み出す。俺は意識を取り戻した。
「お、やぁ♪続けようか♪」
ずっとこれの繰り返しだ。意識があると魔力を吸われ、意識がないと記憶に精神を削られる。深淵主はたまに消える。俺の安らぎはその時だけだ。
ー銀時はサントの指示通り、エルの元へ向かう。道中、人々の動きが多かった。農具や瓦礫を漁って出てきたものを持っていた。
「荷物がまもなく届くみたいだ。倉庫に行くぞ。」
銀時は争いが起きると悟る。
「おい!西側から騎士団が倉庫に向かっているぞ!」
「至急、フォーゼ様に報告だ。」
銀時はため息をつく。そのため息は誰も気にしない。瓦礫の街を歩く野良猫になんて誰も気に留めないからだ。
銀時は東側に来た時に最初に訪れた地下への扉に着く。扉は外側からは開けられなくなっていた。銀時はそれをものともせず、分厚い扉をすり抜けた。
中に入るとうずくまっていた人々は誰もいなかった。通路は余裕を持って通れた。
通路をさらに進む。奥の扉が見えてきた。
奥の扉も厳重に閉められていた。この扉もまた銀時はいとも簡単にすり抜ける。
「お久しぶりですね。大精霊様。」
エルは銀時が来ると分かっていたように挨拶をした。銀時は少し驚いた。奥にはモズもいた。
「何か分かりましたか。」
銀時は正体がわれているならばと思い、念話を始める。
『黒幕は魔族だ。』
エルは突然の念話に驚く。
「大精霊様、お話できるのですか…」
『吾輩は最古の精霊の一体だ。自由意志を持っていて当然だ。時間はあまりない。手短に話すぞ。』
銀時は今までのことを話す。
フォーゼと会ったこと。
フォーゼが深淵主という悪魔と繋がっていたこと。
サントが捕まったこと。
フォーゼの倉庫襲撃計画の裏のこと。
全て話した。
「深淵主ですか…元五大魔人ですね。こんな大物がなぜここに。」
エルは黙り込んで思考する。




