妹とは本人から見て傍系2親等の年少の女性……つまり兄さんの……兄さんの……(ポッ)
さて、舞台はそんな初バイトが終わった帰り道。
実は俺には中二の妹である真由がいるのだ。
勉強も出来て俺と違って容姿は良く、スポーツも出来て人当たりも良い。
そのおかげで毎回のことながら全校生徒の憧れの的。
俺の両親は共働きをしているため夕飯などは自分達で作って居たのだがいつからか真由が全て作っている。もちろん料理も美味しい。
詰まる所完璧超人な訳だ。
もちろん兄は妹には恋愛感情など抱かない。
逆もあると信じているのだが、まあこの際どうでも良いか。
さて、これだけ長い前置きをしたのだが俺が伝えたいのは何かと言うと……。
これは妹系の物語では無い!
大事な事だからもう一度言おう。これは妹系の物語では無い!
「ただいまー」
「あ! お帰り兄さん!」
家の奥から良い香りが鼻をくすぐる。
「今日の夕飯はカレー?」
「うん! 早く着替えちゃってお風呂に入ってね」
まあ一応可愛い妹ではあるんだがな。俺は言われるがままに風呂に入る。
「はあ、今日はいろんなことがあったな」
というかあのお店色々と破綻してるよな。
なんて事を考えながら湯船に浸かるとしばらくして頭がボーっとしてくる。
ボーっとした頭で風呂から出て真由が用意してくれたパジャマに着替える。
「兄さん、今日帰って来るの平均と比べて二時間十七分遅かったよね? また一人カラオケに行ってたの?」
別にバイトのことを言っても良いのだがなんかめんどくさくなりそうだし一応隠しておくことにする。
「まあ、今日もそんな感じだ」
今俺はカレーをリビングにある食卓で真由と共に食べている。
「————今兄さん返答が平均よりも三.五秒遅かったよ。何か隠してるでしょ」
いやー、真由は鋭いなぁ。
え? そこじゃ無いって? まあとりあえず聞いてくれ。細かい事はその後だ。
「……いや……特に何も隠して無いぞ」
真由がなじるような目線を向けながら言う。
「ふーん、本当に?」
そう言いながら真由は立ち上がるとキッチンへ行き何故か————包丁を持ってきた。
「お、おい真由。それは……なんだ?」
包丁のおもちゃ……だよね?
「これは、ウソつきの悪い子にお仕置きするための道具だよ」
真由がにっこりと笑う。
「兄さんはウソついてないんだよね?」
「あ、ああ、本当だ。ウソはついてない。だ、だから包丁を、な」
なんとかなだめるのに成功したかは分からんが真由は包丁を机の上に置く。
そして俺に向かってまたにっこりと笑いかける。
「兄さん、本当?」
その笑いをやめてくれ! 怖いから。
「あ、ああ兄貴は妹に隠し事をしない! だから————」
我ながらよくこんな嘘が吐けたものだと感心する。
まあでもこう言うしか無いよな。これじゃ無い回答をしたら後が怖いよな。
「嘘つき」
真由の後ろから先ほどまで着ていた服が出される。
「じゃあなんでこの服にいつもは匂わない女の子の匂いが付いてるのはなんで? 兄さんまさか合コンに行ったの? 私に報告しないで女の子たちとイチャイチャしてたの⁈」
待て待て待て待て! お前匂いも分かるのかよ!
っというか——。
「大前提として俺は合コンに行ってない! それはバイトの先輩達の匂いだよ! というかなんで合コンに行ったら妹に報告するんだよ!」
「そう、じゃあ一応信じる。けどちゃんと私にバイトの日時と給料明細見せてね」
こうなる事は大体予測できてたからやだったんだよ。
「じゃあ兄さんはバイトの先輩とイチャイチャしてたのかな? 私のことをほったらかしにしておいて」
「だから! イチャイチャしてない! 迷惑をかけられてただけだ!」
なんで俺は妹とこんなやり取りをしてるんだ。
毎度のことだがどうにもこのやり取りは慣れないな。
「じゃあ兄さんは私以外の女の子とはイチャイチャしてないの?」
「ああ、断じてしてない!」
なんというかここで言い切れる俺が悲しいんだけど。
「そっか。じゃあ兄さんは私が一番大事なの?」
真由は包丁を片手に持ちながら話しかける。
「ああ、真由が一番だ! だから、包丁をおいてくれよ」
真由はあからさまに渋々と包丁を机の上に置く。
「そっかぁ、兄さんは私の事が好きで好きで愛しちゃってるのかな?」
真由は再びジト目を向ける。
「え? いや、別にそんな事は————」
って真由はなんで再び包丁を持とうとしてるのかな⁈
「あ、あるぞ! 俺は真由の事が大好きだ!」
そう言いながら真由を見ると————。
「そうだよね兄さんは妹の私が大好きな変態シスコン兄さんだもんね」
そうにっこり言った。
はあ、もうそれで良いよ。
さて、大事な事なのでもう一度言おうか。
これは妹系の物語では無い!
っと、書き忘れてましたが、即日採用云々等々、細かいことはおきになさらずに!