『魔力測定』
校舎と闘技場は少しばかり離れている。流石に無言だと気まずいので、軽く世間話をしながら校舎へと向かった。
「これが校舎.........、でかいな.........」
俺たちの目の前には、まるで要塞のような校舎が佇んでいた。
「大きいね〜。こんなところで生活していくんでね私達」
……私達…! そうか! この学院は全寮制、つまりこれからアイリスと毎日同じ場所で暮らせるということ!
ならばちょっとくらい『うふふ』な展開があるのでは!?
「アラタよ顔が気色悪いぞ」
そういったのはエルだった。
……こいつがいた。
俺の妄想は一瞬にして砕けた。
「試験会場ってここかなあ?」
アイリスがそう呟く。校舎の中は広く入ってすぐのところは広場になっている。上を見上げると、10階くらいだろうか、吹き抜けになっていた。
そして広場の中央には何やら大きなローブを身につけた老婆が立っていた。
「受験者の者か? 魔力測定場はここじゃよ」
老婆が手招きしながらそういった。俺たちは老婆のところまで行った。
「魔力測定って何するんですか? できれば早く終わらしたいんですけど」
俺はアイリスと早くご飯に行きたい欲が強すぎてそんなことを言った。
「ふぇっふぇっふぇ、何すぐ終わる。ここの鑑定石に手を置き魔力を流し込むだけじゃ」
老婆がそう言いながら鑑定石とやらを指差した。
「あ、これ知ってる。確か注ぐ魔力が強ければ強いほど強く光る……みたいなやつ」
アイリスがそう言った。
なんとも曖昧な説明だがおそらくあっているだろう。しかしどの程度光るのだろうか……。
すると、アイリスが手を出した。
アイリスが手を鑑定石の上に置くと、鑑定石が眩く光った。
「おお! これはすごい魔力じゃ!」
老婆は手を叩きながらそう言った。学院側からしたら優秀な人材が手に入ることは嬉しいことだろう。
そして鑑定石の光が消えた。
「ふーー……、これでいいのかにゃ?」
「アイリス……すごい魔力だな」
「そうかにゃ? 特に魔力が強いと感じたことはにゃいんだけど」
つまりアイリスにとって魔力が高いのは当たり前だと…。負けてられないな。
謎の対抗心が疼く。
俺もアイリスと同じように鑑定石に手を置く。
「おお?」
魔力が石に吸い込まれていく。
光るか?
……しかし鑑定石は何の反応も示さない。
「ふむ……壊れたな」
エルがそう呟いた。
「おかしいのう………。予備の鑑定石でもう一度やってみなされ」
老婆がそう言いながら予備の鑑定石を空間収納から取り出した。空間収納魔法………習得の難易度がかなり高い魔法だ。このばあさん、相当な実力の持ち主のようだ………。
「じゃあもう一度………」
俺は再び鑑定石に魔力を注ぐ。………しかし鑑定石は光らない。どう言うことだ?
「老婆よ、この鑑定石とやらで測れるマナ……魔力量の上限はいくらだ?」
エルが少しニヤつきながらそう言った。
「一般的な鑑定石が確か2000ほどが上限なのでそのくらいでしょう。それが何か……?」
「やはりそうか。ならばアラタよ、お前の魔力では反応しなくて当たり前だな。なにせ上限値よりも1000も上回ってしまっているのだからな」
なるほど。確か俺の魔力量は3000だったな………。鑑定石上限を超えてしまっているため反応しないのか………。
「馬鹿な!? それじゃとその者の魔力量は3000ということになるぞ! そんなわけなかろう!」
老婆は声を荒げながら言った。
「ならば確かめてみるか?」
エルが人の姿に戻る。
「な、変幻の魔法だと………」
「これを見よ。この魔法は対象の者の魔力量を測ることのできる魔法だ。試しにお主の魔力を測ってみよう。ほれ、何か全力で魔法を行使してみよ」
エルがそういうと老婆はしぶしぶ魔法を使った。使った魔法は「ヒール」基本の回復魔法だ。しかし老婆の魔力が強いせいか、ヒールの効果範囲は広場全体まで広がっていた。
「……これでいいのか?」
「ああ。お主の魔力量は950、どうだ? 間違いないだろう?」
老婆は一瞬あっけにとられたが、すぐ持ち直した。
「………驚いた、確かにその数字はわしの魔力量じゃ。ならばその者の魔力が3000というのは………」
「ああ本当だ。試すか?」
老婆は少しの沈黙の後、口を開いた。
「いやいい。それに嘘をついていたところで困るのはそこのお前自身なのだからのう……」
老婆はニヤッとしながらそう言った。確かにその通りだが嘘でないので別に問題ないだろう。
「……アラタくんってそんなにすごい人だったの? 見た目からはそんな雰囲気全然感じ取れないのに……」
アイリスが両手で顔を隠しながらそう言った。……俺ってどんな感じで見えてるの?
「まあいいにゃ! ほら、次の試験会場に行こう!」
アイリスは俺の手を取りそう言った。
久しぶりの投稿となってしまいました……。申し訳ない!