お金って重要なんだよ
「ただいまー」
うーん、なんか打開策ね。
「お帰り変態のシスコン兄さん」
こいつは平常運転だな。
「ねえ兄さん、最近勉強どう?」
ははっ、いきなりなんてこと聞きやがる。
「まあ普通だよ」
「ふーん、そっか」
ん? 俺に近づいてきて……っちょ、
「お、おい真由! お、俺の頭を撫でるなよ!」
な、何⁈ 怖いんだけど! 手のひらに毒でも塗ってんの⁈
「つい、兄さんが可愛くて」
……なんで俺は妹に可愛いって言われてんの? これなんてプレイ⁈
「ねえ兄さん、この小テスト何?」
…………そ、それは、俺の漢字テスト……。
「へー二十四点が普通なんだね」
お、おう……それは俺のベットの裏に……というか、
「なんで持ってんの⁈ お前は俺の保護者かよ!」
「ダメ? 第一隠すのが悪いんでしょ?」
く、ぐうの音も出ないぜ!
「自慢じゃ無いけど兄さんの部屋の場所の配置は完璧に覚えてるよ」
…………あ……そっすか、
「まあいいわ、とにかくこの点数をどうにかしなくちゃね」
なんで俺は妹に成績のことで怒られてんの? めっちゃ惨めなんだが、
「という事ではい、これプレゼント」
ん? 段ボール?
「開けてみて」
うわー、めっちゃ開けたくねぇ! 絶対ロクなものが入ってないから。
「…………えっと、これ……何?」
俺が箱を開けるとそこには…………紫色の謎の飲み物があった。
………………これ……毒じゃ無いよな?
「ま、真由、まさか、出来の悪い兄を殺そうと……」
お、恐ろしい! 恐ろし過ぎる! 早く逃げないと!
「安心して兄さん、もし殺すなら自分の手で斬り殺すから」
あ……そっすか、
「この前通販で売ってた飲むだけで頭が良くなる飲み物百本買ってあげたの」
予想の斜め上来たー! というかその飲み物絶対頭良くなんないから!
「というかそのお金どこから出てきたんだよ!」
これ一応高かったんじゃ、
「そっか、兄さんには言ってなかったけど私株で儲けてるのよ」
あ、そっすか。儲けてるんですね。妹から聞きたく無いセリフだったよ。
「はあ、ありがたくいただくよ」
紫色の毒々しい見た目の割に意外と美味しかったのはまた別の話だ。
「で兄さんどうしたの? 帰ってきてから眼球の位置が平均よりも三ミリ低いよ」
なんでそんな事が分かるんだよ真由は!
「その特徴が兄さんに出る時は七割の確率で悩み事があるんだよ。何か悩み事?」
こいつ将来探偵にでもなれるんじゃ無いのか⁈
「うむ、お前には隠し事が出来ないな」
別に隠す理由も無いので今日あったことをとりあえず話す。
まあ本音を言えば真由の右手の銀色のものの正体に慄いたのだが、
「なるほどね。兄さんに賭けるなんて店長もなかなかだね」
くっ、こいつ兄のことをバカにしやがって。
まあ俺もそう思ってたから何も言い返せないんだけどな。
「なんだ、兄さんは女の子のことで悩んでたんじゃ無いんだね」
なんで女の子の事で悩んで無いとわかった瞬間に右手のブツを置いたのかな?
もしそうだったらそれで何をするつもりだったのかな⁈
「うーん、まず売り上げが減った理由は多分もう一つあるよ」
「え? なんだ?」
「ほら、先月駅前に新しいカラオケ屋さん出来たじゃん」
あ! 言われてみれば出来てたな。こいつ本当に探偵になれるんじゃ無いのか⁈
「そこに取られたのもあるってことか」
まあ普通に考えれば六十パーセントなんて異常な数字だもんな。
「うん、シスコンの割には鋭いね」
シスコン関係ないだろ! と、叫んだら殺されそうなので抑える。
「新しいお店行ったことあるけど値段は大体同じくらいだったよ」
「そ、そうなのか。じゃあなんで負けてるんだ?」
接客なのか⁈ いや、一人カラオケか!
「うーん、色々理由はあると思うよ。で、打開策なんだけど」
色々あるんだね。問題は。
「ドリンクバーにソフトクリームの機械を導入するのはどうかな?」
「そ、ソフトクリーム?」
「うん、ソフトクリーム。兄さん知らないの?」
いや、ソフトクリームは知ってるけど、って何調べてるんだ?
「ほらこれ、読んで兄さん」
「ん? えーと……え⁈ そうなのか! ソフトクリームって意外と一般的なんだな」
「そうだよ兄さん。もうそろそろ夏だしいいと思うけどどうかな?」
なるほど、でもこれ設置するのもかなり費用がかかるよな。
まあでもこのままじゃ時給が三円下がるから一応提案だけはしてみるか。
「第七回チキチキビラージュ今後の戦略どうしたっろ……」
あ、今店長噛んだね。
「第七回チキチキビラージュ、今後の戦略どうしたろうか会議!」
「「わー」」
何事もなかったのように言い直してそして誰もツッコミを入れない!
「はい、じゃあ抽選始めるぞ」
え? 俺昨日宿題って言われて考えてきたんだけど……抽選なの?
「えーと、多村」
「わあ、新人君が当たったねー」
待て待て待て、今の山城さんの棒読み度はえげつないぞ。
まさかこれ俺が当たるの確定してたのにわざわざ抽選したの?
絶対仕組まれてたでしょ! というかその茶番劇いるのか⁈
「という事で多村、案を話してみろ」
まあ昨日考えたしな(妹に力を貸して……というかほとんど妹が考えたけどな)。
「えーとですね……」
俺は昨日妹に教えてもらったことを思い出しながら話す。
「————って事でどうですかね?」
なんとか話しきれたな。
「なるほど、私は賛成だ、これを設置すれば毎日無料でソフトクリームを食べることができるからな」
店長仕事する気ないよね!
「というか多村、どこかお前の言葉じゃなかったような気が————」
とりあえずは話をそらす!
「や、山城さん、ど、どう思いますか!」
一応俺が考えたことにしておこう。
無理やりにでも話題を変えたわけだが結構怪しかったかな?
「うーん、私も特に反対する理由ないから賛成ですね」
「僕は賛成です。カラオケでアイスクリームとかなんかエロゲーっぽいですからね」
よし、山々コンビの了承は得た!
というかソフトクリームでエロゲーを連想するあんたの頭はどうなってる!
「えーと、柳葉君はどう思う?」
伝説の存在たるリブァイサアン(もちろん柳葉さんね)は一体どう出るんだ⁈
「…………」
お願いだからなんか言ってくれよ!
「なるほど——柳葉君も賛成らしいですよ」
本当になんであんたらはそれを翻訳出来るんだよ!
まあ、これはすんなりいきそうだな。あとは葵さんだけだし。
葵さん子供っぽいし何よりもアイスクリーム食べてそうだからなんとか————。
「我は反対だ」
えぇ! 思わぬ所に伏兵がいた!
「そこに白の結界を築いてしまうことにより我が魔力が封印され聖騎士達が此処に来る」
こいつの設定上は葵さん魔物だから白がダメなのか⁈
驚くほどめんどくさいなぁ!
「そして此処を嗅ぎ付けられると大いなるラグナロクが起き世界が黄昏に————」
「じゃあ全会一致で可決っつー事だな。あたしも賛成だ」
あれ? 今葵さん(理由はしょうもなかったけど)反対してたよね?
「た、立花、さん。我の意見を聞き入れぬか、幾ら冥界を治めて————」
名前読んでる時にさん付けしてるよ。そこまで怖いのか。
「黙れ」
「はい」
相変わらず弱いよな葵さんは!
まあとにかく葵さんの理由がいつもの痛いのでよかった!
「じゃあ全会一致でアイスクリームの奴を設置するのは可決だな」
なんとか宿題はこなせたな。
「多村、褒美として時給二円アップしてやるよ」
少ないなあ! いや別にそこを期待してたわけじゃないんだけどね。
「というかそんぐらいなら上げなくていいですよ!」
一応この店ピンチなんだからさ。
「え! 多村君もったいないよ!」
山岸さん食い付くねぇ!
「て、店長! その権利をぼ、僕にください!」
「ん? うーん、多村良いか?」
「まあ良いですけど」
二円くらい……ね。
「良しじゃあ山岸、時給二円アップだ」
「ま、マジっすか⁈」
うわー、二円で山岸さんめっちゃ喜んでるじゃん…………。
なんか——良いことした気分で清々しいな!