闇。
さぁ……ザッ……れに……ザザッ……ザザッ……
………………
近くのような、遠くのような……何か……ノイズが聞こえる……
どこだろ、ここは……暗いな……何も見えない……
ザザッ……ザッ……ザザッ……ザーーッ……
ここは……あぁ、うるさいな……頭が歪む……何も考えたくないよ……
………………
はぁ……心を乱されるのは……もう……勘弁してくれ……
無理だよ……疲れたよ……
………………
……なにもかも……いらない……
俺なんて……いらない……
誰も……必要としていない……
もう、いいから……眠らせてくれ……
………………
◇
「ねぇ……轢斗……起きて……起きてよ……」
どこからか俺を呼ぶ声が聞こえる……僅かに身じろぎするも、瞼が重くて開けられない。
いや、開ける気力が……そもそも内側からまるで湧いてこない。
なんか……もう、全てが億劫だ。
……俺のことなんて、放っておいてくれよ。
心の中で捻くれた言葉を吐き出しながら、丸まった身体をさらに丸くする。
頭の中をまた空っぽに戻そうとした瞬間……
バサッ!
「こら、轢斗! お前、いつまで寝てんだ?」
「えっ⁉︎」
いきなり布団を剥がされて、無防備になった俺の頭上から叔父貴の声が降ってきた。
「え? え? あれ?」
「全くお前は……美風ちゃんが迎えに来てくれてるのに……さっさと起きて支度しろ! 本当、ごめんねぇ、美風ちゃん……」
「いえいえ……大丈夫ですよ、霧人さん。逆に、轢斗の無防備で可愛らしい寝顔が見れたので、私としてはラッキーかなぁ、なんて……」
そう言って、美風が叔父貴にはにかんだ。
………………
あれ? 今日は……なんか用事? 約束?
ここはベッド? 俺の部屋? 寝てた? 夢?
思い出せ……えーっと……えーっと……
頭を抱えながら、俺が必死に記憶を呼び起こそうとしていると、叔父貴が深い溜息を吐き出した。
「はぁぁぁぁぁっ……なんだ、お前まだそこから抜け出せねぇのか? 俺が手伝ってやってるのに……ったくクソダセェ……いいかげんにしろよ? 本当しょうがねぇヤツだな……」
「⁉︎」
声を聞き、反射的にパッと彼の顔を見上げる。
コイツ! 叔父貴と同じ顔をしているが……その口から発せられたのは全く別人の声!
バッ!
ベッドの上で飛び上がり、構えるように片膝をついて向き合う!
って……あれ? 俺の左足……ギブスがない⁉︎
………………
なるほど。ここは現実ではない。
少しずつ……何か思い出してきた気がする。
それに、コイツの声……どこかで聞いたことがある。
しかも、割とさっき……あぁそうだ、声の主は……!
「悪魔!」
「はいはい、ご名答」
ピシピシピシピシッ……パリーーンッ……!
「え?」
突如、俺の部屋に似せた空間に亀裂が走り、そこから壁だった部分がガラガラと崩れ落ちる。
それと同時に大量の水が、砕けた隙間から俺めがけて一気に流入してきた!
ザバーーーーーーッ! コポコポコポコポッ!
ドプンッ!
「⁉︎」
あっという間に、俺は……水の中⁉︎
……いや? 流れ込んで来たってことは、元々、水中にいた俺を囲うように謎の空間が覆っていた……のか⁇ いや、わっかんねぇ!
こんな、天地がどっちつかずな状況では何一つ判断がつかない。
疑問が次々と浮かんでくるが、とりあえず急いで現状を確認。
俺がいるのは……視界がまるで効かない底なしな水中空間⁉︎
感覚的には、頭が下の真っ逆さま状態でクラゲのように漂っている感じ……なのに苦しくはない……ここが現実世界では無いから、呼吸は関係ないのか?
この水も……幻覚か何かなのだろうか?
たしかさっきまで俺は、脳内の記憶ゾーンにいたはず……。
頭は混乱しながらも手足だけは夢中で動かし、ここよりも沈まないよう定位置をキープする。
冷静に……冷静に……。
その時、突然、背後から伸びてきた腕が俺の首にガッと巻きつく!
「⁉︎」
グンッ!
そのまま強い力が後方へとかかり、俺の首は強く圧迫されたのだ!




