忙しいお昼ご飯
「確認直後に出入り出来る場所には“出入り検知”を仕掛けたが、その後出入りの兆候は無ぇ」
つまり、今もその5人は例の場所に居る。と言うことになる。
いま、落とし穴を仕掛けた人達が、学校の敷地内に、居る。
「しかし“目”の反応はまだ」
「ダミーをわざと位置のずれたところに置いておいたんだ。潰されたのはそっちだが。……但し、お前の目玉からコピーをとったヤツだから。すまん、お前の気配はバレた」
ついに落とし穴を作った張本人が出てきた。
しかもルッキングファラウェイを潰した。
「今日中に処理をしてしまうなら、それは気にする必要さえ無いですわ。……確かに緊急事態ですわね」
「必要以上に頼もしいこったな、ウチの部長様は」
大葉さんの言うところの“目玉”自体はそれほど高度な技では無い。けれど、器用な人でないと作れないし、気がつけない、そう聞いた。
それに気が付いても結界の一種、技術の無い人には、作れない以上に壊せない。
ルッキングファラウェイがなんであるか、わかった上で潰すだけの技量がある。
魔法使いの上に結界師。
その辺の野良魔法使いと同じ対応では不味い。と言う話なのは、私でもわかる。
「気が付かれないように設置したはずの結界のシンボルも、位置を微妙にずらされてる。間違いなく知識がある。セミプロとはいえ、あれ程の術者がマークされてねぇとはな。各方面、鍛え直しが必要だ……。この件が済んだら、だがな」
――どんな人ですか? と聞かずには居られない。
私達は制服を着ているのに、図書室以外にはここしか居場所が無いくらいだ。
外部から入り込めるわけは無い。だったら。
「男子生徒が五人。ネクタイの色を偽装してなきゃ全員3年生だ」
やっぱりウチの生徒……。
「とにかく早急に対応を致しましょう」
「まて。今、振興会にはグレード3がいねぇ、その上、学校に居るはずの諜報課も、今既に魔道書輸入の裏を取るため有明と横浜だ。アイリスも動けねぇが、幸い今すぐ動く気配は無い。せめてクロッカスが戻るのを待つ。アイツの結界は絶対必要だ」
「と言うことは」
「あぁ。現有戦力をもって、この場で何とかしよう。神代ちゃんと南光君は午前の内に本部に……」
ブゥ、ブゥ、ブゥ。バイブの音が変に響き、大葉さんは慌てて作業服の胸ポケットからスマホを引っ張り出す。
「はい、大葉。――あ、はい。お疲れ様です! ――はい。クロッカスを待って午後一番の予定で、――は? しかし状況的にそうなると護衛などほぼ不可能で。――良いんですね? ならば本人達にも伝えます。ところで……、えーと、……あれ?」
続けて何かを言おうとした大葉さんだが、電話は先方から切られてしまったらしい。
彼には珍しく、――はぁ、とため息。
「会長、ですか? 今のお電話は」
「あぁ。ミッションの難易度が上がった」
「……と、仰いますと」
「神代ちゃんと南光君。両方執行に帯同させろ、との事だ」
「――そこに居るのでは西からは入れない。正面から突破するより他に道は無い」
お昼過ぎの東屋。
ついに全ての補習を受けきった華ちゃんが戻って来て居る。
その華ちゃんは、話を聞きつつあっという間にお弁当を食べ切って、お弁当箱を袋に仕舞いながら大葉さんに聞き返す。この辺の割り切りと対応はプロの手際。
たった30分で、お弁当と打ち合わせをほぼ終わらせつつある。
「そういうこった それに今回は二手に分かれる余裕も無ぇ。相手は五人、こちらは俺とお前の他、アヤメちゃん、俺を除けば実質2人。あとで合流するはずのアイリスを入れても三人、専任結界師も無し。……それで全てだ」
「さらに桜と仁史君を連れて行け、……と?」
「俺をそういう目で見んな。会長の命令だっつーの」
怪訝な顔をした華ちゃんはふぅ。吐息を吐くとあやめさんに向き直る。
「ねぇ大葉さん、すぐに突入するんですか?」
「何か新たに工作されると不味い、できる限り早く手を打ちてぇのが本当ではあるが。……神代ちゃん、どうした?」
そう、まだ委員長とその先輩が校内にいる可能性がある。そして。
「大葉さんは聞いてないですか? 今日は二時で完全下校の指示が出ています」
「そうなんですの? わたくしは聞いておりませんでしたが」
「そうか、サブグラウンドの照明のメンテが三時からだったな……」
道路を挟んだ敷地だが、駐車場は足りない。
だから、作業に直接使わない車は本校舎側の来賓駐車場を使う。
工事の人達が敷地内で工具や材料を持って移動するから、危ないので生徒は帰れ。
本校舎側でないから大葉さんの担当ではない。
だから、予定が頭からごっそり抜けていたらしい。
「その、大葉さん! あと40分、待って貰うわけには行かないですか……!」
既に生徒の気配はだいぶ少なくなったけれど。
「第三者のリスク軽減が第一。……仕方があるまい、そうだな? 執行部長」
「……情報の提供を感謝しますわ、桜さん」




