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……え? じゃあ激動の接客業後編……ですかね。

「いってー、なんで俺に向かって倒れ込んで来たんだよ」

 ど、ドユコト? なんで急に立花さんが俺に向かって倒れ込んで来たの⁈

 というか、

「ね、ねえ多村君これって絶対普通じゃないよね?」

 今俺は立花さんに上に覆い被さられて俺は下にいるわけだ。

 どうでもいいけどめっちゃ近いんだよ!

 いや、別に意識してるわけじゃないんだよ! 別に好意があるわけじゃないんだけどその、女の子にこんなに近寄られると……かなり、ね。

 言い訳すると俺だって女の子(妹だよ! なんか悪いか!)に被さられたことあるから!

 とにかくこの状況は全くをもってこの状況は普通じゃないよ!

「ふははははっ! 豪快な音だな! 我がディザスタートラップに見事に引っかかったようだな盟友! いつかの対魔地雷のお返しさ!」

 お、お前が原因だったのかよ! 本当に葵さんがいるとめんどくさくなるんだよ!

 というかディザスタートラップとか言っときながらそれ輪ゴムを伸ばして足を引っ掛けさせる程度のトラップだからね!

 それ俺でも作れるから! あんたのせいで大惨事だよ!

「えーと、大丈夫ですか?」

 あれ? このお客さんの声聞いたことあるぞ。えーと、誰だっけな?

「え? 兄さん、何してんの?」

 ああ、そうだ! 真由だ! 身内で良かったね。

「死にたいの? 兄さん」

 とはならないからね! 俺殺されちゃうんですけど!

「えーと、多村君、とりあえず離れるね」

 うん、えーと、まずはそうしてもらおうか。

「あ、あれ? な、なんで立花さんがそこにいるんだ?」

「さて、なんでだろうな伊達」

 まあ葵さんは確実に死んだな。一応客の前なのにフォルムチェンジしたよ。

 さて、あとはこちらをどうするかだな。

「兄さん、あの人だれ? 私より大事なの?」

 目が怖いよ真由。俺本当にどうすれば良いのかな?

「なんで急に静かになったのかな? さっき何してたのかな?」

「ギャァァァ」

「ねえ兄さんまさかだけど、死にたかったの? ねえ、教えてよ兄さん!」

 俺が教えてほしいよ! この状況から無事に生還する方法をさ!

「えーとだな、あれは、バイトの先輩で————」

「ギャァァァ」

「で、なんであんなことしてたの? ああいう仲なの?」

「ちがうんだ! あれは事故なんだよ!」

 とにかく弁明しないとな。俺が死ぬ。

「本当?」

「ギャァァァ」

「ああ、マジだ!」

 なんか雰囲気的には乗り切れそうですね。はい。

 って真由は急に手提げ鞄を漁って何を出すのかな?

「じゃあさ、あの女の人のこと好きなの?」

 ごめん、質問するときになんで包丁を俺に向けるんだよ! 仮にも兄貴だぞ!

「ねえ、答えてよ」

「いや待て、その前に包丁を、な」

 この国の警察真面目にやってんのかよ!

 いや、妹が警察のお世話になって欲しくはないけど、生命の危機と比べたら……な。

「ギャァァァ」

「いや、別に好きじゃない!」

「嘘、今目が平均と比べて一.二秒泳いでた」

 なんでそうなるんだ俺!

「この反応から見ると……」

 真由が鞄からメモ帳を開き読む

「————兄さん、昔一目惚れしたでしょ」

 なんでそんなことまで分かるんだよ!

 ————というかそのメモ帳何なんだよ! そこに俺の情報があるのか⁈

 立花さんは……居ないかまあとにかく今は立花さんに聞かれなくてよかったよ。

「ギャァァァ」

「なるほど、今は好きじゃないんだ」

 まあとにかくこれで大丈夫っぽいな。

「というか真由、なんで来たんだ?」

「カラオケと兄さんの仕事の見学」

 お前は俺の保護者かよ……まああながち間違ってないか。

「えーと、三十分のワンドリンクでお願いね」

「はいよ」

 受付伝票を発行して真由に渡す。

「ありがとう兄さん……あともう一つ」

 真由が顔を上げる。

「ギャァァァ」

「兄さんは誰が一番好き?」

 何そのハーレムっぽい質問⁈ これハーレム物じゃないから! あと妹系でもないから!

「————ああ! 真由だぜ!」

 はあ、悲しいかな。

 まあこれ以外の答えをしたら多分殺されるから別にいいか。

「そっか、じゃあ行ってくるね」

 やっと嵐が過ぎ去ったよ。

「ギャァァァ」

「ギャァァァ」

「ギャァァァ」

 ……………………………………………………………。

 さっきからギァギァギァギァ——。

「お前ら何してるんだよ!」

 俺が怒りながらバックルームに入っていくと……。

「うぅ、もうしませんからー」

 涙目の葵さん(ちょっと素が出ちゃってるね)が吊るされて……。

 あ、吊るされるというのは勿論リアルだよ! 凄いね! 宙に浮いてるね!

 スマホでホラー映画を無理やり葵さんに見せてる立花さんでした。

「えーと、本当に何してるんですか?」

「お仕置きだ」

「まあ見ればわかりますけど……」

「ギャァァァ」

 葵さんの声だったのか。

「こいつが二度とふざけた真似を出来ないようにな」

「そ、そうなんですか」

 というか、

「葵さんホラー物ダメなんですね」

「そうだ、多村は知らなかったっけな」

 ふーん、あれ?

「でもこの前肝試し賛成って言ってましたよね?」

「確かにな、コイツの事は知らねえけど多分強がったんだろ」

 あー、葵さんならありそうだな。

「あたしはこいつをしばいてるから先に仕事に戻ってろよ」

 お前も戻れよ! って言いたいけどまあ言わないでおこう。俺もしばかれかねん。

 えーと、オーダーは入ってるかな……ああ、妹の部屋にドリンク運ぶのか。

 ドリンクを注いで妹の部屋に入ってドアを叩こうとする。

 ん? なんか音が漏れてる様な気が……これが立花さんの言ってた音漏れか。

 確かに聞こえないフリをするのは厳しいな……。

「あなたが愛おしくて、愛おしくて、私は赤いのが好きだからあなたを傷つけてしまうのよ、嗚呼、愛しいあなた」

 暗いよ! というか怖いよ! なんだよこの歌詞!

 しかも時々ビブラートを聞かせて上手く歌ってるところがムカつくなぁ!

 はあ、とりあず真由が歌い終わるまで待つか。

 なんか今入ったら包丁で串刺しにされそうだからな。

 しばらくすると真由が歌い終わる。

「おい真由、入るぞー」

 タイミングは完璧だな、丁度選曲中に入れたわけだし。

「兄さん、ちゃんと来てくれた」

 まあそりゃ仕事だからな。

「なんで兄さん私の部屋に入って来なかったの?」

 へ?

「えーと、何のことだ?」

 ヤベェバレてたよ! 俺はいわゆる盗み聞きをしてたわけでそこから推測すると……。

 包丁でぶすりだな。

「まあ待て、真由、落ち着くんだいくら兄妹でもそれはいわゆる殺人に————」

 テレビで俺を殺した動機が俺にカラオケの盗み聞きされたとか惨めすぎるだろ!

「何怯えているの、兄さん」

 え? 殺さないのか?

「おい真由、怒ってないのか?」

「私の歌声が美しくて美しくてつい聞き入ってたんでしょ」

 本当は怖くて唖然としてたんだけどな。

「だったら別に良いよ」

 え? なんかいつもの真由と対応が違うな。いつもなら包丁が出てくるのに。

「だって兄さんは————」

 真由はにっこりと笑いながら言う。

「変態で最低のシスコン兄さんだもの」

 ぐはっ、そうだったな。こいは俺の事を変態でシスコンだと思ってるんだっけ?

「そんくらいのセクハラは慣れたわよ」

 慣れんなよ! というかその解説はおかしい! 俺は真由にそんな事をしたことは無い! というかそもそもそんな事大声で言うなよ!

 もし誰かが聞いてたら————。

「え、多村君、妹にいかがわしい事してるの⁈」

 何でそんなジャストタイミングで山岸さんが居るんだよ! 今一番いちゃいけない人だろ!

「何で居るんですか!」

「え? あー、妹さんがいらっしゃってるって聞いてリアルでもエロゲーみたいな展開な兄妹は居るのかな? と思って来てみたけど」

 妹の前でエロゲーとか言わないでよ!

 というかそんな理由で厨房抜けれるものなのか⁈

「……いたね」

「いないから! 勘違いですから!」

 このままだと山岸さんの妄想のネタにされかねん! それはマズイ!

「いえ、ここにいますよ」

 裏切ったな真由!

「そ、その————日頃からいかがわしい事してるの?」

 何でそんなに食いついてくるんだよそんなにエロゲーみたいな展開がリアルにあるか無いかは大事な事じゃ無いだろ!

「この前なんか私の部屋の鍵をピッキングして私の下着をクンカクンカしてました」

 まじかー、妹の下着をクンカクンカするとか最低だな……あれ? 俺か⁈

「じゅ、重症だったんだ、多村君」

「待て待て待て待て待て待てーい! 真っ赤な嘘ですよ! 冤罪ですよ!」

「え? そうなの多村君?」

 このエロゲー頭をどうにか説得しないと風評被害が来る!

「兄さんは図星を突かれて否定してるだけですよ」

 お前はなんで全力で身内から性犯罪者を出そうとしてるのかな⁈

「ちなみに昨日は私が嫌がる中無理やり部屋に押入られてエッチな事をされました」

「真由! 本当にやめてくれ!」

 してないから! というか考えてないから! というか何でそんな事をスラスラと言えるの⁈ まさか実は俺は無自覚でやっていたのか⁈

「えーと、つまり僕はどっちを信じればいいのか————」

「犯罪者は犯罪を隠したがります」

「そうだよね」

 え? 今信じちゃったのかな? 何でいそいそと外に出るのかな⁈

「冤罪だぁぁぉぁぁぁぁぁぁ!」

 俺の渾身の叫びは————届かなかったみたいだ。

 あ、俺社会的に死んだな。山岸さんが言いふらさない事を祈るか。

「ねえ兄さん、それで私が言った事どれかやりたいと思ったことある?」

 事の元凶がにこやかに話す。

「それ以上俺の心を抉らないでくれ!」

「ふーん、そっか」

 先程運んだドリンクを一口飲みまたも声を上げる。

「これで兄さんは名実ともに変態のシスコンだね」

 出来るものなら大声で叫びたいよ。これは妹系の物語じゃない! ってね。

 なんて事を考えながら一階へ下ると当然の事ながら山岸さんの声が聞こえるわけで、

「で、多村君は妹さんとエロゲーみたいな展開になってたんだよ!」

 はあ、もういいよ。俺は燃え尽きたからな。

「あぁ、それは流石にないだろ。あいつ一応真面目だしな」

 立花さーん! 何て優しいんだ。

「いや、あるんですよ。昨日なんか多村君妹さんの事無理やり制服を脱がせて、縄で縛って鞭打ちしながら無理やり性的な暴力、いわゆるセッ————」

 や、山岸ぃ!

「待て待て待て! 山岸ぃ!」

 俺は燃え尽きたはずの体から力が湧きだすのを感じた。火事場の馬鹿力ってやつだな。

「うわっ! 多村君いつのまに!」

「いつのまに! じゃないですよ!」

「おい多村、今の話ガチか?」

 信じないでくれよ立花さんも!

「根も葉もありませんよ! 盛りすぎ、いやもはや盛る盛らない以前の問題ですよ!」

 第一俺はやってないしその補正はおかしいだろ! 絶対山岸の趣味だろ!

「じゃあそんな事はしてないんだな?」

「当たり前ですよ!」

 妹に恋愛感情持ってたら毎日生きてけるかって話だよ!

「え? でも妹さんがここまで出ないにしろ昨日エッチされたって」

 話盛ってた自覚あったのかよ!

「な、多村、妹にそんなこと……」

「言いがかりですから! 第一俺は妹に恋愛感情を持ってませんから!」

「おい多村、本当か?」

「あったりまえです!」

「って言ってるが山岸、本当のところはどうなんだ?」

 なんだよ立花さん本当に良い人じゃんか。

「うーん、僕は妹さんに言われた話を話ただけで……」

 嘘こけ! めっちゃ盛ってただろ!

「そうか、あたしは多村がそんな事をするとは信じられんな」

 信じないでくださいよ、シャレにならないから。

「じ、じゃあ妹さんとの話は嘘になるって事?」

 なんのメリットがあるか知らないけど俺の妹は嘘をついてたからな。

「つまり、現実に妹とエロゲーみたいな展開になる兄妹は居ないの⁈」

 そこそんなに重要じゃないだろ!

「知りませんよ! 少なくとも俺は無いです!」

「そ、そんな、実妹エンドは現実には無いんだね」

 そんな肩を落とすほどショックなの⁈

「で、多村は結局妹さんにエッチな事はしてないんだな?」

「してませんよ!」

 てゆうかしたら殺されるよな。

「でも火のないところに煙は立たぬって言うからな」

 なんでそういうピンポイントな所だけ知識があるんだよ!

「そうだね、立花さん」

 山岸復活してたのかよ。

「僕の推理を聞かせてあげよう————」

 急にカッコつけやがって。

「おそらく多村君は妹さんの事を好き過ぎて無自覚にやってるんだよ!」

 …………は?

「ちょ! 山岸さん何言ってるんですか⁈」

「な、なるほど、なかなか良い着眼点だな」

  ちょ! 立花さん何信じちゃってんの⁈

「そんな事は無いですよ!」

 立花が多村の肩に手を置きながら優しく微笑みながら一言……。

「頑張れよ」

 死にたくなったね。

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