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純血の赤ずきん  作者: 加藤 會田
Episode4_実によって木を知る
19/75

018_ 黄金律、従順な十二使徒。

「自己紹介失礼。俺は第八支部の副支部長のパウロ。愛用の銃は、お前が腰掛けてるのと同じピースメーカー。好きな食べ物は巨乳のねーちゃんとペペロンチーノだ」


シリンダー部分へ呑気に銃弾を補充し、笑いながらそう語る、第八支部所属、パウロ。


「はっ、敵を目の前にして呑気(のんき)に自己紹介かよ。やたらと好感触じゃねえか。あの狂犬(笑)のユダとは大違いだな」

「ユダ……ああ、あの第十二支部の。……やはり、お前らがユダを殺したのか。これで白黒はっきりしたぜ。童話殺しと戦って生き延びたユダが、次の仕事で姿を消した理由をよ。お前らがユダを殺したのか、彼奴に負けた因縁(いんねん)の為にっ!」

「………………………………………………っ」


勿論、大きな勘違いだ。ユダが極度のマゾであり、負ける事に快感を覚え初めている事を、奴はまだ知らないのだろう。


……先生に初めてユダが敗れた際も、正常な顔をしておいて、はあはあと裏で息を荒らげていたのを私は知っている。……そして、当本人の先生も。


だが、此奴(こいつ)ら目線では、敵へ勇敢(ゆうかん)に立ち向かった強く逞しい英雄(たくま えいゆう)と言う感じなのだろう。


反吐が出る、これが本当のギャップ萌えと言うべきか。


「……さあな。もしかしたら、裏切ったりしていてね。その、ユダと言う雌豚(メスブタ)がよお」

「そりゃナッシング。彼奴は他の支部でも噂になる程の戦闘狂で、一番正義感のある奴だったよ。そんな奴が敵に堕落……か。考えられねえし、考えたくもねえ。中毒性のある媚薬(びやく)かシャブでも使って、薬漬けにでもしたのか?」


冗談の様に軽く語るパウロ。その言葉に私はまたもや「さあな」と、曖昧(あいまい)な返事を返す。


勿論(もちろん)、敵なんかと流暢(りゅうちょう)にお喋りをする暇は無い。私は今から、此奴を殺すのだから。死人に口無しとは、正にこの事。


私は手に斧を握り締めては笑みを浮かべ。その私の表情に、相手も満更では無さそうだ。


二人とも一定距離を保ちながらも、見つめ合い横へと移動して行く。


「地獄への手土産を、今の内に考えておいた方が良いんじゃねえのか?」

「馬鹿言え、童話殺しの大罪人がっ。お前こそ、しっかりと地獄へのカウントダウンを数えておいた方がいいぜ。童話がないと生きられない、童話の従順(じゅうじゅん)な下僕さんっ」

「支部の犬が何を言う。馬鹿も程々にしとけ──」


私がそう呟いた瞬間、瞬きをする間もなく目の前に飛んで来るのは、数多もの鉛玉(なまりだま)だ。


大半は斧で弾き飛ばせたが、数発は喰らっちまった。


……だが、致命傷にはならない傷だ。完全放置も可能だろう。しかし、相手は手動のリボルバーだぞ?どうやったらあんな一瞬で、あれ程の弾を発射できる。


そう思考を巡らせながらも、私は相手へ斬り掛かる。が、案の定避けられるのがオチであろう。そのまま、一定の距離を保ったまま下がられてしまった。


「……可哀想に、何も得られなかった結果がこの様か。だが、俺ちゃんは優しいんでね。お前さんが更生の意を示してくれれば、こんな残虐(ざんぎゃく)な事は辞めて直ぐにでも────」


そんな譫言を話す男の口へ、私は鉛玉を撃ち込んだ。


……だが、それも首を振られて避けられる。遠距離攻撃は無意味と言って良いだろう。やはり、殺すなら近接戦一択。


「温い温い。やっぱりお前らは分かっちゃ居ねえ。……最後に爆発で終わる映画くらいつまらないし、面白くもなんともない。見当違いも程々にしろ」

「やっぱり駄目か。……君程の逸材(いつざい)なら、この世界でも、俺達の支部でも生き残れたと言うのに」

「それが生温いっつってんだよジジイ。……何も分かっちゃ居ねえのに、分かった様な口振りで話しを進めるんじゃねえ。……私はな、お前みたいな偽善者が、反吐が出る程大っ嫌いなんだよ──っ!!」


愛銃を(ふところ)仕舞(しま)い。昔からの旧友でもある愛用の斧を握り締め、私はそのまま振り翳す。


私は、同情の言葉が嫌いだ。一方が相手を哀れんだ結果、生まれる選択肢。まるで、そいつの理想を押し付けている様ではないか。


だが、私も一応人間だ。少し、奴の言葉に心が揺らいだのも確か。……人間、的確な事を突かれると、大層思考が鈍るらしい。


「無駄無駄。近接戦で俺には勝てまい、相性っーもんがあるんだよ。俺とお前の相性は最悪だぜ?……流石はマタイさんだ。そう言う所もしっかり組んでくれている」


斧の斬撃を軽々と避け、一定の距離を保ちながらもそう言うパウロ。……マタイ?降り注ぐ数多もの銃弾を避けながら、私の思考に、一つの疑問が浮かび上がる。


だが、そのマタイとやらが言う、相性というのも確かである。確かに、認めたくは無いが、此奴と私では相性がとてつもなく悪い。


相手は遠距離専門。そして私は近距離専門だ。それに加えて、一定の距離を毎度保ってくるのと、私の銃が避けられ当たらない。


多分、奴は銃の知識に優れている。銃口が向いている位置を見て、何処に銃弾が発射されるのか分かるのだろう。私も、一応は銃口の位置で大体は分かる。が、相手は早撃ちの達人者。


銃口なんて呑気に見ていたら、私はあっという間に蜂の巣にされてしまうだろう。


かと言って、私お得意の近距離戦も、近付けやしないので意味が無い。弾切れも、床に倒れる数多もの同僚の死体を漁れば(いく)らでも。……圧倒的に私が不利である。


「童話殺し、お前の負けは確定してんだよ。無理だ、もう諦めろ。潔く諦めれば、脳天に鉛玉でもぶち込んで、楽に殺してやるから──」

「諦めろ?負け?巫山戯(ふざけ)るのも大概にしろっ。私が、そんなあまっちょろい言葉に身を委ねるとでも思ったか。百パーセント無理でも、確実に負けが確定していても………………やるんだよっ!!私が、その百パーセントの上限を超えた可能性の一握りを、何がなんでも掴み取ってやるっ!!」


体に銃弾が当たり、血が流れ様ともお構い無し。只々(ただただ)、己の感情に身を委ねて、相手の傍まで近寄って行く。


「…………っ」


余裕の笑みを浮かべていた奴の傍に、やっと近寄れた。ズキズキと鳴る心臓の鼓動と、危険を示す体の(きし)み。垂れ続ける血の渦巻き。


だが、やっとだ。やっと、奴の傍へと近寄れた。赤い頭巾に隠れるその目には、キラリと純血に光る十字架が。そして、パウロのすぐそこに、血汐に血塗られた斧が。


奴は私の根性に度肝(どぎも)を抜かしたのか、目を見開き此方(こちら)を呆然と見上げている。「チェックメイト」最後に私がそう言うと、次にパウロは「はっ」と笑えば。


「やっぱり俺は、優し過ぎたのかもしれないな。失う物が何も無いから、存分に死にに行ける。……地獄への手土産は決まったぞ?」


──────ピンッ!

その瞬間、聞き慣れたとある音が、私の耳元をすっと掠め。……──っまずい?!だが、遅かった。一瞬にして、辺り一面を真っ白い光が包み込む。


────────終末の純白だ。


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