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真説・公園の魔法使い  作者: 弐逸 玖
うつくしヶ丘高校本校舎 職員室の前
33/66

補習の意義

「桜。……えーと。いろいろ。……ごめんなさい」

「まぁ先ずは牛乳でも飲んで落ち着いて、ね。それと持っているだけでコンクリの上で眠りたくなっちゃうんだろうから、そのタオルはもう捨てちゃいなさい!」


 華ちゃんの。誰も知らない本当の、十五歳の女の子の顔。

 そう思えば嬉しくもある。……かな。

「……タオルは、その。ごめんなさい、お願いします。これだけは勘弁して下さい!」


「じゃあそう言う使い方しないで、大事にしなさいって。――仕方ない所だってあるからさ。あやめさんだって言いたくて言ってるわけじゃ無いと思うよ。言葉だけでなくてお姉さんなんでしょ? だったら悪かったら呵る役なんだもの。わたしだって家に帰ったら弟に対してはそうなんだし」

「その辺は、もちろん」


 普段寝る時も大事に握ってるしね、そのタオル。

 背も高いしちょっと大人びて斜に構えてて、言わなきゃ同い年に見えないくらい。

 そう見えるんだけど、そういう見た目に反して変に子供っぽいトコが結構残ってて。

 だから見てるこっちはそれに気が付くたんびに、ドキっとするんだよ。



「あとね、私は凄くがんばった、良くやったと思ってる。……嘘じゃ無いよ?」

「本当に?」

 それは本当だ。何一つ基礎の無いところでいきなり言った通りに答案用紙に書け、と言われたって。


 そもそもテストがどういうものなのか、それが良くわかってないのだから。

 そんなのちょっと考えたってわかる。

 どうにかなる。と思う方がおかしいのだよ、そんなもん。


「私じゃ無理だったよ」

「そんな事は……」

「普通に学校に行ってたとすれば、優等生だよ絶対」


 2日目以降は明らかに効率が良くなった、

 つまりはテストが何をする場なのか初日で理解したということだ。

 間違いなく華ちゃんは地頭も要領も良いのだ。


 それが証拠に、あんな状態から本当にどうにかなっちゃったんだから。

 ……全教科で補習のおまけが付いたけど。


「ありがとう。……でも補習というのは成績の悪い人が受ける罰のようなものなのでは」

「違うよ、違うの。あのね華ちゃん、落ち着いて良く聞いてね? ……良くわかっていないところをもう一回、改めて教えて貰うの」


「でも他のみんなはお休み……」

「建前上はお家で復習する日だしね。――良く分かってなかった人だけ集めて、もう一回先生が教えるの。こないだ事務所で漢字にはそれぞれ意味がある、って言ったよね、覚えてる? おーけー、んじゃこのプリントの補習って字を見てみ? はら、習ったことを。補う。って書くでしょ?」

「漢字の意味は逆に読むこともあるの?」



 右上に【普ⅠB・サフラン 華】とちょっと曲がったはんこが押されて、

【理由無く下記の補習を欠席・遅刻した場合、単位の取得が出来なくなる事がありますから必ず出席し補習開始前に担当教諭より出欠の確認を受けて下さい。出欠の確認が出来ない場合は欠席とみなす事があります。諸般の事由により出席の出来ない場合……】


 等と恐ろしい文言が書かれ、英語以外、全ての教科に出席のマークが付いた補習の時間割のプリントを見ながらそう言ってみる。

 ……間違って無いよな? 補習ってこうだよね。


「だからさ、ちょっと人数の少ない授業だと思って?」

「本当? 何か縛られて水をかけられたり、鞭で叩かれたり。目隠しされてごめんなさいを半日言わされたり。そう言った事をされたりするわけでは無いの?」

 拷問か!


「断言する、かけても良い。そんな事は何処の学校でもあり得ないっ!」

 補習でそんな事してるのバレたら、その先生、二度と教壇に立てないよ……。

「でも、本当に先生がわざわざもう一度、前と同じ事を教えてくれるの?」


「そう。だから安心して真面目に授業を受けてきて。人数少ないから、わかんないところも先生に聞きやすいだろうし」

 漸く表情から少し不安の色が消える。知らないって、怖いなぁ。


「それに明日、私は補習の間はあやめさんと一緒に居るから、そこも心配なし」

「さっきお姉様からもそう言われたわ。桜がお姉様と一緒なら私と居るよりも安全だし。そこだけはよかった」


「だからね、明日あやめさんに会ったらもう一回ゴメンなさいってちゃんと謝って、ね? そしたらお互いそれでお終い。もしもあやめさんが引っ張るようなら私から言ってあげるから。……良い?」

「……はい」 

 ……で、当然気になるのは。


「ところで補習を罰とか拷問とか、そんな風なものだってどうして思ったの?」

「それはもちろん、お姉様がそう言う……」

「おっけーわかった、この話お終いっ!」


 ――やっぱりか!

 何処まで本気なんだろう、あの人は。……ホントにもう。

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