第二十九話 白に染まる髪の毛
「やぁ〜♪起きた?」
深淵主は俺の周りをウロウロする。俺は椅子に縛り付けられ、身動きを封じられている。
「フィオラさんのフリはやめたのか?」
俺は紫色の長い髪の毛を見て言った。
「バレてたか〜。前の宿主が壊れちゃってね、丈夫そうなこの子にしたわけ。」
深淵主はフィオラさんの姿となった。
宿主…?
フィオラさんの肉体を奪ったのか…?
「で、『魔王の導』をつけられているから、あまり乱暴したくないんだけど。素直に答えてくれるかな?」
フィオラの姿から紫色の長い髪の毛の姿に戻った。
「荷物はどこ?」
深淵主は俺の顔を覗き込み圧をかける。
『収納空間』にありますなんって言えないな。
「ギメイが隠したよ。」
「は〜い〜♪うそ〜♪」
俺は全身に電気が走ったような激痛を感じた。
「乱暴はしないとは言ったけど傷つけないとは言ってないからね。で、荷物は?」
「だから、ギメイが隠した。」
俺は再び、あの激痛を浴びた。
その質問と激痛は繰り返された。何回、やられたかはもう覚えていない。
「チッ。やっぱり、偽装するしかないか。キミの口の硬さにはお手上げだね。」
目に少しかかった髪が白くなっていたのが分かった。
ー王の隠れ家。
エルクと王はここで深淵主を待った。
「やぁ〜!」
エルクと王は恭しく礼をした。
「荷物の届く日にちがわかったよ。」
「本当ですか!?」
王とエルクは歓喜した。
「革命派は倉庫の襲撃を企てる。荷物が来ると分かれば、必ずその日を狙ってくるよ。」
「わかっております。対策は万全です。」
深淵主は満足そうに頷いた。
「して、荷物はいつ届くのかね?確か、ルー王国からの使者が来て、渡せないと申しておったと聞いておるが…」
「それは革命派のスパイだよ。情報を得るための。荷物は四日後だよ。」
「なるほど!それで、あれほどみすぼらしい姿で…。四日後ですね。万全の準備をしておきます。」
深淵主は二人を騙せたことを安堵する。サント以外もルー王国の者がこの国にいたのか。サントが言っていたギメイというやつか。
「うん、じゃ、頑張ってね。」
そう言って、深淵主は闇のなかに消えた。
そして、深淵主は革命派にも『四日後、荷物、届く』というメッセージはフォーゼに伝えた。準備は整った。魔法でなんとか偽物の荷物も用意した。運ばせるのは前の宿主を使おう。
深淵主の不敵な笑い声が虚無に響く。




