神代桜の立ち位置
「次はリーダーで終わりだ、さぁ……、って。――ちょっ! なんだあれっ?」
その四人はまるで糸で操られているかのようにボロボロのまま立ち上がる。
「師匠! あれ、アイツ等。……もしかして意識、無いんじゃないすか!?」
「ゾンビかよ!? こんなのあたしも見たことねぇぞ……」
「……なんと言うことでしょう!」
全体的におかしい雰囲気が立ちこめてる。その中でもあからさまにおかしいが見える。
見えないけど見える、一番オカシイの濃いところ。
ぼんやりだけど、ちょっとだけだけど。
それでも初めて、おかしいの形が具体的にわかった。これは、紐っぽい。
「華ちゃん! 倉庫右の窓! おかしな紐!」
「サウザンナイブスっ!」
私の窓、と言う言葉に反応した華ちゃんは、右手を振り上げ砂のナイフを飛ばす。
無数のナイフが倉庫の窓に殺到し、窓は枠さえ残さずに消し飛んだが、おかしなものはおかしなままぶつ切りにされ、そして。
立ち上がった四人は糸が切れたように倒れ込む。
「ありがとう、桜!」
「多少は役に立たなくちゃ。私達、バディだもん! ね?」
「うん!」
パン! ハイタッチ、お互いの右手が鳴る。
「アヤメ、これはどういうことだ! なんで意識がないとは言え人体を操れるっ!」
「おそらくサプライラインを自分につなぎ替えて、魔力供給をしつつ意思も一緒に送り込んだ。……これは禁断の黒魔法、傀儡人形ですわ! 魔法行使条件違反、いえ、明らかな国際魔道条約違反です! 世界的に見ても30年以上使われたことが無いというのに、まさかこの日本で……!」
「会長が臨場しなきゃヤバいんじゃねーのか? あんなのを無詠唱、儀式無しで即発動するなんて、多分魔法の大本は、かなーりヤバい“アイテム”だぞ。警察を介入させて良い案件だ。……なんで高校生がそんなの持ってんだ? 流したのは何処の国だ!」
「当然ですが何故か、などとはわたくしは存じませんし、出所が何処の国かなどはもっと知りません!」
「サプライラインは多分、予備がある! まだ電池切れじゃない! ヒイラギ、出過ぎるな!?」
「はい!」
「桜さんは今のうちに、仁史君ともっと後ろに!」
あやめさんの声に従い、仁史の脇の下に手を入れてズルズル後ろに引きずって。
下がりながら考える。
洋書の古本として魔道書が日本に紛れ込んだ。金銭的にはほぼ無価値。
なので高校生がお小遣いで変える額で古本屋に並んで、ウチの制服が購入した……。
ここまではおかしくない。
「しょうがねぇ、事情聴取がしたかったが、こうなりゃぶっ殺してアイテムはそのあと探す! ――ランス!」
カキツバタさんが放った水の槍はニヤニヤ笑いの男の直前30cmで文字通りに雲散霧消する。
「相殺でも破壊でも無く、弾いた……? あたしの全力のウォーターランスを?」
「ぶっ殺すんじゃ無かったのか? お姉さん?」
「へ? わっ! ――なんだこれっ!?」
「焼畑農業! ……上手くいったぁ。師匠、無事っすか!?」
いきなり見えない何かに襲われたカキツバタさんの目の前、土と石ころしか無い地面がいきなり火のカーペットのように燃え上がる。
但し「なにか」があったところはそこだけ数カ所、火の手が大きく上がる。
「ヒイラギ、ナイスっ! ……アヤメ! これはなんだ、属性が見えないぞ!?」
「多分魔法なのですが属性が混在しています! 魔法と言うよりは呪術に近いものですっ! 恐らく基本はアイテム由来の呪術、だから向こうはフィールドを展開したままで良いのです! 魔法結界は、それならば基本スルー出来ます。アレは、魔法では無く呪詛の類なのですわ!」
アイテム。
華ちゃんは言った。――強力なアイテムをチャージングアウト、電池切れの状態で持ち歩いているなんて考えて無かった、と。
こないだの華ちゃんのスマホとおなじ。充電無しなら使えない。
アイテムだってそこは一緒のはず。魔力の充電無しなら魔法は発動しない。
両方とも考えるまでも無くそれは当たり前のこと。
「確かに俺のパワー自体はたいした事は無い、だが5,6人まとめてどうにかするなんてのは簡単なんだぜ? 力でたたき伏せてみるかい?」
「アヤメ、二人で正面に立つ、弱気になっちゃダメだ! ヒイラギ、クロッカスの前に入って魔力の充填完了まで楯になれ。魔法戦でアンクラスドに守ってもらって、その上更に怪我をさせるとか、そんな訳には行かないぞ!」
元々アイテムの持っていた魔力は充電器に収まっているし、既に充電ケーブルのアダプターはさっき壊した。
ならばあとは本人とガス欠のアイテム、それしか残っていない。
魔法が発動する以上、カキツバタさんが言う通り。もう一組アダプターがあるんだ!
それに。
そもそも魔法の源であるはずのアイテム、魔道書は何処!?




