男の子って気持ちいいっ!
「母さんおはよう」
「悠介遅いわよ。早く食べちゃいなさい」
板張りのリビングに顔を出すとエプロンをしたおばさんが洗い物をしていた。
この人が倉崎くんのお母さんか。
「いただきます」
事前に教えられた通りの椅子に座りいただきますをして自分の目の前に配膳された食事を見る。
うちの場合ほぼほぼトーストにスクランブルエッグ、サラダに100%野菜ジュースといった洋食ボリューム満点メニューなんだけど、倉崎くんの家は100%和食らしい。
今も山盛りご飯に具沢山の味噌汁、鮭の切り身に卵焼き、梅干しに海苔に漬け物とずらりと並んでいる。
これが成長期の男の子の朝食なのねっ!!
普段のアタシなら見るだけでお腹いっぱいになりそうだけど、スポーツしてた頃ならこれ位楽勝だった。
男の子になったのならもっと余裕だろう。
今だってお腹もいい具合に空いている。
鮭の皮をちょちょいとどかすと切り身を口の中に放り込む。うん、美味い!!!
お茶碗に盛られたご飯を大きくすくうとそれも口の中へ。
ああ~この塩味と鮭の香ばしさがご飯を美味しく食べ進められちゃう!!!
卵焼きを食べてみる。
うんうん、これも美味…!!
人の家の卵焼きってバリエーション豊かだよね。うん、アタシここの卵焼き気に入りました!!三つ星!!!
「おかわり!」
「はいはい」
倉崎くんのお母さんがお茶碗を受け取ってよそってくれる。
山盛りお茶碗を受け取ると、アタシはまたどんどん食べ進めていく。
10分もしないうちに食べきってしまった。
「ごちそうさま!今日も美味しかったよ!!」
アタシの讃辞に倉崎くんのお母さんが驚いたように
「普段そんなこと言わないのに、どうしたの?」
と聞いてくる。
おいおい倉崎くん、ちゃんとお母さんには感謝しないとダメだよ!
「たまにはね、準備してくる」
怪しまれてはいけないことを思い出し、アタシはそそくさと食卓をあとにした。
思ったより着替えに時間がかかった。
シャツのボタンが逆だったのだ。
それでもいつもに比べれば全然早い。シャツ着てズボン履いたらもうおしまいだ。
下着のラインを気にする必要もないし、スカートのめくれもない。
玄関の鏡で軽く髪の毛や身だしなみを整えていると、倉崎くんのお母さんが洗濯物を抱えながら通りかかって
「あら、悠介も色気付き始めたのね」
なんて言って笑って行った。
倉崎くん、キミは何もしてないのかい…?
「いってきまーす!」
そういうとアタシは二日連続快晴の空の下に飛び出した。
アタシは意気揚々と歩き出す。
重くて歩くたびに揺れる胸もなければ、誰もアタシを見ようとしない。
誰もアタシになめ回すようないやらしい目線をぶつけてこない。
こんなに伸び伸びと外を歩くなんてどれくらいぶりだろう。
何も知らない小さい頃以来ではないだろうか。
その何も知らない小さい頃ですら、変質者がいると親に聞かされ、怖い思いをしたものだ。
胸が膨らみ始めてからはもうダメだった。
ただでさえクラスの中でアタシが早熟で目立っていたのに、通学路でイヤな視線を感じたし、変質者の意味も分かって背中を丸めて怯えながら歩いていたものだ。
そうしているとかえって悪目立ちしてしまって小学校卒業までに数回、変質者のおっさんに体を触られたりアレを見せつけられたりしてしまっている。
今は背中を丸めると胸がより重く感じるから仕方なく背中を伸ばしているだけで、普段アタシが普通にしているように見えても、それはもう無意識のうちに女らしい、目立たない所作を体が覚えているだけだ。
そんな昨日までに比べて、今この瞬間は!
なんて空気が美味しいんだろう。
思わず立ち止まって深呼吸しちゃうよ!
大きく腕を振るっても胸は揺れない。
近くを歩いていたアタシより背の低いおっさんが顔を上げてこっちを見るけど、その視線にいやらしさは感じない。なんだコイツ?という不審者を見るような感じだ。
気にせずアタシは歩き始める。
今までより20cm以上高くなった視界はとても開放的だ。
周りを見渡しても人の後頭部や背中しか見えない昨日までと違って、近くを歩くハイヒールを履いたOLのお姉さんや女子学生の頭の上がすっかり開いていて歩きやすいことこの上ない。
おっと、ちゃんと足元も見て歩かないとね。女の子とぶつかっちゃうよぉ。
倉崎くんの家から中学校までは市バスで通学だそうだ。
そこそこ人の並んだバス停に並ぶとすぐにバスがやってきた。
バスはすでに人だらけで誰も降りる気配はない。
まあ通勤通学時間だもんね。
アタシはうんざりしながらも前の人に習ってバスに乗り込んでいく。アタシの後ろからも人が乗ってきて押されに押されてバスの中で中途半端に立つことになってしまった。
少し見上げた場所にある吊革を持つ。
おおおお…!!
再びアタシは、今度は静かに感動する。
バスの吊革は、女のアタシの身長だと懸命に伸ばしてようやく届くくらいの高さで、届くとしてもそんな吊革の持ち方をしていたら周囲から変な目で見られてしまう。
当然腕が上がった側のブレザーはめくれてしまうわけで、いやらしい目線に晒されてしまうことになる。
やっぱり男っていいなぁ…!!!
アタシが改めて感慨に耽り、しばらくして事件は起きた。
アタシは女子学生の後ろに立っていた。
このセーラー服は確か違う学区の中学生だったはず。
ちっちゃいねぇ、頭のつむじまで見えちゃう。
女子学生のおしりに体が触れないよう、学生カバンを間に挟んでいた。
そんな時バスが急停止で大きく揺れた。
最初は女子学生側に、次いでアタシ側に。
その時一瞬だが見えてしまったのだ、女子学生のセーラー服のえりの隙間から彼女の柔らかそうな胸の谷間が―――
ムクリ。
股間が熱くなる。
え?え?と戸惑っている間にもアレが脈打って膨張する。
あっという間に大きくなってしまった。
うそー!?
あれくらいアタシ見慣れてるのに!?
ほんの一瞬見えただけ、アイタタタタ!!?
思い出しただけで硬直したアレがさらに強度を増してくる。
カバンがあって助かった。
カバンがなかったら見知らぬ女子学生のおしりに硬直したアレをぶつけているところで、アタシは普段から嫌悪するあいつらと同じ変質者になってしまうところだった。
幸いもうすぐ停留所だ。
さっさと降りてしまおう!
…このままで?
手に持ったカバンすら押し返すほどに力強い股間。
こんなのカバン越しにも分かるんだから、歩いていたら周囲のみんなにすぐにバレる。
サル共がウキウキいつも騒いでいるから知っている。
確かこれ、すぐには治まらないはず―――
アタシが少し考えている間に、バスが学校近くの停留所に停まった。
「……」
うちの学生が多かったこともあり、目の前の座席が空いた。
アタシはすかさずそこに座り込んだ。
「発車しまーす」
運転手さんが発車を告げる。
アタシは無言でひたすら集中する。
カバンは周囲から股間を隠すように置いて刺激は与えず。
目も瞑って余計な情報を遮断し。
しばらくして。
「あの…降りないんですか?」
そんな女の子の声が上から聞こえてきた。顔を上げなくとも分かる、先ほどの女子学生だ。
その子はアタシに何があったのか、アタシに何を見られたのか知りもせず、お節介をやいてきた。
そもそもこの子、なんでアタシがここで降りると思ってるんだ。
この子の学校の男子の制服はうちと同じ詰め襟の学生服だ。
倉崎くんはイヤホンを持ってないらしく、耳は残念ながら閉じれなかった。
とにかく今は無視を続ける。まだ股間は緊急事態なんだ。
「大丈夫ですか?」
女子学生の声が耳に甘く感じる。
男子中学生に囁くべからず。アタシたち男はサルなんだぞ!
自分を心配する女の子の声なんて聞き慣れてなかったらドキドキしちゃうんだぞ!?
…なるほど。
どうやら倉崎くんは見た目通り奥手のようだ。
この子のいかにも女の子らしい声に体がドキドキしている。
体がドキドキしていると股間もドキドキする訳で。
「黙って」
アタシが彼女に投げつけた小声は思ったより低く威圧感があったようだ。
彼女も倉崎くん同様小心者だったのだろう。
アタシの声に「ごめんなさい…」と呟くとあとは静かになった。
見られただけの彼女には申し訳なかったけど、このままではアタシが変質者になってしまうし学校にも遅刻する。
彼女を悲しませたことでアレも萎えたようで、アタシはすぐに降車ボタンを押した。
幸い一区間乗り過ごしただけで済んだようだ。
バスが停まって席を立つ際、小声で「ごめん」と彼女の耳元に言い残し、アタシはバスを降りた。
ブルォォォォ
排気ガスを出しながら過ぎ行くバスを見送り、アタシは腕時計を見る。一区間だけだったので全然余裕だ。
それでもあまり遅くなってもイヤなので、いつもより歩幅を広くして歩き始めた。
おおー。
アタシより背が高いだけあって、当然ながら足も長いらしい。
景色の流れるスピードも視界も全然違う。
そしてアタシはバスの顛末もすっかり忘れ、意気揚々と校門をくぐり抜けた。
「お、おはよう倉崎くん」
「おはよ、四枝さん」
倉崎くんはアタシより早く教室に着いたようだ。いや、今朝はアタシが遅かったのか。
いつもの挨拶を立場が逆になってしているのが少し可笑しく感じたけど、アタシはこれからの話をしようとして倉崎くんを見てぴくりと眉をひそめた。
アタシの姿をした倉崎くんは隙だらけだった。
スカートが広がったまま椅子に座っているし、足だってしっかりと閉じられていなくてまるでがに股のように見える。
サマーセーターも着ていないから下着のラインは丸見えだし、胸襟も大きく開け放たれている。
恥ずかしそうに背中を丸めて大きな胸を隠そうとしているけどかえって自分で胸を抱きしめているようでいやらしく感じる。
そして怯えたようにせわしなく視線を泳がせていた。
なんだこの不安定な生き物は。
アタシは大きくため息をつく。
普通にしてくれればいいのに、その普通が分かっていない。
アタシは慌てて我が身を振り返った。
男のアタシもおかしいところはないか!?
いや、男は楽だ、堂々としていればいい。
多少普段の倉崎くんと違っても男としてはおかしくない。
倉崎くんは秘密を共有しているアタシが来た事で嬉しそうに顔が華やぐけど今はそれどころじゃない。
ふと遠くからサル共のいやらしい視線が倉崎くんに向いていることに気づく。そしてみりあの心配そうな視線にも。
アタシは視線に敏感なのかもしれない。
まずは倉崎くんに耳打ちする。
「みりあを呼んで色々直してもらって」
「色々って?」
「色々!……トイレで身だしなみを整えてもらって」
一瞬ぽやっとしている倉崎くんに怒りがわいたけど、分からないが分からないんだからしょうがない、と冷静に倉崎くんに助け船を出す。
「み、みりあー」
朝のざわめきが大きい教室で、倉崎くんの声は決して大きいものではなかったが、ずっとこちらの様子を伺っていたみりあはすぐに倉崎くんの元に駆けつけてくれた。
「あのね……」
抱きしめんばかりの勢いで駆けつけてきたみりあに倉崎くんは真っ赤になりながらも
「あのね……」
とこしょこしょ話し始めた。
みりあはすぐに
「いこっ!」
と言って倉崎くんを席から引っ張り上げるとさりげなくサル共の視線から倉崎くんを隠しながら教室を出ていった。
さすがアタシのみりあ。いい女だ。
そう言えばアタシ、倉崎くんが中に入った自分の体や下着に欲情しなかったなぁ……と一人ぼっちになった気分の教室でぽけーっと考えるのだった。
「あの、倉崎くんっ! ……一緒にご飯食べない?」
お昼休み。
自分の席で倉崎くんのお母さん特製の大きなお弁当を食べようとワクワクしていると、左隣からお声がかかった。
見るまでもない。アタシ(倉崎くん)だ。
アタシはいつもみりあと一緒に食べている。
あんまり群れるのは好きじゃない。サルは敵だけど女だって諸手を上げて味方って訳じゃない。
どのグループがどうとか噂話とかそういうジメジメした腐った女の関係も大っ嫌いだ。
そしてアタシの胸に嫉妬する女もいるのだ。勝手にしてくれ。
「いいの?」
アタシは横を向くと倉崎くんではなくみりあに尋ねる。
倉崎くんはヘタレだ。
アタシは午前中で早くもそう結論づけていた。
倉崎くんは一限の途中からずっとトイレに行きたいってヘルプをアタシに出していた。
あー、女子って男子より尿道短いんだっけ?それに気付けなかったんだろう。
アタシの体でトイレ恥ずかしい?そんなバカな。朝トイレに行ってるはず。
お互いの裸が相手に見られるのは仕方ない。
この際好き放題してもかまわない。
そう朝の間に話もついている。
アタシの代わりにアタシになってくれるんだから、倉崎くんにも役得がないとね。
ロリ巨乳とかオタクくん好きでしょ??
あとは単純に女子トイレに入るのは恥ずかしい、かな?
女子トイレくらい男ならラッキー!くらいの気持ちで行けばいいのに。いやまあアタシからすればただの個室トイレなんだけど。
アタシ?
アタシは男子トイレを満喫しました!
立ちション!!
いやぁ気楽だねぇ立ちション。
下半身を出すことなく、アレだけ出して放尿して終わったらあとは振るだけ!簡単!
女は個室に入って下着をずり降ろして終わったら飛び散った尿を拭かなきゃならない。
しかもそんなただの放尿シーンを一部の男が見たがるもんだからトイレですら気が抜けない。怪しい穴やモノがないか探すのはクセになってしまっている。
学校ですらトイレや更衣室で盗撮事件が発生しているんだから、理解出来ないし気色悪すぎる。男滅ぶべし。
それに比べて男は見る価値はないから気にもされない。
もちろん大きさを気にする男子もいるみたいだし、そう言った興味本位や単純に覗き込む奴もいるらしいが、それくらいは愛嬌だ。
倉崎くんのは……まあそこそこなんじゃないかな?
さすがに同学年の男子のアレなんて見比べたことないから分からないし、そもそも知りたくもない。
時間も場所も取らない立ちション最高!
……ご飯時の話題じゃないね、反省。
ちなみに倉崎くんはギリギリになってトイレに駆け込んだようだ。顛末は知らない。
まあ、トイレも恥ずかしがってる倉崎くんの事だからアタシに縋り付いてきたのではないかと考えたのだ。
「私からもお願い!」
両手で合掌してみりあが普段アタシに見せない女の子を見せてきた。
みりあも女の子だなぁ。うん可愛い。
そういった感情はおくびにも出さず、アタシは
「それじゃあ」
と言って机を横に動かしてくっつけた。
「今日はどうしたの?」
アタシはお弁当をぱくつきながら敢えて倉崎くんに質問する。
「うえっ」と情けない声を上げた倉崎くんは全然進まないお箸でミニトマトをつつきながら「……なんとなく?」
と上目づかいで瞳を潤ましながらアタシを見つめやがった。
倉崎くんよ、アタシの体が小さいからってそんな使い方をするんじゃありませんっ!
ええい媚びるんじゃない!!
アタシそんなに可愛くないんだから止めてっ!!
おそらく本人に媚びているという自覚がないのが一番質が悪い。
みりあも口に手を当てて「まあ」とか言わない!!!
アタシか!? 倉崎くんに話を振ったアタシが悪いのか!?
「ごめんねー。今日圭織いつにもましてバカみたいでさ」
誰がバカだ!!
ぐぬぬ。
表面上は落ち着いてお弁当を食べるアタシ。
玉子焼美味しい。
確かに今の倉崎くんはバカだと思う。
女の体に苦労しているようだ。
……やっぱり女は辛いんだ。
「席も隣だしさ、出来る範囲でいいから倉崎くん、ちょっと圭織助けてくれないかな?」
みりあが「お願い!」とアタシに頭を下げる。
アタシのために誰かに頭を下げられるなんて、やっぱりみりあはいい女だと思う。
あれ、でも……
「みり…上浜さんは、女に生まれて良かったって思う?」
アタシはつい、昨日お姉ちゃんにした質問をみりあに投げかけていた。
アタシの突拍子もない質問に思わず頭を上げたみりあは「セクハラぁ~?」と意地の悪い表情を見せたかと思うとすぐに首をこてんと傾げて「うーん」と考え込んだ。
そして
「あんまりそういうの考えたことないなぁ。人はどうして生きているのか?と同じくらい難しいね」
と答えた。そしてアタシに同じように質問してきた。
「倉崎くんは? 男に生まれて良かった?」
「もちろん!」アタシは胸を張って答えた。「男に生まれて良かったよ」
そう答えたアタシを、倉崎くんは信じられないものを見るような目つきで見ていた。
みりあのお願いはアタシたちにとっても渡りに船だったので午後からはこそこそせずに堂々と倉崎くんを助けることが出来た。
助けるとは言っても、オンナノコのちょっとした隙を見せないように助言しただけだけど。手は出せないからね。
……まぁ勉強は彼のほうが出来るようで、かなり助けてもらったんだけど。
「倉崎お前さぁ、おっぱい女に気があんの?」
ロングホームルーム後、トイレに行こうとしたところをクラスの厄介サル共に捕まった。
無視してそのまま廊下に出ようとしても、腕を捕まれていて振り解けない。周囲も囲まれてしまっている。
この体、同年代の男と比べると非力だなぁ。
まあ倉崎くんオタクだしなぁ。
「やっぱあの胸か?分かるけどよぉ、あれは観賞用だと思うぜ」
「分かる!あいつ口悪いからな!」
「今日あいつ生理じゃね?なんか変だもんな!」
「倉崎隣で良かったな、今ならアイツ落とせるぜ」
「おう俺たちも応援するぜ!アイツ落としたら俺たちにもアイツの胸揉ませてくれや」
ああウザい。
いくら中学生の男はサルだとはいえ、ヒドいサルばかりだ。
さて。
ここで下手にアタシをかばってしまうと倉崎くんの女にされてしまうのでアタシの悪口はまあいいとしてだ。
どうするのが倉崎くんらしい?
「うるさい」
「おいおいオタク、いきがるなよ」
捕まれてた腕をねじ上げられる。
どうするのがアタシらしい?
「うっせーってんだ」
「あァ!?」
アタシの言葉にサル共がいきり立ち、目の前のサルがいきなり殴りかかってきた。
顔面を殴り飛ばされるも囲いにぶつかる。
どうするのが男らしい?
「ふッ!」
「なッうぎゃああッ!!」
殴りつけてきたサル目掛け、こちらも思いっきりぶん殴る。サルが吹っ飛ぶ。
それは暴力!!!
これが正しい!!!!
これが昔から続くヒトの言語だ!!!!!
倉崎くんの体は確かに非力だがそれでも男子。そこに元ガキ大将であるアタシの知識とサッカーで鍛えた体の効率的な使い方があればッ!!
囲いのサルも手を出してくるが関係ない。ひねり潰してやる。
「きゃあああああ!!!」
女子が騒ぎ出す。
「倉崎が切れた!!!」
切れたオタクの恐ろしさを知る大人しい男子が叫ぶ。
「先生を呼べ!」
そこから先は聞こえなくなった。
アタシはサル共数匹を相手に大健闘したのだった。