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真説・公園の魔法使い  作者: 弐逸 玖
うつくしヶ丘高校の校舎裏 = 一〇〇人殺しの魔道書 =
55/66

魔法の充電ケーブル

 ……事前の話なら主任執行者チーフエンフォーサー、つまり責任者兼攻撃担当はあやめさん。

 言葉で説明出来ないならば。華ちゃんの横を通ってあやめさんの隣に出る。



「おい、桜!」

「桜! 出ないで!!」

「構いませんが、一五秒で下がってください?」

「あやめさん! おかしいところ、見つけました!」


「わかりました。――桜さん、目標を指さして! バリアアウト、……スラッシュ!」

 私が指をさした場所に正確に空気のブーメランが飛ぶ。おかしなものを叩き切る。

 何かしら茶色いものが見えてくる。

 板? 完全に見える様になったそれは壁に立てかけられたまま真っ二つに叩き切られていた。

 ……あれって、ウジャボード!?



防壁ブロッカ再展開リストアっ! 桜さん、ありがとう。――下がって!」

「ふざけんなっ!」

 まばゆい光と共に分厚い鉄の板を叩いたような音が響くが、ガラスの砕ける音はわずかにしか聞こえない。


「わたくしの結界が割れずに耐えた? ……やはり先ほどの手応えはピットフォールからの充電ケーブルサプライライン、そのACアダプターディスチャージバルブでしたか。単なる視覚障壁に惑わされるとは、わたくしとしたことが……」


 華ちゃんの後ろに回って彼女の背中に手をかける。

「……大丈夫?」

「ごめんなさい、私は相棒なのに、はぁ、気が付いて、あげられなかった。桜は違和感が見える。……はぁ、は、初めから私は、知っていたのに」


 そう言いながらゆっくりと華ちゃんが立ち上がる。

「無理しないで。……私はバカだから伝え方を知らない! 華ちゃんは悪くない!」


 魔法使いの電池は人の意思、お休みの学校は人口密度が極端に薄い。

 充電効率はすこぶる悪い。

 その上華ちゃんは、渾身の結界を力任せに叩き割られたことで大ダメージを受けた。

 果たしてダメージも、充電することでどうにかなるものなのか?


 一方向こうは今まで満充電のまま急速充電器にケーブルをつないで本体の電池は使っていなかった。

 異常なパワーはもう無いとして、今のところは明らかに不利だ。



「サプライラインを作る為に一ヶ月以上かかったのですね……。でも、残念なことですが、大事な充電器は壊れてしまいましたわね。4属性のハイパー複合弾はもう撃てませんわ」

「充電が切れるまではこっちのターンだ! フィールドはさっきより脆いようだし、連発だったらどうだ!」


「お姉様! 左の二人のみ、きます!」

 盛大にガラスが砕ける音、それとともに今度はあやめさんが膝を突く。そして。

「がっ! ……2属性複合弾だけでもまだ、これほどにっ!」

「右からも来ますっ!」

 華ちゃんの悲痛な叫びが聞こえる。音から言って既に結界は砕けちった。元から見えてはいないが、もう身を守るものは多分無い。



 死ぬ前は時間がゆっくりに感じられるんだそうだ。

 目の前の二人が右手から放った光が一つにまとまり、2m以上ある巨大な光の球になって近づいてくる。


 明らかにあやめさんを狙ってる風ではあるが、間違いなく全員巻き込まれる。

 せめて華ちゃんの楯に、と立ち上がった瞬間、私の横を影がよぎる。

 ……アヤメさんの前に飛び出すのは!


「仁史っ!」

 ガラスの砕ける音、鉄板を叩く音、何かが崩れる音。石がこすれ、木材がきしむ音。

 これらが全て混ざった音がして、光はすぐに収まる。そしてあやめさんの前には。



 またしても半分焼け焦げなながら。それでも服を焦がすくらいで大きな怪我も無しに。

 仁史は、腰を落として両の腕をクロスして。

 あやめさんの前。防御の姿勢で立っていた。


「……大丈夫、っすか? 先輩?」

「ひ、仁史君 あなた!」


「フィールドも無しに合成魔法を直接相殺した!? お前、なんだ、なんなんだっ!」

「残念ながら、ただの人、ですよ。自分でも、そりゃあ残念な、くらい、に、ね……」

 そう言うと彼は両膝から崩れ落ち、あやめさんが倒れないように支えつつ、今度は両膝を着く。


「ついでに空間軸を狂わせて狙いをずらした上に、時間を引き延ばして相殺の時間を稼いだのはお前か、モデル女子っ! 時空のエレメンタラーとはなっ!」

「……え? ……あ。――ふっ。わからないと言うなら、その薄汚い口を開かないで、正直、あなたの声は不快だわっ!」


 華ちゃんは多分やってない、次の標的にならないように庇ってくれただけ。

 そう。これについては全く同じ事を華ちゃんにも言われたことがあるし、だから。

 多分私なんだろうけど……。 


 

「しかぁし。これで全員電池切れ、充電もできねぇ。なら、もう合体攻撃も要らないし、なんならこっちは男五人だ、魔法だって要らねぇんじゃねえの?」


 そんな話はもちろん聞いたことも無いけど、もしもあやめさんが合気道の有段者でも、そこに驚きはしない。但し相手の数が多すぎる。

 直接暴力の行使に出てくれば。どう見ても、勝てない。


「お嬢様が風使いで時空使い。モデル女子は土使いで結界師、もう一人は目が良いようだがせいぜい結界師の見習いだろ」

 ほぼあたり。野良のはずなのによく見えてる……。



「しかも前のお二人さんは大層お疲れで唯一の男子はダウン。へっへっへ……。お前ら、せいぜい嫌われねぇように優しくしてやれよ? 俺はそのうちに充電ケーブルを直す」


 前に立つ四人が、ふらっ、と一歩前に出る。


「先ずは一年から可愛がってやれ、大怪我とかさせんなよ? 楽しみが減るからな」

 あやめさんは充電中、華ちゃんは大ダメージでフラフラ。

 仁史は気を失い。動けるのは私だけ。


 魔法で来ないとしたって三年男子四人相手、素手の私に、何が出来る……?

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