03 ゆうやの記憶
みさきちゃんの家で暮らすようになってから、1週間くらいたった。初日はぎこちなかった会話も少しずつできるようになってきた。
「おはよう」
「もう、おはようの時間じゃないですよ。」
「たしかに、じゃ僕バイト行ってくるね。」
「いってらっしゃい。」
ちょっと敬語が抜けてきたり、ツッコミを入れてきたり、だんだん仲良くなれてる気がして嬉しかった。
(なんだろう。もしかしたら好きになってきたのかもしれない。いやいや、そんなはずはない。だって俺は、、)
ハッ!あれはしずく?
「しずく!」と声をかけようとした時、しずくが男と手を繋いでいるのが目に入った。あぁ、、俺振られたんだった。それにしても男作るの早すぎだろ。しかも、あんなチャラそうな男。元々しずくだって浮気してたんだろ。なんか、また悲しくなってきた。もう一度話したい。話して理由を伝えたい。もう一回付き合いたい。
ー3年前ー
「しずくのことが好き。付き合ってください。」
「いいよ。」
「本当に!? やったー!」
あの時は嬉しくて嬉しくてたまらなかった。そして、付き合いだしてから1年。しずくの家で同棲することになった。普通のカップルにしては早いけど俺たちは高校からの仲だから別に早い気なんてしてなかった。はじめは2人で一緒に料理したり、お風呂に入ったり、寝たり、カップルらしいことをたくさんした。もちろん、ハグだってキスだってそれ以上のことだってした。
でも、だんだんしずくがそれを避けるようになってきた。はじめは、オブラートに包んでいたがどんどんエスカレートしていった。「やだ」とか、「無理」とか普通に言ってきた。しまいには、しずくが自分用のベッドを買った。そんなことをされて傷つかないわけがない。それから俺は、しずくの気を引こうとしてたくさん浮気をしてしまった。欲求不満でしたこともあったけど、1番はしずくに嫉妬してもらいたかった。でも、しずくは俺がしずくに対する恋愛感情がなくなったと思ってしまった。まぁしずくと付き合う前、俺はたくさんの女と遊んできた、そう思われるのも無理はない。
今思えば、途中からしずくは俺に対する恋愛感情なんて無かったんだ。しょうがなくご飯を作ったり、一緒に学校に行ったりしてたんだ。なんか、俺が惨めに見えてきた。はじめから未練たらたらなのは俺だけなんだ。こんな記憶とっとと忘れたい。。でも、好きになった女の記憶ってずっと頭に残るんだよなぁ。
はぁ、少しでも気持ち切り替えて、バイト、バイト。