バレました
長らく間が空いてしまい申し訳ありません。
静まり返る部屋。
と、急に目の前のスマホが着信音を鳴らし始めたのでびっくりしてしまった。
「わわっ!?」
このタイミングということは倉崎くん……私の電話番号、ではなかった。
「え?」
でもこの電話番号もアタシには馴染み深い番号だった。
「お姉ちゃん?」
どうしてお姉ちゃんが倉崎くんのスマホにかけてきたんだろう? 二人は知り合い? ううん、そんな話は聞いてない。入れ替わっていることがバレた? バレてない? 何を話したらいい? 分からない。
アタシが混乱している間も着信音は鳴り止まない。
「ふう……よし」
アタシは大きく深呼吸をして電話を取る。
なるようにしかならない。
「もしもし」
「あ、圭織? 元気してる?」
いきなり男声のアタシを圭織呼びだ。カマを掛けているのか!?
……いや、カマを掛けられていても何も問題はないか。
どうして今のアタシを圭織呼びするのか、アタシん家の状況が知りたい。
「どうして僕を圭織さん呼びするんですか?」
まずは倉崎くんモードで返事する。
「こっちの圭織?がどうも様子がおかしくてね。文字通り人が変わったかのように大人しくなっちゃったから怪しんでたんだけど、そしたらアンタからのメッセージで事情書いてるじゃない。アタシたちは入れ替わってた、って。こっちの圭織問いつめたら僕は圭織さんではありませんって白状したわよ」
「あーそういう……」
いきなりの女生活。
おとなしい彼が活発な女子を演じること。
ホームシック。
そんな追いつめられた精神状態で人に問いつめられたらそりゃあねえ。
ご丁寧にアタシも答えをSNSに、証拠を残しているわけだし。
「当たり。アタシ圭織。こっちは元気いっぱいだから心配しないで。アタシは入れ替わってる倉崎くんとおばあちゃんが心配」
「彼?倉崎くん?でいいのかな。彼たぶんPMS(月経前症候群、生理前に起こる身体的・精神的不調)ね。男の子にはこんな体調の波ないからね、動揺もあるみたい」
「だよねえ……」
もうすぐ生理だ。
生理を倉崎くんに味あわせたくはないが、どうしようもない。かといってアタシもゴメンだ。逃げれるものなら逃げ出したい。
「おばあちゃんはちょっと深刻。私たちも早めにお見舞い行った方がいいわね」
「そんな……アタシ倉崎くんのままじゃおばあちゃんに会えないよ」
「圭織の彼氏としてなら来れるんじゃない?」
「それはない」
こんなやり取りはさておいて。
最近のおばあちゃんはほぼ寝たきりらしい。
目も見えにくくなっていて、ただ意識はまだしっかりしているのが幸い、といった状況のようだ。
アタシが最後におばあちゃんに会った時は辛そうだけどまだ体を起こしてアタシたちとお話していた。
目もまだ霞んでいると言っていたくらいだった。
アタシと倉崎くんが入れ替わってまだたったの三日。
そのたったの三日で……。
「電話変わるね」
アタシがおばあちゃんのことでショックを受け黙っていると、お姉ちゃんが電話を代わった。
「四枝さん……ごめんね」
「うん……え?」
代わりに電話に出たのは倉崎くん。そしていきなり謝ってきた。何に謝ってる?
「お姉さんに見つかっちゃった」
ああ、そのことか。
「ううん、アタシが証拠残したのが失敗だったし、バレても今のところ問題ないでしょ?」
「隠し事がバレたら怖くない?」
倉崎くんはこれからどうなるかが不安なようだ。
「バレたものはしょうがない。これから気を付けよう。お姉ちゃんは仲間にしよう」
「四枝さんは強いね」
アタシが強いというより、倉崎くんが繊細なんだよ……とは言わなかった。言っていいときと悪いときがある。今の倉崎くんには酷だろう。
「流れ星は関係ないと思う。だから入れ替わったのは四枝さんのせいじゃないよ」
流れ星に願ったアタシが感じていた後ろめたさを汲み取ってくれたのか、倉崎くんはそう言ってくれた。
いいやつじゃん。
「でも次流れ星見つけたら元に戻れるようお願いしたいな」
……まあ、それでチャラにしてくれるならアタシも言うことはないけど。なんだかなー。
「とりあえずこっちの可愛らしい圭織の世話は私がするから、アンタはあまり倉崎くん?彼の生活を乱さないようにね」
ぎくり。
「……何か倉崎くんから聞いた?」
「何も。でもアンタ普段から暴れん坊だし。それに今の返答でもう分かった。大人しくしろ」
しくったぁ。
まあ、アタシとしても倉崎くんの生活を進んで乱したいわけじゃないし……。
「アンタもしっかりね」
そう言ってお姉ちゃんからの電話は切れた。
短いですが、4は書いていた文章をアップしただけのものだったため尻切れトンボになっていました。