第十話 夢を語れ、理想を吐き出せ、それが生きるということだ。
壁の中に入った。ここが入り口なのかは分からない。そこら中に穴があるから。ここまでめちゃくちゃにされたら十五年の猶予では足りないだろう。
「よくぞ、おいでなさりました。ルー王国の使者殿。私はバルム王の執事のアルでございます。遠方からわざわざありがとうございます。早速ですが、倉庫にご案内致します。王をお待ちです。」
町中はグルマよりも酷かった。瓦礫しかなかった。人が暮らしている様子もなかった。
人がチラホラ見えてきた。その人たちが暮らす家は骨組みだけ残った家に大きな布をかけているだけの家だ。
『サントよ、この国の者はそのうち自害を選びそうだ。この顔は見たことある…。そういう奴らの顔だ。』
いきなり、脳に話しかけるのやめてよ。びっくりする。人目につくから気を使ってくれたのだろうけど。
『そっか…』
俺にはこの人たちを励ます方法を知らない。部外者が何を言っても、変わらないだろう。
「使者殿。ここが倉庫でございます。」
なんとか、広い建物を用意した感じだ。ツギハギで今にも崩れそうだ。
「今から、圧縮された荷物を取り出します。荷物を置いてください。」
俺は倉庫の中央に荷物を置いた。アルが荷物に寄る。ポケットからルー王国からの書状を取り出す。
「ちちんぷいぷい、開けゴマ!」
急にどうした…?おかしくなってしまったのか…?
ドン!ドサァ〜。
物資があふれ出し、倉庫の三分の二を埋める。食料、衣服、生活雑貨に分類され、綺麗に並べられている。
「これは…」
アルの口からこぼれた。俺はふざけているのかと思ったがちゃんとした呪文だったのだろう。
「アルよ。何事だ?」
奥の扉があき、若い男が入ってきた。身なりはみすぼらしいが、振る舞いに気品があった。
「王よ、ご覧ください!」
「なんと…。」
これだけの食料があれば、冬を越せるだろう。あとは、銀時が言っていた良くない顔だ。なんとか、復興に向けて動き始めさせなければ。
「お前が、ルー王国の使者か。」
「はい。」
「大義である。ご苦労であった。」
俺はありがとうございますと素直に受け取った。
「部外者ではありますが、少し口出ししてもよろしいでしょうか?」
「き、貴様…ぶれ…」
「良い。アルよ。今の私には冠すらないのだから。して、何だ?」
「この国の者は生きる希望を見いだせていません。生き残ってしまったことを後悔しているようにも見えます。このままでは復興どころではありません!」
「で、何が言いたい?」
「提案があります。宴を開きませんか?俺が荷物を届け、国民に希望を抱かせるのです。」
銀時は俺の方に頭と足を乗せ、上手く乗っていた。耳元で銀時の欠伸が聞こえた。




