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真説・公園の魔法使い  作者: 弐逸 玖
うつくしヶ丘高校 本校舎三階の図書室
45/66

男女の距離感

 あのねぇ。……全く隠せてないっつーの

 普段そう言う噂は気にもしないくせに、華ちゃんに限ってそんなどうでも良いネタみたいな話、気にするとかさ。


 ……みえみえじゃん。

 中学の、あの時だってそうだったよ。バレバレなんだよアンタ。



「はぁ。……真面目に話、して良い?」

「ダメな理由があると思うか?」


 だからまぁ、本当のところを少し教えてあげる。

 だって、あれだけ男性を毛嫌いしている華ちゃんが、男子の中で仁史だけは、その存在を唯一認めているのだし。


「華ちゃんはね。彼女は、自分のせいでは無いにしろ、今まで学校に行ったどころか、普通のお友達がいたことが無かったんだよ。……だから振興会の人達とかあやめさんは居たけれど、学校のお友達なんて。当然居なかった」

「その辺はなんとなく前に聞いた」



「人との距離の取り方がわかんないんだと思うんだよ。だってクロッカスは野良魔法使いを捕まえて、ご飯を食べて、振興会のソファで寝る。それで良いと思ってたんだから。それ以外の世界も、他の人間も。――自分には一切関係ないって、本気でそう思ってたんだから」

「ハードボイルド過ぎだ、女の子の生活じゃ無い。って、前におまえに言われたって言ってたな、そう言えば」


「けれど。ハードボイルド探偵みたいな生活をしていたクロッカスは、華・サフランに成ってみて困っちゃった。世の中全部、自分に関係があるってわかっちゃったから」

 振興会のビル、その前の道路、自動車、駅、鉄道、列車に乗り込む人達。そして学校。


 彼女は女子高生になって、気が付いてしまった。それら全てが間接的には全て、自分に関係のあることなのだと……。


「関係ないんだと思って一五年も生きてきたのに、ここに来て初めて。世の中全部が自分とつながってるんだって、それに気が付いちゃったから」

 むしろ仁史に関して言えば、コイツは毎日会っているのに、キチンと彼女との距離をとってくれている。


 華ちゃんとしてはリアクションの取り方がわからない、みたいな感じなんだろうな。


 今の華ちゃんには多分男女間の好き嫌いなんて無い。

 好き、があるとするならば私やあやめさんと同じベクトルで仁史も好き。

 でもこればっかりは今現状ではどうしようも無い。



「だから、華ちゃんはね。……難しいよ、きっと。時間もかかるし、手間暇もかかる。上っ面の言葉なんか絶対に届かない。有り体に言って、きっともの凄く面倒くさい女の子」

「いや、俺はそう言う……」


「今すぐなんて、それは無理。わかるでしょ? ――だけど、いつに成るかはわからないけど。少しずつ時間と手間暇をかけて仲良くなって、そして心からの声をかけてあげるなら、そしてそれを面倒くさいと思わないなら。それなら彼女は聞いてくれるし絶対届く。あんなに純粋で純情で無垢で真っ直ぐなんだよ?」


 ――あんな子は見たこと無い。あり得ないくらい良い子なんだよ、華ちゃんは。


「あのさ、桜。俺……」

「なーんてね、良いじゃん。誰にも喋らない、内緒。黙っとくよ、もちろん華ちゃんにもね。影ながら見守る、それ以上は噛まない。本当のところ具体的にあんたがどう思ってるかだって、興味がないとは言わないけれど、知らないし、聞かない。……あとで私のせい、なんて言われたらたまんないもん」


 ――従姉妹同士は結婚できるの? なんて華ちゃんに真顔で聞かれて困るしさ。

「お茶、いるでしょ? 入れ直してくる」

 そう言って事務所の隅のシンクに逃げる。


 いつかのように私のせいで、とは。

 それは絶対に言われたくない。特に華ちゃんには。

 でもどうだろう。



 なんか仁史は、コイツはいつでも隣にいるのが当たり前で、兄弟というか親友というか。

 見た目は私が完璧美少女華ちゃんに敵うわけ無いし、そして彼女は勉強は出来ないがバカでも無い。


 魔法使いとしてみれば日本では三指に入る振興会のエース。

 それに誰より私は知っている、純粋無垢なあの笑顔。

 その上、私は従兄弟だし。そもそも論なら、勝てるところなんか何処にも無いのだ。


 でも私だって、最低限法律上は四親等は結婚できる、とかそういう……。

 あれ?……違う、そうじゃ無い。そういう事じゃ無かったはずだ!

 はず。なんだけど。どうなっちゃったんだろ。

 何処に華ちゃんと張り合う必要がある……。



 茶零しと急須を持って和室へあがると、あやめさんはお料理のレシピをメモ帳に写しながら更にTVに喰い付いていた。

「あら、気が付きませんですみません」

 ……本当に。普段どんな生活しているんだろ、この人。



「はい、お茶」

「お、ありがとう」

「……」

「……」

 なんだろうこの空気。私が作ってるのか、これ。


「あ、……あのさ」

「……うん」

「なんだよ、なんでお前がダメージ負ってるわけ? どう考えても逆だろ? あ、まさかお前、実はサフランの事を……」

「本気で莫迦なんじゃ無いのっ!?」


 別に私は何もダメージなんか受けてない。

 そう、私は世界最高の結界さえ生身で突破する鋼鉄の女だ!

 私にダメージを与えたかったら……。


 石とか投げられてあたったら相当痛そうだけど。

 なんだ、石ころで良いんだ、ダメじゃん私……。


「あのさ、さっきの話……」

「男のくせにしつっこいな。アンタはなにも言ってない。私がかってに色々思っただけ。だから絶対誰にも話さない、当然華ちゃんにも! ――そんで良い?」

「……あぁ」


「……ったくケツの穴の小さいっ!」

「ほっとけよ! それに女がそう言う言葉使うな! 男だって色々微妙なんだよ……」

 なんか結果的に助けて貰った? ……なんか最近色々ダメだなぁ、私。



「はい。この話、これでお終い。おっけー?」

「頼むぜ、ホント」

 と、ここでお互いお茶を啜る。



 なんかこの辺の、間とか空気が、実家のじいちゃんとばあちゃんみたいだ。

 言い争ってた直後に、お互い和やかムードで静かにお茶飲んでるとか……。


 待て待て、なんでここで恥ずかしい感じがこみ上げてくる。

 お互い、あの人達の孫なんだから考え方や感じ方もどうしたって似てくるだろうに。


 多分いつでも一緒に居るのが前提の仁史と、今や一心同体に近い華ちゃん。この組み合わせに頭が付いていけないんだろう。

 多分、感じたのはそんな感じで良いんだと思う

 そうじゃ無いと、私も多少おかしな属性が付いてしまう。


 うん。その辺、変に意識するの今はやめよう。

 ノリと勢いだけで生きてるような私だって、考える時間が必要な事は、ある。

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