063_分かり合えないと分かっているから。
004
「ぅ゛っ、ぐげぇ〜。っぱし、飲み過ぎた。ねぇ〜ヴェルギリウス〜〜。僕の事おぶってってよぉ〜。歩くの辛い〜〜っ。ぐ、ぇーッ」
我々は家に帰れば早々にオズヴァルドがギブアップの音を上げる。──此処までは、作戦通りと言った所か。次に、奴はこう言う筈。
「もう僕寝るね。お休みー。明日、僕が二日酔いになってても、ちゃんと介護してよね?」
計画通り。先ずは、第一関門突破。先生の顔も、何件も酒場やら娼館やらをハシゴしたお陰か、随分と火照っている様で。
これは、奴を殺す事も案外──……っ。
私は死角でこっそりと、小さな折り畳みナイフを忍ばせながら。先生としたくもない会話を交わす。だが、もうこれでそれも終わり。
この私と此奴との泥沼に、終止符を打つ事が出来る。漸く、私は悪夢から解放される。
「……なあ、先生。今日は久々に先生達と娼館やら酒場何かに行ったな。随分と楽しげに」
「ああ、そうだな。お前も、『その眼帯』を着けてから、随分と元気になった様で」
我慢だ。今我慢すれば、全てが上手く行く。
私は「ふう」と溜息を。そして、笑いながら、ゆっくりと。奴の元へと近付くのだ。手には、首を掻っ切るナイフが握られて。
『──っはー!ねえねえ、ヴェルギリウス!見て見て、一緒に偶にはトランプゲームでもっ』
「……そうだな。お前の言った通りだと思う。私は、この日をずっと待っていたんだから」
今日の、酒場での思い出が湧き上がって来る。久々に、少しだけ楽しいと思えた。少しだけ、奴らとも交流が深められた気がする。
『──んっ、おいヴェルギリウス。そこの酒を取ってくれ、あと、……その、ひゃぶ、ぐ』
『ひ、ひゃぶ、ぐ……?それは何ぞや……?』
『……っく、ひひひっ……?ダンテさんっ。今の声──ッ、ぶはははははははっ?!』
「眼帯如きで、随分と大袈裟な女だな。……それに、その眼帯……オズヴァルドだな?本当に、手癖の悪い坊主だな。教育が必要か?」
だが、それまでの事だ。此奴も、オズヴァルドも、私も。それだけでは拭いきれない罪を持っている。拭う雑巾が追い付いて居ない。
私情なんて、もう捨てた。今日、楽しかった事も含めて、思い出として収めて置けばいい。それに、奴を殺せば私は死ねる。
もう、全て悔いは無い。やり残した事全て、先生が全部壊して行ったのだから。
「ああ。そうだな……そうかもなあ──ッ!」
手に握られたナイフが、瞬時に振り下ろされる──が、それは空を切る。だが、それは想定内。それに、奴の反応がいつもよりか鈍い!それだけでも、大いなる利点だ。
次に、私が口笛を。──すると、向こうから休んでいたと思われたオズヴァルドも参戦。
先程塗っていた、酔った様に見える赤色の化粧を落とした様で。「お待たせ」と一言呟けば、此方へ手馴れたピースメーカーと、斧を投げ捨てる。
「お前ら、随分と一丁前になったもんだなあ」
いつもならば、此処で我々は打ちのめされて居ただろう。だが、今回は違った。奴に付与された《酔い》と言う名のデバフ。
──そして、ユダの仲間が仕掛けた、あの地下をも巻き込んだ大爆発。それにより先生は、体に貯めて置いたエネルギーとやらを。随分と消費していた。故、早いがまだ対処できるのだ。
瞬きをした瞬間に、奴の足が私の頭へ掲げられているのを察知。
すぐ様、斧と腕を使い、右側を防御。だが、防御はしたものの、奴の勢いは収まる事を知らず。
そのまま私は、向こうの壁へと吹き飛ばされた。いつもなら、そこから追い討ちを掛けられジ・エンド。しかし、今回は私一人では無いのだ。
──私には、オズヴァルドが居る。
背中を預けられる仲間が居ると言うのは、とても便利な事だ。オズヴァルドが、先生の注意を惹き付け、格闘術を披露。目の前で繰り広げられる攻防戦を眺めながら、すぐ様私は体制を立て直し。
瞬時に壁に刺さった斧を抜き取れば、向こうへと戦線を。
我々は今、絶好調なり。それに比べて相手は、武器無し酔いありデバフ有りと対処の使用が無い。圧倒的に不利な状況。
しかし、此処まで戦えているのは先生と言った所か。それに、こんなハンデを加えられているけれども、長期戦になれば我々は負けるだろう。
出来れば短期決戦で仕留めたい所……。
「──っ、と。オズヴァルド!そこを退けっ」
「了解っ!」
手に慣れた、私好みのピースメーカー。
私はそれを手に握れば、奴へと向けて、弾丸惜しまず、すぐ発砲。数発は壁へと埋もれたが、残りの数発は奴の脇腹へ食い込んだ。
ぶじゅ、び!奴から血が出ている所を、私は初めて見たのかとしれない。それに、奴にはお得意の小銃の武器も無い。防げる術は無いのだ。故、弾が当たると来たもので。
血が出た事に、先生は珍しく顔を歪ませて「ちぃ、ッ!」と舌打ちを。次に、此方のピースメーカーを弾き飛ばした。
──が、向こうでは、オズヴァルドがハッシュパピーを握っており。数発の銃声、奴の体が傾くのだ。
それをチャンスに私は、地面に落としたピースメーカーを再度取り。急いで数発分を再装填。だが、その間にも先生は、落ちた空弾を指先へ。
そして、それをピュン、ッ!と投げ飛ばすのである。それは、同じくオズヴァルドの脇腹へ。──奴は眉間を顰める。
「オズヴァルド!」
「良いか、戦闘はどう相手が行動しないかに掛かっている。お前達は、どうやら俺を拘束する術を知らないらしい──」
誤算だった。まさか、攻撃されても尚、あの威力の攻撃を放てるとは……。本当に、奴が武器を持っていたとなると、怖い物である。
しかし、オズヴァルドが一時使えなくなったが故。
その補いを、次は私がしなくてはならなくなった。
私は、先生を帯びき寄せる為、奴の後頭部へ蹴りを入れる。が、奴はビクリとも動かずに。脇腹を抑えるオズヴァルドの元へ、すぐさま駆け寄って行くのだ。
多分、混乱状態の内に戦闘不能まで追い込むのだろう。だが、その判断は懸命だ。しかし、そうされては私が困る。
──私は、すぐ様奴が攻撃をする前に、奴の身体を掴み飛び上がる!……次の瞬間、床が割れ地響きが。
私に小脇で抱えられたオズヴァルドは、「ひゅう」と口笛を。あれをモロに食らっていれば、致命傷は愚か、死んでいただろうに。
「オズヴァルド、僕を持ち上げられる何て凄いね〜。僕、八十キロ近くあるよ?」
「っ、るせー。お前は、目の前の相手に集中して、トドメを私に預けりゃ良いんだよ──!」
喋る間も無く、此方へ余裕げに飛んで来る先生。その顔からは、少し赤みが引いており。
酒の酔いが、抜けて来た頃合だろう。……まずい。
私は、オズヴァルドを小脇から離し、奴と激突。斧で直撃は防いだが、体は地面へ押し潰される。それと共に、奴の足裏での攻撃が、倒れる私の目の前へ──。
「っふ、っ──!!」
だが、身体を傾け何とか私はそれを回避。次に、オズヴァルドの方へと向かい、銃を奴へ突き付け、トドメの合図を送る。
次に、オズヴァルドはそれを見て、私と共に、奴へ銃口を突き付ける筈……であった。
しかし、──私の体は後ろへと。首元には、大きな腕が絡まれて。オズヴァルドの胸元へ、後頭部が着いたのかと思えば、冷たい銃口が頭へ。
………………これは、一体どう言う事だ?
「動かないで、ダンテさん」




