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災厄だよ、ピクトさん。  作者: 枝久
最終章 決戦。

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77/85

闇。

 さぁ……ザッ……れに……ザザッ……ザザッ……


 ………………


 近くのような、遠くのような……何か……ノイズが聞こえる……


 どこだろ、ここは……暗いな……何も見えない……



 ザザッ……ザッ……ザザッ……ザーーッ……


 ここは……あぁ、うるさいな……頭が(ひず)む……何も考えたくないよ……


 ………………


 はぁ……心を乱されるのは……もう……勘弁してくれ……


 無理だよ……疲れたよ……


 ………………


 ……なにもかも……いらない……


 俺なんて……いらない……


 誰も……必要としていない……


 もう、いいから……眠らせてくれ……


 ………………




 

「ねぇ……轢斗……起きて……起きてよ……」


 どこからか俺を呼ぶ声が聞こえる……(わず)かに身じろぎするも、(まぶた)が重くて開けられない。

いや、開ける気力が……そもそも内側からまるで湧いてこない。

なんか……もう、全てが億劫(おっくう)だ。


 ……俺のことなんて、放っておいてくれよ。


 心の中で捻くれた言葉を吐き出しながら、丸まった身体をさらに丸くする。

頭の中をまた空っぽに戻そうとした瞬間……


 バサッ!


「こら、轢斗! お前、いつまで寝てんだ?」

「えっ⁉︎」


 いきなり布団を剥がされて、無防備になった俺の頭上から叔父貴の声が降ってきた。


「え? え? あれ?」

「全くお前は……美風ちゃんが迎えに来てくれてるのに……さっさと起きて支度しろ! 本当、ごめんねぇ、美風ちゃん……」

「いえいえ……大丈夫ですよ、霧人さん。逆に、轢斗の無防備で可愛らしい寝顔が見れたので、私としてはラッキーかなぁ、なんて……」


 そう言って、美風が叔父貴にはにかんだ。


 ………………


 あれ? 今日は……なんか用事? 約束?

ここはベッド? 俺の部屋? 寝てた? 夢?

思い出せ……えーっと……えーっと……

 

 頭を抱えながら、俺が必死に記憶を呼び起こそうとしていると、叔父貴が深い溜息を吐き出した。


「はぁぁぁぁぁっ……なんだ、お前まだそこから抜け出せねぇのか? 俺が手伝ってやってるのに……ったくクソダセェ……いいかげんにしろよ? 本当しょうがねぇヤツだな……」

「⁉︎」


 声を聞き、反射的にパッと彼の顔を見上げる。

コイツ! 叔父貴と同じ顔をしているが……その口から発せられたのは全く別人の声!


 バッ!


 ベッドの上で飛び上がり、構えるように片膝をついて向き合う!


 って……あれ? 俺の左足……ギブスがない⁉︎


 ………………


 なるほど。ここは現実ではない。

少しずつ……何か思い出してきた気がする。


 それに、コイツの声……どこかで聞いたことがある。

しかも、割とさっき……あぁそうだ、声の主は……!


「悪魔!」

「はいはい、ご名答」



 ピシピシピシピシッ……パリーーンッ……!


「え?」


 突如、俺の部屋に似せた空間に亀裂が走り、そこから壁だった部分がガラガラと崩れ落ちる。

それと同時に大量の水が、砕けた隙間から俺めがけて一気に流入してきた!


 ザバーーーーーーッ! コポコポコポコポッ!


 ドプンッ!


「⁉︎」


 あっという間に、俺は……水の中⁉︎

……いや? 流れ込んで来たってことは、元々、水中にいた俺を囲うように謎の空間が覆っていた……のか⁇ いや、わっかんねぇ!

こんな、天地がどっちつかずな状況では何一つ判断がつかない。


 疑問が次々と浮かんでくるが、とりあえず急いで現状を確認。

俺がいるのは……視界がまるで効かない底なしな水中空間⁉︎


 感覚的には、頭が下の真っ逆さま状態でクラゲのように漂っている感じ……なのに苦しくはない……ここが現実世界では無いから、呼吸は関係ないのか? 

この水も……幻覚か何かなのだろうか?

たしかさっきまで俺は、脳内の記憶ゾーンにいたはず……。


 頭は混乱しながらも手足だけは夢中で動かし、ここよりも沈まないよう定位置をキープする。

冷静に……冷静に……。


 その時、突然、背後から伸びてきた腕が俺の首にガッと巻きつく!


「⁉︎」


 グンッ!


 そのまま強い力が後方へとかかり、俺の首は強く圧迫されたのだ!

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