『魔法学院への推薦』
「ああああああああぁぁぁぁあぁあ!! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!」
「ええいアラタうるさいぞ! しっかりつかまっとれ!」
とりあえず地下から脱出しようとしたわけだ。そこまではいいとしてなぜ天井が降ってくる?
どうやらエルドラドがいたこの空間、魔法で作られたものらしい。簡単に言えばエルドラド封印専用空間みたいな感じだ。
俺はエルドラドにがっしり掴まりなんとか地上に出た。
「はぁ、はぁ、ま、また死ぬかと思った.........」
エルドラドはさすがに何一つダメージがないようだ。しかし地上に出た瞬間エルドラドの動きがピタリととまる。
「.........これが.........地上.........」
エルドラドは空を見つめている。
.........俺にとってはなんともない風景だが、エルドラドにとって3000年ぶりの外はどう見えるんだろうか.........。
「なんか.........しょぼい」
「は?」
「3000年前と全然変わっておらんではないか! もっと予想外の風景を楽しみにしておったのにぃぃ!」
.........なんだコイツ。俺はほんとにこいつの封印を解いてよかったのだろうか.........。
.........しかし目立つ。エルドラドの大きさは約20メートル。こんな姿で家に帰れるわけがない。
「エルドラド、何か姿を隠す魔法とか使えないのか?」
「使えるぞ。しかしその魔法を使った場合アラタも見えなくなるがいいのか?」
「いや、だめだ.........。じゃあ小さくなる魔法とかって...あったりする?」
「小さくなるは無いが、形状を変え小さくなることは出来るぞ。それこそ人間のように」
便利な魔法だな。というか普通に使えるというのがおかしいはずなんだが....。今日の俺は感覚が麻痺してるな。
「じゃあその魔法を使ってくれ」
「わかった」
エルドラドがそういった途端、エルドラドが黒い風に覆われる。
「うわっ」
黒い風なんか見たことない俺は少しビビる。そして直ぐに風は散りエルドラドがでてきた。
「って! ちょっ!!」
俺は手で顔を隠す。なんとエルドラド、女の子となって出てきたのだ。しかも裸で。
「どうだ? 変なところはないか?」
「.........」
綺麗な黒髪に透き通るような赤い瞳に白い肌。うん美少女ってやつだな。やつなんだが.........
「胸がない.........」
「当たり前だろう? 性別はないのだから」
「え? 性別ないの?」
「ああ、性別ないぞ」
..................けっ。女の子じゃねぇのかよ。ちょっと期待しちゃったじゃん。
「とりあえず今はその姿で行こう。でもさすがに服がないまま帰路に着くのはなあ.........」
「それなら問題ない」
エルドラドがそう言った瞬間、エルドラドの皮膚が変形し服となった。
「どうだ? 鱗を薄くし服にしてみた。似合うか?」
「ああ、うん。もうなんでもいいや」
あまりに規格外すぎて常識が通じない。これは色々と苦労しそうだ.........。
ついさっきまではドラゴンのテイマーになれたとか思っていたが......これはドラゴンが可愛く見えるレベルの使い魔だ。
やばい.........後悔してきた。
俺の家は小さな集落の中にある。家が十軒程しかない小さな集落だ。小さいだけあってみんな仲がいい。
「ただいま母さん.........ちょっと話があるんだけど.........っておじさん!?」
玄関を入るとそこに居たのは母さんと街で冒険者ギルドを運営しているカルディおじさん。
「あらおかえりアラタ! 」
「おお! アラタくん久しぶり。ちょうど君のことで話をしに来たんだ」
俺の事? いや今は俺の事よりこの後ろにいる神滅龍とやらのことをどうにかしたいんだが.........。
「あらアラタ、その子は?」
「ああ、紹介するよ俺の『使い魔』エルドラドだ」
俺のその言葉を聞き母さんとカルディおじさんはいきなり黙る。あれ? なんか不味い事言ったかな?
「あっはっはっ! 女の子を使い魔だなんて! アラタ〜いくら使い魔が出来ないからってそんな冗談は通用しないわよ〜!」
「ハッハッハ! アラタくん面白いことを言うじゃないか! 実はワシも『嫁さん』という名の使い魔がいるんだなこれが!! ダッハッハッハ!!」
母さんとカルディおじさんは涙を流しながら爆笑した。
や ば い 。す げ ー な ぐ り た い 。
「で? その子は?」
母さんは信じてないようだ。カルディおじさんも。竜の姿を見せれば証明できるだろうが騒ぎになるだろうし.........
「はぁ、友達だよ.........さっき友達になった」
これが無難か.........。どうせ話したところで信じてもらえないだろうし、今はこれでいい。
「それより、俺に話って?」
「ああ、ワシからしよう。アラタくん、君は今年で16だろう?」
「はい...そうですけど」
「ちょうどいい歳だ! アラタくん、魔法学院へ行ってみないか?」
「魔法学院.........ってあの王都の!?」
王都の魔法学院、魔法に対する知識、そして行使の仕方まで最高峰の教育を受けられる場所だ。
「そう、あの王都のだ! 一流のテイマーを目指してるんだろ? あそこの入学は15からだからそろそろいいんじゃないかと思ってな! ほれ、推薦状」
「.........本当だ。カルディおじさん、本当に行けるの!?」
「ああ、ワシが話を通してやる。さあ、どうする?」
「もちろん行くよ! 断る理由がない!」
「よし分かった! じゃあ早速ワシはこの推薦状を王都に届けてくるぞ!」
やった! 正直うちの家庭環境じゃ行けないと思っていたがこんな話が舞い込んでくるとは! カルディおじさんに感謝しなくては!
「アラタ〜我を忘れるでないぞ〜」
あ..................
後ろからボソッと聞こえる竜の声が不安の種をばらまいた。