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今夜も眠れない

作者: ましの

 かすかな電子音が聞こえた。たぶん毎週録画予約しているドラマが始まったのだろう。どうせ起きてるのにな、なんて思っても起き上がるつもりもなくごろりと寝返りを打つ。ただでさえパンク寸前のハードディスクなのに録画番組を消化することもなく毎週積み重なっていくデータにはげんなりだ。贔屓の女優が出ているドラマだって放送を楽しみにしていたにもかかわらず放置しているのだから手のつけようがない。

 ため息をついてきつく目を閉じる。別に今まで目を開けていたつもりはないが、それでもカーテンの向こうで煌々と照る常夜灯の明かりが目の裏にこびりついているようで気に障る。

 こんな夜は今夜でいったい何日目だろう。少なくとも二週間前の土曜日からこんな状態だったような気がする。仕事で疲れきってようやく熟睡できると期待した週末だったはずだ。夕食を済ませてベッドに入るまではいつもと同じだった。しかしそこから何かがおかしくなったのだ。

 一時間。二時間。時間は刻々と経過していく。

 おかしいぞ。睡眠への欲望があるにも関わらず一向に眠れない。

 ふと思い立ってどうしても眠れないときの頓服としてもらった睡眠薬を一欠片飲んでみる。何とも嫌な苦味が舌の上に残るがそれごと飲み込むように水で流し込む。

 さて、これで眠れるか。一安心して再びベッドに潜り込んだ。

 一時間経ち。二時間が経ち……。

 だがしかし一向に眠りはやってこない。

 なにがいけないんだ?

 暗い部屋で再び起き出し、ストレッチでもしてみるが全く効果は現れない。

 疲れているのに眠れない。むしろ眠気がない。悶々しながらようやく眠ったのは空が明るくなりかけてきた頃か。

 といっても寝たという感覚はない。意識がなかった時間帯が二時間ほどあるだけだ。

 その日から毎日同じような夜の繰り返し。いい加減にしてくれと苛立ちを押さえるように睡眠薬を増やしてみるがこれが笑えるくらいに効果がない。こうなってくるとこの苦いだけの薬が本当に睡眠薬なのかどうか怪しくなってくる。

 ある日突然ショートスリーパーに変身したのだというのであれば納得も出来なくはない。

 しかしそんなことはもちろんないのだ。

 一週間が過ぎた頃から背中が痛くなり始め、何をしていてももちろん横になっていようがズキズキと傷んで仕方がない。

 翌日からは微熱が続き、強烈な怠さに襲われる。

 それでも眠れないのだからもうどうしたら良いのかなどわかるはずもない。ただSNSに苛立ちを投下するしか気晴らしはなにもなかった。


 さて、今日は何日目だ?

 痛む背筋を労りながらベッドに潜り込む。完璧に睡眠からそっぽを向かれたわたしはいつものように眠りの真似事をする。

 だがやはり眠れるわけもなく、観念して部屋の明かりをつけた。

 今から録り溜めたドラマを消化するするつもりは到底なく、仕方がないので明日の仕事に手をつける。二時間ほど経って飽きたところを狙い寝ようと試みるもやはり無駄に終わる。

 仕方がない。この悲しみを記録することにしよう。

 どうせ眠れないのなら電池が切れるまで活動を続ければいいんだろ?

 などと自虐してパソコンを開いた。

今夜も眠れないのだろうか。

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