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真説・公園の魔法使い  作者: 弐逸 玖
うつくしヶ丘高校 本校舎三階の図書室
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知識は力なり

「ところで桜、聞きたいことがある」

「今度はなに?」


「いやいやそういう話じゃ無いから、構えんでくれ」

 赤くなるな! こっちまで恥ずかしいわっ!


「……昨日の話のなかでわからん単語があった。教えてくれ」

 そう言うと湯飲みを持って、私の座っている席の隣に場所を移す。

「昨日、イジャオード? とかって言ってたろ。お前あれ、知ってるか」


 私の目の前にある大葉さんのPC、そのスイッチを横から入れつつそう言う。

「あのさぁ、普通に自分で調べたら?」

 ――魔法でわかんない話はなるべく先輩にその日のうちに聞くようにしてるし、用語なんかもわかる範囲では調べるんだけどさ。そう言いながら持ってきた湯飲みを傾ける。

 それなりに華ちゃんに近づこうと必死なんだね。そこはわかる。


「昨日調べても出てこなかったんだよ」

「あんまり気にしてなかったけど多分言葉が間違ってる。ウジャボードだったと思うよ」

「どっちにしろ、聞いた事無いな」

「私も知らんなぁ」

 気にしなかったから、そもそも調べてもいないし。


 そう言いながら立ち上がった検索窓に、そのままキィボードを叩いて。

 言葉を、言葉を……。


「ちっちゃい“ヤ”ってどうするんだっけ、これ」

「xya。つーかはじめっからjaで良いんじゃねーの?」

「だったら自分でやんなさいよ!」


 検索であがってきた画像を適当に開いてみる。これは。

「ウジャボード、これって。……西洋風コックリさん的な?」

「だね。……欧米だからエンゼルさんと言うか」

「そう言う問題か?」


 アルファベット26文字に1~0迄の数字、YESとNO、そしてGOODBYの文字。

 こう言うのは何処にでもあるんだな。


「一〇円玉、使わないんだね」

「外国だからな」

「そうでなくて。……でもこれが落とし穴の基礎になってるなら。あの辺に埋まってるのかな?」


「落とし穴、ピットフォールって言葉自体、ものが魔法だから見た目通りかどうかわかんないからな。例えば壁に張ってあったりとか、木に吊してあってもおかしくない。それに、過去そう言う例があったと言う事で、実際これかどうかわかんないしさ。大葉さんもロッカーが“落とし穴”になってた、つってたろ?」


「例えば誰かが作ったコックリさんの紙だってあり得る、ってわけか」

「思い入れがあれば、人生ゲームだって構いはしないわけだろ?」

「そこまで入れ込んでは、やらないんじゃないかなぁ」


「モノは何でも良いんだけどさ……。コックリさんでもエンジェルさんでも、破けちまうんじゃないのか?」

「ノート破った紙よりは頑丈そうだよね、厚紙とプラスチックで出来てるし」


 紙では媒体として持たない、とは華ちゃんが言っていたが。

 ――それに。言いながら仁史は、椅子に着いているキャスターですいっ、と後ろに滑っていくと机から離れてクルクル回り出す。


「わかったところで何も出来ないんだけどな。現場には先輩さえ接近禁止なんだから」

「知らないよりはマシじゃ無い。知識は力、でしょ?」

「誰の言葉だっけ?」

「知らないよ。中学んときにあんたが言ってたの! ……無責任な男だな!」



「knowledge is power、知識は力なり。フランシス・ベーコン、イギリスの哲学者ですわね。中学の時点でそんな言葉を知っているなんて、仁史君はやはり読書家。たいしたものです」

 さっきまで仁史が居た机にあやめさんが微笑みながら座っている。

「いや、なんかに書いてたの読んだだけで。――先輩、良くスラスラと出てきますね」


「華さんがね。――あぁ見えて彼女、実はことわざとか名言が大好きなの。……なんでも知ってる物知りお姉さんの役を務めるのも、これで結構大変なのですよ? ふふ……」


 人は見かけによらない、と言うか華ちゃんの場合は言葉での保証が欲しいんだろうな。

 自分のやってる事は間違って無い。だって昔のエライ人がこう言ってる。

 知識は力なり。

 だから今、力不足を感じた彼女は補習会場で筋トレをしている、と。



「ところであやめさん、今のところ動きは?」

「一度大葉さんが見えただけ。お休みの日にわざわざ学校にきて、あんなところに好んで行く人もそうそういないでしょうけれど」

 ただそれがいたなら、その人は“魔力の落とし穴”を作った人なのかも知れない。

 可能性があるから、今だってあやめさんが監視している。


 前に華ちゃんが、魔法は基本見通しでしか使えないと言っていた。

 “目”を置いてきたあやめさんが今、どれだけの負担になっているかはわからないが、法則からズレたことやってるんだから、かなりキツいはずだ。


「ところでお二人さん」

「はい」

「華さんがこちらに来るまでまだ一時間以上ありますし、休憩所でトランプを見つけたので、なにかやりませんか?」


 と言うとどこからともなくトランプをとりだしてまるでマジシャンのように手際よくシャッフルしてみせる。滅茶苦茶器用だ。


 魔法から一般教養、常識に居たるまで。この人が全方面に才能があふれているのはなんでなんだろう。しかも隠れ巨乳。神様は不公平だ……。

 なんか一つくらい、属性を私に分けてくれくれませんか……?


「でもババ抜きとか大富豪って言うのも」

「セブンブリッジやポーカーはお二人はルールを知っていますか? ――ふむ、神経衰弱と言うのもちょっと芸が無い感じですわねぇ。……そうだ、ならば。普通に七並べでも致しましょうか」


「先輩、パスは3回、で良いですか?」

「あやめさんはトランプなんかするんですか?」

「任務上、事務所に待機。なんていう事も結構ありますからそれなりには。特に七並べは性格の悪い人が強いって言いますよね? 執行部でも総務でも。誰もアイリスさんに勝てる人が居ないんですよ。ふふ、うふふ……」


 まあ、ねぇ。あの大葉さんの口をほんの数言でふさぐんだから、その辺はさもありなん。

「ならこのメンツなら桜が強いんじゃないすかね」


 そして私がどうにか角の立たない突っ込みを探しているうちに仁史が言葉をつなぐ。

 また助けて貰っちゃったな。……仁史本人が自覚してるかどうかは置いといて。

 なにも言いたくなかった理由はただ一つ、


 だってそう言う前フリがあってこのメンツ。どう考えても一番強いのは。

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