第十三話 上に立つ者が弱い所を見せると親近感が湧くよな!?
俺は咀嚼音と共に周りを見渡した。皿はまたたく間に空になり、寸胴の前に行列ができている。顔は暗いが彼らは確実に生きようとしている。
『銀時、満足か?』
『ああ。しばらくは大丈夫だろうな。』
銀時が肩に乗る。俺も食事の席についた。銀時が俺に早く食えと圧をかける。食べてる人の顔を見れば、この料理がうまいっていうのは分かるんだけどな…。
「隣、いいか?」
王よ…とアルが引き留めようとするが、自重した。
「あ、はい。」
「私は書状を大陸全土に送り続けた。同じ国にも何度も送った。そして、ようやく…ようやく…。私の判断は間違っていなかったと民の顔を見ればわかる。今は我武者羅に生きてほしい。」
近く人たちが自然と王の言葉に耳を傾ける。王は一度、銀時特製のスープを飲む。
「うまいな。お前もお前の従魔も不思議な者よな。バルム王国は軍事国家でもある。先王である私の父は王として先陣を切った。ネクロ=リリエに勝ち目なんてなかったであろう。父が戦死し、あとを継ぐ者が私以外いなかったから私が王になってしまった。あの時、父ではなく私が戦場に入れば、戦後の生活は変わっていたのかもしらぬ。」
俺も聞いていた人も顔を下に向ける。演説の時と言っていることは真逆だが、これが王の本音だろう。
「だが。今の王は私だ。私にできることをやるだけだ。皆の力を貸してほしい。」
歓声が上がる。王様万歳が倉庫が沸く。
『コヤツはたまたま王になった器ではないな。』
『そうだね。』
俺と銀時の中でこの国は強くなるという共通認識が生まれた。少したち、歓声がやむ。
「今日から、身分など関係ない!無礼講である。バルムの民よ!共に地獄を歩もうぞ!」
先ほど以上の歓声だ。俺は思い切ったねと思った。身分をなくすのは勇気がいるから。そして、食事が再開される。咀嚼音、皿とスプーンが当たる音がさらに大きくなる。この国はもう下を向く者などいなかった。
宴の夜が明けた。俺は帰路のこともあるのでバルムをたつことにした。穴の空いた壁を前に俺は立ち止まる。
「使者殿。いや、サント様。」
アルが俺を呼び止めた。後ろに王もいた。
「サント、この恩には必ず報いる。」
恩…?そんな大層なことをしたかな?
「きっと、お前は現物など興味を示すまい。まあ、与えられる現物もないのだが。」
「王よ…」
アルがまたも何かを言いたそうにしたが自重した。立派な執事だよ。
「サント、バルム王国はお前がお前である限り、協力的であることを誓おう。復興したら、また来い。雪国ならではのものをたくさん見せてやる。」
「分かったよ。」
俺はバルム王と手を握りあった。ここに約束が結ばれたのである。




