修学旅行とシミ
どうして一枚しか持ってきてなかったのだろう?
持ち物全部を準備してくれていた母を恨んだ。荷物が先に着いていたホテルに確認をとったが服らしきものは入っていなかったと言う。そういえば、行く前に大きなビニール袋がおいてあったような。
「仕方ないから、先生が持ってきた予備の体操服を着ようね」
ダサいと思っていた体操服を着る。大きな文字で前に“保健室用”と書かれた上着と誰も持っていないであろう古いバージョンの緑色のハーフパンツ。せめて、ジャージならまだいいのに。体操服なんて。どこからどう見ても”やらかした子“だった。
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楽しみにしていた修学旅行。友達の京子の計らいもあって気になっていた大城くんとも同じ班になれた。最初は順調だった。東京駅に朝9:00に集合。新幹線にのり、班のメンバーでトランプをしながら目的地である京都に向かった。京都では班行動でお寺回りをした。歴史好きな大城くんとも話が弾み、満足した旅行を楽しんでいた。
私たちはあるお寺でおみくじをひいた。私の結果は大凶。大城くん初め、班のメンバーはみな笑った。
「大凶の方が逆にラッキーかもよ。注意しろよw」
「そのおみくじを木の高いところに結ぶと運が良くなるよ」
この忠告を聞き、そのおみくじを木に結ぼうとしたのが間違いだった。少しでも高いところに結ぼうするのに夢中で、上しか見てなかった。
ドッチャーン
私は池のなかに落ちた。真緑の汚い池のなかに。
周りは大パニックになった。外国人観光客は見世物だと思いは写真とる。すぐさまお寺のスタッフさんと近くを巡回していた先生が走ってきた。
「お客様大丈夫ですか?ケガはありませんか?」
「上田さん何してるの!?早く上がりなさい!!」
私は呆然として池のなかに突っ立っていた。なにが自分に起こったのかわからなかった。先生に言われた通り、とりあえず、私は池から出た。目を下ろすと私の来ていたワンピースが泥だらけになっていた。なんだか寒い。グショグショだ。ことの重大性がありありと見に染みてわかり、目から涙が出てきた。
ウワァーン、グズッ、グズッ
「すいませんトイレをお借りしていいですか?この子を着替えさせます。」
「どうぞ、何かお手伝いできることありますか?」
「ありがとうございます。大丈夫です。」
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ホテル近くの駅に学年全体で集合した。勿論、みんなおめかしした可愛い服を着ている。
私だけ体操服。しかも前に大きな保健室という文字。
「あいつ、池に落ちたらしいよ。うちの学校の恥やね。」
「好きな班になれてあいつ調子のってたもんね。いい気味。」
クラスの中心的グループがこそこそと私を見て陰口をいった。
班ごとに並んだが、班のメンバーも私から少し距離を取っている。池の水が臭く、匂いが着きたくないからだそうだ。大城くんもしょうがないといったような表情だった。
「池に落ちた馬鹿者がいる。そのせいで、明日のアスレチックアクティビティは中止になった。みなも気を付けるように。修学旅行自体中止になるなんて嫌だろう。」
学年主任の先生がそんな話をする。デリカシーがない。みながこっちを向いた。嘲笑うかのように。みんな高2なのに。ひどい。
「は?なにしてくれてるんだよ。上田」
私は男子からも反感を買ってしまった。
ホテルに着いてからも悲劇が続いた。
鞄には本当に服が入っていない。どうしよう。
たまらなくなって、先生に聞いた。
「予備の体操服、それしか持ってきてないから…今日の夜と明日もそれで過ごしてくれる?」
先生の答えは呆気なかった。仕方ない。仕方ない。私が悪いんだ。
私が涙目になっていると、京子が駆け寄ってきた。
「大丈夫?綾子。悪口なんかきにしたらアカンで。私は綾子の味方やから。」
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ご飯、本当は楽しみにしていた。ホテルの料理は初めてだった。今はご飯を食べる気もしない。
わざと他の班のメンバーの女子がケチャップが付いたチキンナゲットを私のハーフパンツに落した。ちょうど、真ん中辺り、もものつけねあたりの緑の生地に赤黒いシミが浮かび上がった。
「うわぁ。小林さんの借り物の体操服汚しちゃった。ごめん。着替えある?ごめん、、なかったかww」
どこで、その情報を知っているのか。恥ずかしさで、涙が急に出た。込み上げてきた。でも、ないても白い目で見られるだけだ。
同じ班のメンバーは私に話しかけてもくれない。見向きもしない。私抜きで話をしている。私のせいで起こられたからなのか、それとも中心的メンバーに目をつけられたからなのか、本当にしんどい。
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部屋は一人だ。部屋のメンバーはみなお風呂にいっている。私は行くなと言われた。仕方ない。着替える服もないのだから。ホテルなので着物もない。あるのはタオルだけ。お風呂に行こうとしたが、止められた。
「もしお風呂にいったら、その体操服水に濡らしちゃうよw」
それは最も怖い。着るものが何もなくなってしまう。
一人布団に入って寝た。本当ならお風呂で恋ばなをして、徹夜してトランプしてたんやろうな。なんで、なんで、なんで、落ちたんだろう。
私は泣きつかれて寝てしまった。
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二日目も悪夢が続いた。
朝ごはんを食べ終わると、皆が集合した。
「なんか臭くない?」
「そういえば上田さんお風呂に入ってないらしいよ」
「うわぁ、、そんな人やったんや、、」
「体操服も黄ばんでるし、保健室ってださww」
「ハーフパンツ汚れてるやん、漏らしたみたいww」
「やめてあげて、幼稚園児扱いはかわいそうよww」
聞こえない。聞こえない。聞こえない。聞こえない。
「アスレチックアクティビティの代わりに博物館見学になりました。」先生がそういった。
「あの、上田のせいでな」
「上田さんなんで一人だけ体操服なんですか?漏らしたんですかw?」
聞こえない。聞こえない。聞こえない。聞こえない。
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「集合写真取りまーす」
「そこの体操服の女の子。着替えなくていいの?」
皆が笑った。
「着たくて体操服着てるらしいので大丈夫でーすw」
クラス委員長がこういった。
晴れ舞台。一人だけの体操服。集合写真は一生残る。
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博物館見学は自由行動になった。本当は班のメンバーと回らないといけないのだが、私は一人で回った。皆にそういわれたのだ。
一人ベンチの椅子に座っていると後ろから女の子たちの話し声がした。私は見えないらしい。京子たちの班だった。
「綾子、まじあり得ねー、あんなん友達じゃないわ、あんな臭い女」
「仲良くしてたやん」
「本当は嫌いやってん。あのひょうきんな性格。いつかやらかすと思ってた。でも、大城くんに近づきたかったし、、一人だけ体操服なん受けるw もともと大城くんと喧嘩してもらうつもりやったんやけど、予想外。あの漏らしたみたいなシミも受けるわw」
私は愕然とした。京子まで、京子までもそのように思ってたのか。私はトイレに駆け込んだ。声が枯れ続けるまで泣いた。
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実体験が少し入ってます、、