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純血の赤ずきん  作者: 加藤 會田
Episode13_全てが擦れ違う
64/75

063_分かり合えないと分かっているから。

004



「ぅ゛っ、ぐげぇ〜。っぱし、飲み過ぎた。ねぇ〜ヴェルギリウス〜〜。僕の事おぶってってよぉ〜。歩くの辛い〜〜っ。ぐ、ぇーッ」


我々は家に帰れば早々(そうそう)にオズヴァルドがギブアップの音を上げる。──此処(ここ)までは、作戦通りと言った所か。次に、奴はこう言う筈。


「もう僕寝るね。お休みー。明日、僕が二日酔いになってても、ちゃんと介護(かいご)してよね?」


計画通り。先ずは、第一関門突破。先生の顔も、何件も酒場やら娼館(しょうかん)やらをハシゴしたお陰か、随分(ずいぶん)と火照っている様で。


これは、奴を殺す事も案外(あんがい)──……っ。


私は死角でこっそりと、小さな折り畳みナイフを忍ばせながら。先生としたくもない会話を交わす。だが、もうこれでそれも終わり。


この私と此奴(こいつ)との泥沼に、終止符を打つ事が出来る。(ようや)く、私は悪夢から解放される。


「……なあ、先生。今日は久々に先生達と娼館(しょうかん)やら酒場何かに行ったな。随分(ずいぶん)と楽しげに」

「ああ、そうだな。お前も、『その眼帯』を着けてから、随分(ずいぶん)と元気になった様で」


我慢(がまん)だ。今我慢(がまん)すれば、全てが上手く行く。


私は「ふう」と溜息(ためいき)を。そして、笑いながら、ゆっくりと。奴の元へと近付くのだ。手には、首を掻っ切るナイフが握られて。


『──っはー!ねえねえ、ヴェルギリウス!見て見て、一緒に(たま)にはトランプゲームでもっ』


「……そうだな。お前の言った通りだと思う。私は、この日をずっと待っていたんだから」


今日の、酒場での思い出が湧き上がって来る。久々に、少しだけ楽しいと思えた。少しだけ、奴らとも交流が深められた気がする。


『──んっ、おいヴェルギリウス。そこの酒を取ってくれ、あと、……その、ひゃぶ、ぐ』

『ひ、ひゃぶ、ぐ……?それは何ぞや……?』

『……っく、ひひひっ……?ダンテさんっ。今の声──ッ、ぶはははははははっ?!』


「眼帯如きで、随分(ずいぶん)大袈裟(おおげさ)な女だな。……それに、その眼帯……オズヴァルドだな?本当に、手癖の悪い坊主だな。教育が必要か?」


だが、それまでの事だ。此奴(こいつ)も、オズヴァルドも、私も。それだけでは拭いきれない罪を持っている。拭う雑巾(ぞうきん)が追い付いて居ない。


私情なんて、もう捨てた。今日、楽しかった事も含めて、思い出として(おさ)めて置けばいい。それに、奴を殺せば私は死ねる。


もう、全て悔いは無い。やり残した事全て、先生が全部壊して行ったのだから。


「ああ。そうだな……そうかもなあ──ッ!」


手に握られたナイフが、瞬時(しゅんじ)に振り下ろされる──が、それは空を切る。だが、それは想定内。それに、奴の反応がいつもよりか(にぶ)い!それだけでも、大いなる利点だ。


次に、私が口笛を。──すると、向こうから休んでいたと思われたオズヴァルドも参戦。


先程塗っていた、酔った様に見える赤色の化粧を落とした様で。「お待たせ」と一言呟けば、此方へ手馴れたピースメーカーと、斧を投げ捨てる。


「お前ら、随分(ずいぶん)と一丁前になったもんだなあ」


いつもならば、此処(ここ)で我々は打ちのめされて居ただろう。だが、今回は違った。奴に付与された《酔い》と言う名のデバフ。


──そして、ユダの仲間が仕掛けた、あの地下をも巻き込んだ大爆発。それにより先生は、体に貯めて置いたエネルギーとやらを。随分(ずいぶん)と消費していた。(ゆえ)、早いがまだ対処(たいしょ)できるのだ。


瞬きをした瞬間(しゅんかん)に、奴の足が私の頭へ掲げられているのを察知。


すぐ様、斧と腕を使い、右側を防御。だが、防御はしたものの、奴の勢いは収まる事を知らず。


そのまま私は、向こうの壁へと吹き飛ばされた。いつもなら、そこから追い討ちを掛けられジ・エンド。しかし、今回は私一人では無いのだ。


──私には、オズヴァルドが居る。


背中を預けられる仲間が居ると言うのは、とても便利な事だ。オズヴァルドが、先生の注意を惹き付け、格闘術を披露(ひろう)。目の前で繰り広げられる攻防戦を眺めながら、すぐ様私は体制を立て直し。


瞬時(しゅんじ)に壁に刺さった斧を抜き取れば、向こうへと戦線を。


我々は今、絶好調なり。それに比べて相手は、武器無し酔いありデバフ有りと対処の使用が無い。圧倒的に不利な状況。


しかし、此処(ここ)まで戦えているのは先生と言った所か。それに、こんなハンデを加えられているけれども、長期戦になれば我々は負けるだろう。


出来れば短期決戦で仕留めたい所……。


「──っ、と。オズヴァルド!そこを退けっ」

「了解っ!」


手に慣れた、私好みのピースメーカー。


私はそれを手に握れば、奴へと向けて、弾丸惜(だんがんおし)しまず、すぐ発砲。数発は壁へと埋もれたが、残りの数発は奴の脇腹(わきばら)へ食い込んだ。


ぶじゅ、び!奴から血が出ている所を、私は初めて見たのかとしれない。それに、奴にはお得意の小銃(しょうじゅう)の武器も無い。防げる(すべ)は無いのだ。故、弾が当たると来たもので。


血が出た事に、先生は(めずら)しく顔を歪ませて「ちぃ、ッ!」と舌打ちを。次に、此方(こちら)のピースメーカーを弾き飛ばした。


──が、向こうでは、オズヴァルドがハッシュパピーを握っており。数発の銃声(じゅうせい)、奴の体が傾くのだ。


それをチャンスに私は、地面に落としたピースメーカーを再度取り。急いで数発分を再装填。だが、その間にも先生は、落ちた空弾を指先へ。


そして、それをピュン、ッ!と投げ飛ばすのである。それは、同じくオズヴァルドの脇腹(わきばら)へ。──奴は眉間(みけん)(しか)める。


「オズヴァルド!」

「良いか、戦闘はどう相手が行動しないかに掛かっている。お前達は、どうやら俺を拘束(こうそく)する術を知らないらしい──」


誤算だった。まさか、攻撃されても尚、あの威力の攻撃を放てるとは……。本当に、奴が武器を持っていたとなると、怖い物である。


しかし、オズヴァルドが一時使えなくなったが故。


その補いを、次は私がしなくてはならなくなった。


私は、先生を帯びき寄せる為、奴の後頭部へ蹴りを入れる。が、奴はビクリとも動かずに。脇腹(わきばら)を抑えるオズヴァルドの元へ、すぐさま駆け寄って行くのだ。


多分、混乱状態の内に戦闘不能まで追い込むのだろう。だが、その判断は懸命(けんめい)だ。しかし、そうされては私が困る。


──私は、すぐ(さま)奴が攻撃をする前に、奴の身体を掴み飛び上がる!……次の瞬間、床が割れ地響きが。


私に小脇(こわき)で抱えられたオズヴァルドは、「ひゅう」と口笛を。あれをモロに食らっていれば、致命傷は(おろ)か、死んでいただろうに。


「オズヴァルド、僕を持ち上げられる何て凄いね〜。僕、八十キロ近くあるよ?」

「っ、るせー。お前は、目の前の相手に集中して、トドメを私に預けりゃ良いんだよ──!」


喋る間も無く、此方(こちら)へ余裕げに飛んで来る先生。その顔からは、少し赤みが引いており。


酒の酔いが、抜けて来た頃合だろう。……まずい。


私は、オズヴァルドを小脇(こわき)から離し、奴と激突。斧で直撃は防いだが、体は地面へ押し潰される。それと共に、奴の足裏での攻撃が、倒れる私の目の前へ──。


「っふ、っ──!!」


だが、身体を傾け何とか私はそれを回避。次に、オズヴァルドの方へと向かい、銃を奴へ突き付け、トドメの合図を送る。


次に、オズヴァルドはそれを見て、私と共に、奴へ銃口を突き付ける筈……であった。


しかし、──私の体は後ろへと。首元には、大きな腕が絡まれて。オズヴァルドの胸元へ、後頭部が着いたのかと思えば、冷たい銃口が頭へ。


………………これは、一体どう言う事だ?




「動かないで、ダンテさん」




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