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第二話 権力者に呼ばれる時はろくなことがないよな!?

目を覚ましたのは、それからだいぶ後のことだった。


聞けば、一年後。 大国ルー王国と魔王との間で協定が結ばれ、十五年という期限付きで戦争は休戦となったという。


人魔大戦後、俺は勇者ガグルの厚意で野戦病院から、ルー王国国立病院へと移送された。 ルー王国は三重の巨大な壁に囲まれ、「最も安全な国」と呼ばれているらしい。


ガグル一行は帰国後、凱旋を果たし、国中を巻き込んで大宴会を開いたそうだ。


……まあ、ベッドの上で窓の外を眺めている俺には、関係ない話だが。

べ、別に…… 全然、羨ましくなんてないんだからね……!


「何を一人でやってるんだよ?」


ノックもなしに病室へ入ってきたのは、勇者ガグルだった。 ガグルのおかげで俺は生きているし、良い病院にもいられている。 だから文句は言わない。


「やあ、ガグル。英雄さんは今日も忙しそうだね」


「おう、サント。ほんと疲れたよ。朝から晩まで予定ぎっしりだ」


本当に、こいつが勇者なのかと疑いたくなるほど、俺の前では自然体だ。 だが、戦場に立つと別人になる。 その切り替えができるからこそ、勇者なのだろう。


「それでな、サント。どっかから情報が漏れたらしくてさ。お前が異国の者だって、王に知られちまった」


……どっかから、ね。 それ、情報源はお前以外にいないだろ。


「そこで王がお前に会いたいって言ってる。拝謁の間に招待だ。行くか?」


王に!?

俺の自由な異世界ライフ、早くも終了のお知らせでは?

行かなきゃ極刑、とか普通にありそうだしな。


「……わかったよ」


俺は萎れた青菜みたいな返事をした。



--- 拝謁の間。 限られた者しか立ち入れない神聖な空間だ。 段差の上に玉座。 広大な空間。 赤い絨毯と、壁際に並ぶ兵士たち。


ガグルは「何かあったら王でも斬るからな」と真顔で言ってきた。 頼もしいような、怖いような。


「よくぞ参った。勇者ガグル、そして異国人サント・アラミチよ」


王は威厳ある声でそう告げた。


「勇者ガグルよ。双剣のマットゥーニ討伐、見事である」


ガグルはひれ伏す。 俺も慌てて真似をする。


「異国人サントよ。余は異国の者と会うのは初めてだ。どう扱うかは、お主次第としよう。だが――ガグルが認めた者なら、文句はない」


……助かった。

ここで「怪しい者は極刑」とか言われたら、詰んでいた。


「して、お主は行く宛もないのだろう。余が支援を与えよう。望みを申せ」


衣・食・住。 それと仕事。 だが、俺はこの世界を見て思ってしまった。 戦争の爪痕が、あまりにも深い。 復興には物資が要る。 物資が滞れば、人は生きられない。


「俺は、仕事がほしいです。戦後、この世界では流通が滞っています。なら――俺の足で、物資を運びたい」


王は目を見開いた。


「なんと……立派な心掛けよ」


王は一人の男を呼び寄せた。


「この者の名はマクロサー。戦後配給の全権を預けている。以後は彼に従え。マクロサー任せたぞ。」


「ハッ!」


マクロサーはそう答えた。

こうして俺は、戦後流通配給物資拠点へと連れ出された。

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