『試験開始』
入学試験当日。俺とエルは王都の宿に泊まっていた。
「..................」
「.........アラタ、もしかして緊張.....してるのか」
「当たり前だろ.........この試験の合否で俺の人生大きく変わるんだぞ........。緊張せずにいられるかよ」
「ふむ、そういうものなのか」
.........この1ヶ月、地獄のような鍛錬を積んできた....訳ではなく、確かにキツイのはキツかったが想像していたよりも遥かに楽だった。
確かに肉体的にはたくましくなったかもしれないが、問題は魔法の方だ。実は魔法を使うなと言われ、1ヶ月間俺は一度も魔法を使っていない。
ほんとに俺は合格できる力を身につけれたのだろうか?
「そろそろ試験の始まる時間だ。エル、いこう」
俺達は宿を出る。宿を出たらすぐに魔法学院が見えてくる。
「何度見ても.........でかいなぁ魔法学院」
「昔も同じような建造物を見たことがあるぞ。一度寝床にしようとしたがそこに居た人間達がうるさいもんで寝れんかったわ」
「ふーん。そん事あったんだ」
.........どーでもいい。今はそんな与太話に耳を貸せるほど余裕が無い。
そして俺達は試験会場へと到着する。試験会場は魔法学院の校舎、校庭が使われる。さらに闘技場まであるから驚きだ。
「ここが集合場所でいいんだよな? .........人多すぎねぇか? 」
「確かに多い....が、魔力が多い者はそこまで居ない。今のアラタの方がよっぽど強いだろう」
「ほんとかそれ.........」
.........まあ気を引き締めていこう。エルの言葉が本当だとしても油断ならない。
すると校庭にあるスピーカーから声が聞こえてきた。
『こんにちは、試験を受けられる方への連絡です。第一試験を始めますので闘技場へお集まりください。繰り返します。第一試験を始めますので闘技場へお集まりください.........』
第一試験が闘技場.........これは俺の予想的中かもな。
学院の目的は人材を育てあげ、優秀な冒険者にすること。そしてその冒険者は魔物の狩りを主体に生活している。ならば試験で戦闘実力を見るのは必然となるだろう。
「あっ、そうだ。エル、姿を変えてくれ」
「何故だ?」
「俺はテイマーで登録している。さすがにその姿じゃ使い魔だと思ってくれないだろう。だからそれっぽい姿にして欲しい」
「なるほど、そういうことか。ならば.........」
エルは人の姿から一瞬にして俺の頭の大きさほどの小さな翼竜になった。
「うん、それなら問題ないだろう。いこう」
そして闘技場へと向かう。
闘技場の前で人が集まっていた。皆壁に貼ってある紙を食い入るように見ている。
「はーい! 試験内容について説明します!」
教師だろうか? 髪の長い女が説明を始めた。
「試験内容は学院の在校生との模擬戦闘となります! 戦闘の様子を見て計5人の試験官が評価します! そして....なんと在校生に勝つことが出来れば無条件合格とします! 」
その言葉に受験者達がざわつき始める。これは予想してなかった。しかしその無条件合格、決して簡単なものでは無いだろう。実際これだけいる中で合格者は毎年ひと握り。つまり在校生はそれだけ力があるということだろう。舐めてかかれない。
壁に貼ってある紙は受験者が模擬戦を行う順番だ。
「.........見えない」
人が多くて前が全く見えない。くそっ! もっと身長があれば.........。
「ん〜見えないにゃあ〜」
..................にゃあ?
俺はその声のする方向を瞬時に見る。
「じゅ、獣人!?」
「にゃ?」
やばい! 聞こえたか!? というか猫の獣人.........
か、かわいい。
「そーだよ? どうかしたかにゃ?」
「い、いやなんでもない....です! すいません!」
「にゃはは! そんな固くならなくてもいいにゃ。同じ受験生なんだから」
「そ、そうか。ありがとう」
やばい....獣人なんて見るの初めてだし、何より猫......かわいい!
「ところで全く見えにゃいのだけど君は見える?」
「俺も見えない.....仕方ない。エル見てきてくれ。君、名前は?」
「私はアイリス! ところでエルって?」
アイリスは首を傾げる。
「ああ、こいつだよ。使い魔のエルドラド。エル、俺とアイリスの順番を見てきてくれ」
「全く.....こんな時だけ我を使いおって.........」
エルが目を細くして順番を見に行った。
「かわいい〜!!にゃに今の生物!? ちっちゃいドラゴン?? 」
.........か、顔が近い! いい匂いがする! やばい! 俺女の子耐性ゼロだ!
「あれは.........俺にもよくわかんない。多分竜族だと思うけど」
「凄いにゃ! 竜族を手懐けるなんて......もしかして相当強いのかにゃ?」
「そんなことないよ.........。あっ、エル、どうだった?」
「アラタがAブロックの一戦目、アイリスがCブロックの二戦目だ」
.........一戦目、最も注目を浴びるところじゃないか。アイリスは違うブロックの二戦目か。観戦にはいけなさそうだな。
「Cブロックはちょっと遠いし私はもう行くにゃ! お互い頑張ろーねー! ええっと......アラタくん!」
アイリスは手を振りながら会場へと向かっていった。俺も手を振り見送った。
「何鼻の下を伸ばしているアラタ。すぐに模擬戦が始まるぞ。準備せい」
「分かってるよ。あと鼻の下伸ばしてねぇよ」
Aブロックの闘技場はここ。俺は闘技場の中へと入っていく。中は待合室と広場へ繋がる道があった。そして俺は迷わず広場へと足を進めた。
「この一ヶ月の成果、見してもらおうじゃないかアラタ」
「ああ。エルはなるべく手を出さないでくれ」
「ふふっ。分かっている」
そう、これは自分自身の試練。確かに俺はテイマーだが、使い魔に頼ってばかりのテイマーは弱い。この試験は俺だけの力でクリアすることがさらなる成長に繋がるはずだ。
そして広場はと足を踏み入れる。ものすごく広い。そして観客の数もかなり多い。俺は思わず息を呑む。
「よう。ようやく来たかぁアラタァ!」
「ライア!?」
広場の中央で俺を待ち構えていたのは、あの時エルに(精神的に)ボコボコにされたライアだった。
これは.........侮れない.........
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