終わりの始まり
-宮ヲ恐レヨ- *死*
はっ!まただ、頭に流れ来る言葉と浮かぶ死の文字。たまにこういう悪い夢を見る。でも側に母や父がいればまた眠れる、大丈夫大丈夫、大丈夫。
「今日はどすなんちゃらっていう世界最強の虫取りに行こうぜ!
「世界最強?俺やエメラルドより強いの?
「知らん!でも世界最強らしい。
「えー、前見た森にいた魔族より強い生き物がいるとは思えないけどなー
日常 笑顔 大切な存在 終わるのなんて一瞬だ
夕暮れ時、怒号が鳴り響く
「百魔夜行だ!逃げろ!
「逃げるってこんな辺境の村でどこに逃げんだよ
「とにかく逃げろ!100をこえる魔族がすぐそこまで来てる。生きるために逃げるんだよ
狼種の叫び声が響いた。誰かの怒号よりも鮮明に、確かに百魔夜行がそこにあるのを知らせるように。
「サファィア、エメラルド、もう逃げ場はないわ。あんたたちはここに隠れてなさい。サファィアはこっちの隅にに、エメラルドはこっちの隅に。私たちは少しでも気が逸れるように足掻くわ。
「おばさん!
「お母さん、いかn
「愛してるわ、サファィア。
百魔夜行については前に教えてもらったことがある。大小、有象無象の魔族が村や街に押し寄せてくる。理由はわからないが何かに怯えるように狂って走り去るらしい。
現実は想像以上だ。いや、想像なんてできるわけない。家が崩れる音、魔族の荒い吐息、何かの、骨が砕ける音。早く、早く去ってくれ。
カタカタと音がする。エメラルドの方からだ。怖いのは俺だけじゃないんだ。生きるんだ。生きるんだ。
バキャ
うちの家の半分が消えた。魔族に喰われたのだ。魔族がエメラルドの方を向く。エメラルドの鼓動がこっちにも聞こえてきそうなほど高鳴った。俺が、俺が助けなきゃ。足掻け、動け、動け!!
バキャ
日常 笑顔 大切な存在 終わるのなんて一瞬だ
次は俺の番だ
その時、他の魔族が入ってきて目の前の魔族に襲いかかった。刹那、大きな牙で目の前の魔族の胸をひと噛み、仕留めた。魔族が魔族を咀嚼する音が天井もなき家に響いた。俺と目があった。鋭く尖った眼をしていた。すると魔族は怯えたように逃げていってしまった。
気づくと周りに魔族はいなくなってた。遠くから人の声がする。少し近づくと魔族に囲まれながら2人が叫んでいた。
「」
聞きなれない言葉の塊だったが不思議と耳に残った。言葉が終わると同時に二人は黄色の閃光に包まれて爆ぜた。
俺の周りにはもう何もなかった。村も家族も親友も、魔族さえも。