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純血の赤ずきん  作者: 加藤 會田
Episode15_私は醜い蛹から蝶になる。
73/75

072_だからこそ、消え行く星は美しいと。

002



各童話に建てられた支部の代表……支部長達の集まりが、年に何回か、不定期に存在する。


そして、今日がその日だ。だが、会議は既に終わっていた様で。大半の支部長共は、もう席を立ち出て行った後であった。


だが、まだ席に座っている輩も居る。──支部の中で、一番指示数が多く、『最強』の二文字を飾る暴君、ヨハネとその従者(じゅうしゃ)。……そして。


第三支部支部長のヤコブと、その仲間達である。彼らは数分。席に座っての対面、無言の時を分かち合い。……時計の針が、十二時まで残り一分を切ったときであった。


腕を組み、堂々とヨハネが口を開く。


「ゴモラ……いや、”トマス”が今朝、実家に帰省していた所、屋敷が焼け焦げ死んだらしい。はは、彼処(あそこ)は呪われた一家だよ。立て続けに屋敷は燃えるやら。ゴモラの弟も、家で虐待に近い所業の末、姿を消したらしい。ああ、安心してくれ。あの一家の財産は全て徴収(ちょうしゅう)したよ。……(もっぱ)ら、小銭程度しか出て来なかったがね」


金髪の髪に、これまた美しい純血のドレスを着飾ったヨハネがそう呟けば。足と腕を組み、威圧的に「ははは!」と高らかに笑う。


その話を聞いて、目の前に座るヤコブは黙り込む。


──ヤコブ、第三支部の支部長である人物だ。茶色に近い褐色(かっしょく)肌に、白濁(はくだく)色の髪。そして、翡翠(ひすい)色の瞳を持った女である。


「おや、口が達者な(わっぱ)だ事。ふふ、言わずもがな、次は我が逝くとしよう。童話殺しとやらの情報は、もう(わか)って居ろう?ならば、容易(たやす)い。積上げるのは困難を極めるが、崩すのは至って容易(ようい)。我が、使えぬ貴様に変わり、童話殺し殿の首を、せしめて見せ様ぞ」


そうヤコブは自身気に語れば。次に、後方に居る従者(じゅうしゃ)へ「(かお)りが鈍い。新しい茶を淹れてお()れ」と呟いて。


又もや、ヨハネへ視線を向ける。……その視線は鋭い。まるで、『自分は分かっているぞ』と言わんばかりの表情だ。


だが、ヨハネから帰って来た返答は、その場に居た物すら愚か。全員の期待を裏切る様な回答であった──。


「駄目だ。童話殺しの首は、刈り取るな。あくまでも、例年通りに。”生け捕り”にして連れてこい。──そう、我らの主が告げていた」


それに、ヤコブが(ひたい)に血管を浮き彫りに。


「……。(わっぱ)(いささ)か、愚鈍(ぐどん)が過ぎるとは思わんかね?情報は出せぬわ、(あまつさ)え、生け捕りぞ。主のお言葉とて、それを鵜呑(うの)みにし、救える命を見殺しにしおうぞと。故、かの童話殺しとやら、溝鼠(ドブネズミ)が捕まらんのだよ」


その言葉に追記を入れるかの如く。ヤコブの後ろに佇む、スーツを身に(まと)い、義足を付けた老紳士(ろうしんし)、イスマエルが口を開いた。


「そうですぞ。ヤコブ殿の、言う通りでございまし。……(いささ)か、貴方様には及ばぬ立場で物申すのは失礼ですが、これはなりませぬ。貴方様は、魔女狩り専門でしょうに。我らが、童話殺しにどれだけ手を割いているか分から」

「御黙りなさい。ヨハネ様のお喋りに、口出しをするおつもりで?……風化した騎士と言い、そのオズマとか言う馬鹿に、小童のチビ。──今、茶を淹れに行った坊っちゃまの名前、何でしたか。路地裏の(ネズミ)臭いです事」


ヨハネ陣営。ヨハネの後方に立つ、美しい美貌(びぼう)を持った女が一人、そう毒舌を上辺に語り始めたのである。


目は、ヨハネ同様紅く染まり、髪は地面に着くか着かぬかの長髪。──まるで、姫の様な風貌(ふうぼう)の者であった。


彼女の名は、タダイ。第十支部の支部長であり、ヨハネの側に着いた。……言わば、ヨハネと敵対するヤコブとは敵対関係の者。


それに、ヨハネ陣営の支部長は、現在欠席している物の……あともう一人存在する。


だが、ヤコブも負けては居られない。彼女は、文句を垂れ流したタダイへ「其方(そなた)こそ、口を(つつし)め愚鈍者が」と一喝。


だが、タダイはそれを聞いても(なお)、「ふん」と息を荒らげ、ふんぞり返って居る様で。──だが、それに負けてかヤコブが席から勢い良く立ち上がり。


「──あ、あの。ヤコブ様、紅茶の銘柄(めいがら)が分からなくて……その、適当なので、すみません」


だが、それと共に、紅茶を片手に、先程茶を汲みに行っていたヤコブの従者がやって来る。が、ヤコブは彼を叱らずに。(あまつさ)え、「良くやった」と褒め称えれば。


不味い茶を一気に飲み干し、「お前らと居ると茶が不味い」と一言。次に。


「貴様らは、童話を巻き込んだ戦争でも、起こすつもりなのかね?私は全て(わか)っているぞ」

「………………………………………………………」


捨て台詞の様に吐き擦れてばそのまま、四人の従者と共に、会議室から消えて行く……。──そして、それを見送ったヨハネは。……ヤコブが居なくなった事を確認すると…………。


「っ、ふあぁ〜……ッ。俺ちゃん、もう疲れちゃったよ〜。我らが主は、遠回りが過ぎる」


体制を崩しながら、ラフにそう告げる。


その言葉を聞き、姫タダイは微笑めば。


「いいえ、ヨハネ様。我らが主は、いつも最善を尽くしてくれる筈ですの。……どれもこれも、今は良い結果が見えぬ様でも、いつかは必ず見えて来る筈です。全ては主のままに」

「……。あぁ、全ては、主のままに……っ。──どれもこれも、全て。主や、全ての民の為。……そして、我らが家族(眷属)の為に」

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