072_だからこそ、消え行く星は美しいと。
002
各童話に建てられた支部の代表……支部長達の集まりが、年に何回か、不定期に存在する。
そして、今日がその日だ。だが、会議は既に終わっていた様で。大半の支部長共は、もう席を立ち出て行った後であった。
だが、まだ席に座っている輩も居る。──支部の中で、一番指示数が多く、『最強』の二文字を飾る暴君、ヨハネとその従者。……そして。
第三支部支部長のヤコブと、その仲間達である。彼らは数分。席に座っての対面、無言の時を分かち合い。……時計の針が、十二時まで残り一分を切ったときであった。
腕を組み、堂々とヨハネが口を開く。
「ゴモラ……いや、”トマス”が今朝、実家に帰省していた所、屋敷が焼け焦げ死んだらしい。はは、彼処は呪われた一家だよ。立て続けに屋敷は燃えるやら。ゴモラの弟も、家で虐待に近い所業の末、姿を消したらしい。ああ、安心してくれ。あの一家の財産は全て徴収したよ。……専ら、小銭程度しか出て来なかったがね」
金髪の髪に、これまた美しい純血のドレスを着飾ったヨハネがそう呟けば。足と腕を組み、威圧的に「ははは!」と高らかに笑う。
その話を聞いて、目の前に座るヤコブは黙り込む。
──ヤコブ、第三支部の支部長である人物だ。茶色に近い褐色肌に、白濁色の髪。そして、翡翠色の瞳を持った女である。
「おや、口が達者な童だ事。ふふ、言わずもがな、次は我が逝くとしよう。童話殺しとやらの情報は、もう解って居ろう?ならば、容易い。積上げるのは困難を極めるが、崩すのは至って容易。我が、使えぬ貴様に変わり、童話殺し殿の首を、せしめて見せ様ぞ」
そうヤコブは自身気に語れば。次に、後方に居る従者へ「薫りが鈍い。新しい茶を淹れてお呉れ」と呟いて。
又もや、ヨハネへ視線を向ける。……その視線は鋭い。まるで、『自分は分かっているぞ』と言わんばかりの表情だ。
だが、ヨハネから帰って来た返答は、その場に居た物すら愚か。全員の期待を裏切る様な回答であった──。
「駄目だ。童話殺しの首は、刈り取るな。あくまでも、例年通りに。”生け捕り”にして連れてこい。──そう、我らの主が告げていた」
それに、ヤコブが額に血管を浮き彫りに。
「……。童、些か、愚鈍が過ぎるとは思わんかね?情報は出せぬわ、剰え、生け捕りぞ。主のお言葉とて、それを鵜呑みにし、救える命を見殺しにしおうぞと。故、かの童話殺しとやら、溝鼠が捕まらんのだよ」
その言葉に追記を入れるかの如く。ヤコブの後ろに佇む、スーツを身に纏い、義足を付けた老紳士、イスマエルが口を開いた。
「そうですぞ。ヤコブ殿の、言う通りでございまし。……些か、貴方様には及ばぬ立場で物申すのは失礼ですが、これはなりませぬ。貴方様は、魔女狩り専門でしょうに。我らが、童話殺しにどれだけ手を割いているか分から」
「御黙りなさい。ヨハネ様のお喋りに、口出しをするおつもりで?……風化した騎士と言い、そのオズマとか言う馬鹿に、小童のチビ。──今、茶を淹れに行った坊っちゃまの名前、何でしたか。路地裏の鼠臭いです事」
ヨハネ陣営。ヨハネの後方に立つ、美しい美貌を持った女が一人、そう毒舌を上辺に語り始めたのである。
目は、ヨハネ同様紅く染まり、髪は地面に着くか着かぬかの長髪。──まるで、姫の様な風貌の者であった。
彼女の名は、タダイ。第十支部の支部長であり、ヨハネの側に着いた。……言わば、ヨハネと敵対するヤコブとは敵対関係の者。
それに、ヨハネ陣営の支部長は、現在欠席している物の……あともう一人存在する。
だが、ヤコブも負けては居られない。彼女は、文句を垂れ流したタダイへ「其方こそ、口を慎め愚鈍者が」と一喝。
だが、タダイはそれを聞いても尚、「ふん」と息を荒らげ、ふんぞり返って居る様で。──だが、それに負けてかヤコブが席から勢い良く立ち上がり。
「──あ、あの。ヤコブ様、紅茶の銘柄が分からなくて……その、適当なので、すみません」
だが、それと共に、紅茶を片手に、先程茶を汲みに行っていたヤコブの従者がやって来る。が、ヤコブは彼を叱らずに。剰え、「良くやった」と褒め称えれば。
不味い茶を一気に飲み干し、「お前らと居ると茶が不味い」と一言。次に。
「貴様らは、童話を巻き込んだ戦争でも、起こすつもりなのかね?私は全て解っているぞ」
「………………………………………………………」
捨て台詞の様に吐き擦れてばそのまま、四人の従者と共に、会議室から消えて行く……。──そして、それを見送ったヨハネは。……ヤコブが居なくなった事を確認すると…………。
「っ、ふあぁ〜……ッ。俺ちゃん、もう疲れちゃったよ〜。我らが主は、遠回りが過ぎる」
体制を崩しながら、ラフにそう告げる。
その言葉を聞き、姫タダイは微笑めば。
「いいえ、ヨハネ様。我らが主は、いつも最善を尽くしてくれる筈ですの。……どれもこれも、今は良い結果が見えぬ様でも、いつかは必ず見えて来る筈です。全ては主のままに」
「……。あぁ、全ては、主のままに……っ。──どれもこれも、全て。主や、全ての民の為。……そして、我らが家族(眷属)の為に」




